遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(479) 小説 希望(3) 他 時の終わり―プール

2023-12-24 11:50:36 | 小説
            時の終わり―プール(2023.12.17日作)


 
 満々と水を湛えたプールが今日も
 静かな佇まいを見せている
 朝の光りに輝く水
 真昼の白光を照り返し
 光りと波の交響曲を奏でる水
 夕陽に静かな眠り 夜の支度を急ぎ
 闇へと沈みゆく水
 春夏秋冬一年四季
 様々な思いを宿し
 延々とそこにあり続け 生き続け
 人の世の喜び悲しみ 怒りと嘆き
 笑いの声を受け止めながら
 今日まで生き続け 生きて来て今はただ
 さざ波一つ立てずに 訪れる人もなく
 孤影の下(もと) 今日もそこにあり続ける
 一つのプール やがて そのプールも最終
 終わりの時を迎えて
 枯れゆく水と共に 終幕
 命の終わりの幕を降ろす時が来る
 ーー人の命はプール




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              希望(3)



 
 店はまだ開けていなかった。
 駅前へ戻って繁華街をさ迷い歩いた。
 ゲームセンターが眼に入ると引き込まれて入っていった。
 気が付いた時には午後三時を過ぎていた。
 夢中になって昼食も忘れ、一万円以上の金を使っていた。
 急に心細くなった。
 ナイフを買えなくなってしまったのでは・・・・・
 それでもナイフを見るために金物店の店先に足を運んだ。
 途中で鞄の中の金を数えてみると三万二千円と少しの硬貨が残っていた。
 でも、全部使ってしまう訳にはゆかない。
 店の人がナイフを安くしてくれるといいんだけど・・・・
 ナイフは昨日と全く同じようにショーウインドーの中で見事な輝きを見せていた。
 改めて値札を見て溜息を付いた。
 店内を覗いて店の人と交渉してみようと考えた。
 入って行くと土間の中央に大きな台があって、鍋や薬缶などの金属製品が並べられてあった。
 両側の壁には棚があって、包丁などの刃物の他、様々な鍵や鎖りなどの金属製品が並べられてあった。
 店内は幾分、薄暗かった。
 客の姿はなかった。
 雑然とした店内を恐る恐る進んでゆくと、正面、突き当りに男の人が座っているのが見えた。
 小さな台を前にして何かの仕事をしていた。
 修二の気配にも気付かなかった。
 七十歳位かと思われた。
 相手が年寄りだと思うと気が緩んで更に進んで行った。
 相手が顔を上げる前に修二の方から声を掛けていた。
「すいません、表に飾ってあるナイフを見せてくれませんか ?」
 男が顔を上げた。
 度の強い眼鏡越しに怪訝そうな顔で修二を見詰めた。
 如何にも老人じみて見えた。
「ナイフ ?」
 老人は訝し気に問い返した。
 修二の服装は昨日のままだった。
 着古したジャンパー姿で薄汚れた布鞄を小脇に抱えていた。
 店の者が不審を抱くのも無理はなかった。
「はい」
 修二はそれでも臆せず答えた。 
 店の老人は更に修二の身元を探るかのように、執拗な眼差しで修二を見詰めまわしてからようやく、
「あれは高いよ」 
 と、無愛想に言った。
 修二など相手にする気もないような言い方だった。
 修二はその言い方に思わず腹を立てて、
「分かってんだけど、昨日、見たのでお金を持って来たんです」
 と言っていた。
 老人はその言葉に、改めて修二を見直すように見詰めてから、
「幾ら持って来たの ? あれ、三万円もするんだよ」
 と言った。
 やはり、お前には無理だと言うような、軽蔑的な響きのこもった言い方だった。
 老人のその言い方に修二はまたしても反発して、
「五万円です」
 と、叩き付けるよう言っていた。
 老人は思い掛けない事を聞いた、というような表情でひと時、無言でいたが、
「何しろ、あれは外国製の最高の品物だからねえ」
 と、今度は機嫌を取るかのように穏やかな口調で言った。
「分かってたんで、お金を持って来たんです」
 と、修二も老人の気持ちに寄り添うように穏やかに言った。
 老人はそれでようやく仕事の手を止めて前掛けのチリを払い、腰を上げた。
 引き出しから合鍵を取り出してショーウインドーへ向かった。
 修二は老人の後に従った。
 老人はショウインドーの鍵を開け、ガラス戸を開くと手を差し込んで三本のナイフの内の一本を取り出した。
 取り出したナイフを手に老人は修二の方に向き直ると、そのまま眼の前で黒いボタンを押して見せた。
 ナイフの柄からはビシュッという小さな小気味よい音を立てて瞬時に、幽かな蒼味を帯びて鮮やかな白銀の刃が飛び出した。
 修二が老人の手による思いも掛けない出来事に驚いていると老人は如何にも自慢気に、
「このボタン一つで、自由に刃の出し入れが出来るんだ」
 と言ってそのまま、また、ボタンを押した。
 白銀の刃は再び見る間もなく柄に納まった。
 修二がその見事さに言葉も忘れて黙っていると老人は、
「いいナイフだろう」
 と、また、如何にも自慢気に言った。
 それで修二も我に返って、
「いいナイフだけど、もう少し安くしてくれませんか」
 と言った。
 老人は修二の言葉を聞いても全く取り合おうとはしなかった。
「いや、駄目だよ。何しろ最高のナイフなんだからこれ以上、安くは出来ないよ」
 と言って、そのままナイフを元の場所に戻そうとした。
 修二は慌てて、
「お金は五万円あるんだけど、キャンプに行くので、他にも買いたい物があるんですよ」
 と言った。
「キャンプに行くの ? キャンプに行くんなら、こんなにいいナイフは要らないよ。待ってな、キャンプ用のいいナイフがあるから、今、持って来てやるよ」
 老人はそう言うと手にしていたナイフを元の場所に戻してガラス戸を閉め、店の奥へ向かった。
 修二は取り残され、その場所に立ったままでいたがその間、老人が閉めたガラス戸が鍵も掛けられずに、その上、僅かに隙間さえ開いているのを目敏く眼にしていた。
 修二は咄嗟に店の奥へ向かう老人の背中に眼をやった。
 老人は振り向く様子も見せなかった。
 今だ ! 咄嗟に判断した。
 老人の背中に視線を向けたまま僅かに隙間を見せているガラス戸に手を掛けて静かに開けた。
 その手で腕を伸ばし、先程、老人が手にしていたナイフを握った。
 後の動作は素早かった。
 ナイフを握った手をガラス戸から引き出すとそのまま、後も見ずに街の人込みの中に逃げ込んだーーー

 北川はマスターの、北川じゃあ、あるめえし、という言葉には答えなかった。
 手の中のナイフに魅了されたままの様子で、再び黒い石のボタンを押した。
 ナイフは老人が修二の眼の前で見せた時と同じ音を立てて柄に納まった。
「今度の走りにはこいつを借りて行こう」
 昂揚した気分そのままに北川は声をはずませて言った。
「ああ、そうだ。忘れていたよ」
 マスターが言った。
「おとといだったかな、クロが来て、今度の走りには出られねえかも知れねえから、そう言っておいてくれって言われたんだ」
「クロちゃんが ?」
 北川は驚いた様子で聞き返した。





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             桂連様


              有難う御座います
             夜中の三時 没頭する時間は瞬く間に過ぎる
             でも 今の自分には無理です 若い時代はほとんど睡眠時間四時間でした
            それでも平気だったのは若さの故でしょうね
            今は無理をせず眠くなれば椅子に掛けている時でも
            腕を組んで居眠りをしてしまいます
            時を忘れて没頭出来るものが有るという事は幸せな事だと思います
             アメリカで八年 その地に住めばその地に同化しなければ
            生きて行けない 生き辛い 自然に物の考え方も変わって来るのでしょうか
            アメリカ人にはなれなくてもアメリカの国民になったという事でしょうね 
             考え方も自然にアメリカ風になっている
            その地に根を下ろしたという事でしょうか でも
            どうなんでしょう その人自身の根本は変わる事はないと思うのですが      
            たとえ 考え方 思想に影響は受けてもその人自身の人間性の
            変わる事はないと思うのですが
             面白い記事を大変 興味深く拝見致しました
            御無理をせず 時折りでも また お書き下さい
            有難う御座いました
             なお 次回は休載しますので 改めて今回 いろいろ楽しませて戴いた事
            お励ましを戴いた事に対して御礼申し上げます
            有難う御座いました
            どうぞ 良いお年をお迎え下さいませ

             

              


              takeziisan様
        
              有難う御座います
             当地も漸く冬らしい寒さになって来ました。
             鉢植えの花々も屋内に取り込み始めました でも
             当地はやはりそちらと比べると暖かい様です 氷の張る寒さはありません
             テレビでは連日 大雪を放送していますが何処か
             他人事のような思いがあって実感のないまま 雪国の人達は大変だなあ
             などと暢気に思っています
              山茶花の赤 田舎に居た頃の山椿の赤を思い出しました
             冬でも葉を落とさない木々の暗い緑の中に何気なく咲いている冬椿の質素な佇まい
             好きな花の一つです 赤い山茶花を見てふと昔を思い出しました 
              チッタア わたくし共もよく使います 方言であって方言を超えた言葉のような気もします
              納めの川柳 敢えて選ぶとすれば 「年の功」と「親の顔」でしょうか
             無論 他も楽しく拝見しましたが あくまでも 敢えて という事です
              泳ぎ納め 計り知れない効果ですね とにかく身体 頭脳
             使わなければ錆び付きます 三十年来 よく続いたものと驚嘆ですが
             最早 日常の一部という事でしょうか わたくしも朝は必ず自己流の体操で
             身体をほぐしていますが やはり一日でも抜けると何か気分が落ち着きません
             一つの習慣を身に付けるという事は何気ない事のようであっても           
             大切な事なのだと思っています
              今年も楽しい記事 いろいろ有難う御座いました
             次回は休載しますので今回 一年の御礼を申し上げます
              有難う御座いました
             どうぞ 良いお年をお迎え下さいませ



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              次回は休載します
             今年一年を通して拙文にお眼をお通し戴いた方々
             また このページを管理して下さった
             スタッフの皆様に改めて御礼申し上げます
             有難う御座いました
             来年もまた 宜しくお願い致します
              どうぞ皆様 良いお年をお迎え下さいませ




2 コメント

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1年間、本当に有難うございました。 (takezii)
2023-12-24 12:25:42
毎回、記事内で、私なんぞに、丁寧なコメントを、記載いただき恐縮しており、改めてお礼申し上げます。
私のブログ、自分のための記憶補助ツールと決め込んでおり、他の方々のブログのような、多くのコメントやり取り等は、ほとんど無い中、tamasaさんのコメントは、ピカイチ、貴重なコメントで、大変うれしく思っています。時々、コピペして、自分のブログのコメント欄に、貼り付けさせていただいておりますが、来年もよろしくお願いします。
有難うございました。
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Unknown (桂蓮)
2024-01-03 21:14:16
タマサさま
去年も大変お世話になりました。
これからも指導お願いします。

日本は正月からすごいことが起きましたね。
被害に遭った人を思うと本当に辛いです。

今月の11日にアメリカ市民権テストを受けます。
歴史、政治、法律の勉強中です。
始めは仕方なく受かるための勉強でしたが、
やっていて、世界史も理解できました。
受かるかどうか分かりませんが、
受かれば、韓国籍を放棄して
アメリカ籍になり
選挙権を得られます。

選挙権を得たいから市民権を得るのであるから、
本当に受かりたいですね。

この報告はブログ上では初めてかくので、
(自分のブログでも言及しなかった)
まー結構たまさ様順位高いですね。


文頭の詩
真撃な感じですね。
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