遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(480) 小説 希望(4) 他 実践者

2024-01-07 12:41:17 | 小説
             今年 初めての投稿となります        
            スタッフの皆様
            何時も駄文に御眼をお通し下さる皆様
            どうぞ 宜しくお願い致します


             実践者(2023.11.10日作)


 
 理論 理屈屋になるな
 実践者であれ
 実践者 実行者の言葉として
 物事の本質 真実 核心を語る
 理論 理屈屋の実践の場に於ける 
 惨めな敗北者としての姿は
 政治 経済 現実の場に於いて
 しばしば眼にする事であり
 証明されている


 感覚で捉える事のない知識
 感覚の伴わない知識は
 本物の知識とは言えない
 借り物の知識
 支柱のない橋と同じ事




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              希望(4)





「うん、お袋の様子が良くねえらしいんだ」
「クロちゃんの奴、本当かよう。参ったなあ」
 北川は真実、困った様子で言った。
「向こうは幾つぐれえ走るんだ」
「二輪と四輪合わせて二百ぐれえ走るって噂ですよ」
「随分走るんだなあ」
「まあ、数なんかどうでもいいけど、問題は相手の頭(あたま)なんですよ。こいつが凄え奴で、並みの相手じゃあ十人、二十人が束になって掛かっていっても、アッという間に跳ね飛ばされちゃうんですよ」
「この前、おまえの車がやられたって奴か ?」
「そうなんですよ。そいつがハーレーのでっけえのでバリバリ突っ込んで来るんですよ。だもんで、今度はとにかくお返しをしねえ事には、いい笑いものになっちまうからね」
「向こうは、こっちの走りを知ってんのか」
「いや、相手が走るっていうんで、こっちがぶっつけていくんですよ。奴らの好きなようにコースを荒らされたんじゃあ立つ瀬がねえからね」
 北川は敵意を顕わに言った。
「クロちゃんが情報を入れたんで、走るもんだとばっかり思ってたんだけどなあ。実際の話し、クロちゃんが居ねえとこっちの力はがた落ちなんですよ。そっでなくても、数の上で分が悪いって言うのにさあ」
「おふくろの具えが悪いんじゃあ、しょうがねえだろうよ。クロはおふくろと二人暮らしなんだから」
「そうなんだよね。クロちゃんはおふくろ思いだしね」
「そうだよ。おまえみたいな八百屋のばっち(ばっし―末っ子)のぼんぼんとは訳が違うよ」
「それはないよ。俺だって真面目に鉄工所で働いているサラリーマンなんだから」
「まあ、どうだか」
 マスターは皮肉っぽい笑顔で言った。
「これだから !」
 北川は腹を立てる様子もなかった。
「坊やはバイクはやらねえのかい」
 マスターが修二に聞いた。
「はい」
「あんなものはやらねえ方がいい」
 北川への当てこすりのようにマスターは言った。


             2



「まだ、名前を聞いてなかったな。なんて言うんだ ?」
 マスターが修二に聞いた。
「山形修二です」
「修二か。じゃあ、これからは名前を呼ぶからな」
「はい」
「この部屋にある物はなんでも、好きなように使っていいんだからね。あんたの部屋になるんだから」
 おかみさんが六畳の部屋をひと渡り見廻して言った。
 先ほど調理場で後ろ姿を見せていた年上の方の女性だった。
 細面が整った目元の綺麗な、修二がこれまで見た事のない美貌の人だった。
 化粧はしていなかった。
 若いもう一人の女性は店員だった。仕事が終わると自宅へ帰った。
「はい」
 修二はおかみさんの言葉に素直に答えた。
 店の二階にある部屋だった。
 六畳一間に小さな台所が付いていて小型冷蔵庫や電子レンジ、洗濯機なども揃っていた。
 座敷には小さなテレビ、目覚まし時計が置いてあった。
 修二が生活してゆくのに足りない物はないようだった。
「ここから五十メートル程行くと銭湯があるから、お風呂はそこに行きなさい。夜一時までやっているので、お店が終わってからでもゆっくり間に合うから」
「はい」 
「じゃあ、これでいいかな」
 マスターが言った。
「そうね」
 おかみさんが頷いた。
 マスターとおかみさんは階段を降りて行った。
 間もなくして店のシャッターの降りる音がした。
 続いて車のエンジンの音が聞こえて来て、それが一段と大きくなり、やがて車の遠ざかる音が耳に届いて消えていった。
 小さな箪笥の上の置時計に眼をやると午前一時を過ぎていた。
 北川が帰ると修二はこの部屋に案内された。
  午後六時過ぎだった。
 それから修二は、店が終わる午前零時までの時間を身を堅くしてこの部屋で待っていた。
 ひと月前までは別の若者がこの部屋に住んでいた。
 その若者は自分の店を持つ為に栃木の実家へ帰って行った。
 マスターは後釜を探していた。
 それが修二になった。
「俺たちも朝九時までには来るから、それまでに店を開けて掃除をしておいてくれればいい」
 マスターが言った。
「真面目に働けば店を持つぐれえの事はさせてやるよ。前に居た奴も地元で店をやりてえって言うんで帰(けえ)したんだ」
 翌日から修二の店員生活が始まった。
 店には正午過ぎと夜八時過ぎの二度、客の立て込む忙しい時間帯があった。
 店員生活の初日、修二は勝手が分からずただ、うろうろしていた。
 それでも一週間が過ぎる頃には自分から気を利かせて動けるようになっていた。
 修二の他に女店員の鈴ちゃんが居るだけの小さな店だったが、修二に取ってはここでの生活は思いも掛けず得られた幸運だった。
 母親の下を逃げ出して行き当たればったりにこの街に着いていた。
 明日という日を心配せずに生きてゆけるだけで天国だった。
 ここでの生活を大切にしたいと思った。
 修二は真面目に働いた。
 マスターに怒鳴られる事もなかった。
 おかみさんや鈴ちゃんからは好意を持って迎えられた。
 一日の仕事が終わって二階へ上がると疲れ切っていた。
 風呂へも行かずにテレビを点けたまま眠ってしまう事もしばしばだった。
 それでも、そんな生活が少しも厭ではなかった。
 働き初めて五日目、水曜日の休日に散髪をした。
 長く、ボサボサだった髪を短く刈り込む事で自分も一端の大人になった気がした。
 その後、駅前のデパートへ行って数枚の下着を買い、ジャンパーと革靴を買った。
 マスターは給料の前払いとして二万円をくれた。
 鞄の中の三万円余りと合わせると、買い物に困る事はなかった。
 おかみさんは仕事が終わった後で何度か、様子を見に来てくれた。
「困った事があったらなんでも言いなさいよ」
 おかみさんは言った。
「修ちゃん、おかみさん、修ちゃんの所へ行かない ?」
 ある日、鈴ちゃんが言った。
「うん、何回か来てくれた」
「すぐ帰った ?」
「帰ったよ」
 鈴ちゃんは納得した様子で頷いた。
 ナイフを盗んだ店の方へは足を向けなかった。




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             takeziisan様


              コメント有難う御座いました
             拙文にも関わらずNO1ブログ内に貼り付けて下さっているとの事
             感謝致します 有難う御座います
              二週間分の記事 拝見しました 楽しい時間でした
             ジィチャ バアチャ わたくし共の方では多少呼び方は違いましたが
             懐かしい風景です わたくし自身の境遇と余りに共通点の多い事に
             驚きながら拝見しました 疎開の事など そっくりの境遇です
             うちの祖母は藁草履を作っていました 近所でも評判の草履で
             村で一番大きな店から是非 売らせて欲しいと言う依頼があった程です          
             下駄作りの話しから懐かしく思い出しました
              川柳 面白く拝見しました でもちょっとテンポの速いのが玉に瑕
             ネジが余った キラキラネーム 奥方描写 軽い笑いと共に楽しく拝見しました
             次回 楽しみにしております
              浪曲の話し 春の海 幼い頃に馴染んだ風景です
             あの頃の穏やかさが欲しいものです 元日早々の大災害 しかも二日続けて
             世の中 何があるか分かりません その上「イマジン」変わらぬ人間の愚かさが
             一つの歌などたちまち吹き飛ばしてしまいます
             世の中 あっちでもこっちでも 日毎 たった一しかない人の命が
             無造作に失われてゆきます 絶望的気分だけが満ちて来る新年早々です
              湯吞み茶碗 わたくしは東京大空襲の時 何もない中で
             日々の生活の為 焼け跡から拾って来て一時を凌いだ小さな丼型の茶碗を  
              今も持っています 日常でも使っていたのですが  
             ある日 落として二つに割ってしまい それからは接着剤で張り合わせ
             今では戸棚の奥に大事に仕舞ってあります  
             餅つき機は今年もわが家では大活躍でした
             もう何十年にもなるので 年の瀬が来る度に今年は無事に動くかな などと
             確かめてからの使用です
              今年も一年 楽しい記事をお寄せ下さいませ
             その為にはお体を大切に御無理をなさらぬようお気を付け下さい
              有難う御座いました
             大災害 なければ心晴れやかな気分でいられたのではと思うと辛いです
             被災他の方々の気持ちを思うと単純に新年を喜んでばかりもいられません
             一日も早い復興を願うばかりです


             


               桂連様


            有難う御座います
           国籍取得との事 晴れて米国人になるのですね
           頑張って下さい アメリカで暮らす以上 アリカという国家に
           関わってゆきたい 当然の事だと思います それが 出来なければ                          
           何時まで経っても腰掛け生活で気持ちが落ち着きませんものね 
           良い結果をお待ちしています
            記憶力 ある部分 持って生まれたようなところもあるような気がします
           生まれつき記憶力の良い人 そうでない人 頭の良し悪しには
           直接 関係していないような気もしています
            老齢と共に記憶力も落ちる 仕方のない事だと思います
           でも不思議な事に つい最近の事はすぐに忘れてしまっても
           昔の事 幼い子供の頃の出来事などは鮮明に覚えています
           子供の頃の柔軟な脳に刻まれた出来事と 老齢の固くなった脳に刻まれる出来事の       
           違いのせいでしょうか  
            わたくし自身 記憶力は良い方だと自負していましたが
           最近は身近な事をすぐに忘れてしまいます
           脳の老化現象だなあ と自身思っていますが 依然
           昔の事はあれこれ鮮明に覚えています そして
           余り記憶力の良い事も楽ではない と思ったりしています
           人間 良い思い出ばかりではなく 忘れてしまいたい思い出も多いですから
           今から考えると何故 あんな事を・・・と言うような出来事は
           早く忘れてしまいたいものですが ふと思い出して
           居たたまれない気持ちになる事もしばしばです
            いずれにしても人間社会 喜怒哀楽 複雑な世界です
            御忙しい中 何時も有難う御座います
             国籍取得 お身体に気を付け 是非 頑張って下さい
















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