不戦の誓い(2014.6.12日作)
(この文章は2014年7月20日、第3回に
掲載したものですが、最近、憲法について
の話題がの多く見られるますので再度、掲載
したいと思います)
この国 日本が持つ おそらく
世界の数ある国々の中でも
極めて稀な しかも
貴重な宝
不戦の誓い
非戦闘国 日本
第二次世界大戦
惨めな敗戦へと突き進んだ
この国の過去 あの愚を
再び繰り返す事のないよう願い
定められた この国を形作る規範
憲法
その憲法が今 揺れている 否
揺さぶられている ぐらぐら ぐらぐら
その根源 根底から覆そうとするかの様に
揺さぶり 揺り動かし 切り崩しにかかる
勇者気取り 正義の人 気取りの者達
戦う事が正義 戦う事が勇者の姿
と 信じてでもいるかのように
猪突猛進 一途に
突き進む者達 その
愚かさ 怖さ
彼等の眼には見えていないのか ?
力による解決 力による和平
力による制圧 力による支配
いずれの道も いつかは破綻
元の木阿弥 新たな憎しみ
新たな怨念 新たな争い
その火種となり得る
事象 事例が・・・・
戦う事だけが 正義の道ではない
戦わずして勝つ
武器を手に
敵地に乗り込む者は
真の勇者とは成り得ず
番犬を背にした臆病猫
真の勇者は自身を頼りに
心一つで敵地に乗り込む
心は万能 武器では動かぬ心
心に向き合う心 寄り添う心 で
心は動きを見せる
分かり合う心 溶け合う心
許し 許し合う 謙譲の心
武器を持ち 戦う事が正義の姿
勇者の姿ではない
戦わずして勝つ 勇者の進む道
第二次世界大戦 その後
この国 日本は ただの一度も
世界に数ある国々 その
いずれの国とも戦火を交えず
ひたすら心に寄り添い 心を分かち合う
その道を選び 進んで来た
第二次世界大戦 戦後もすでに七十年
今この国 日本が世界に誇り得る 宝玉
不戦の誓い 非戦闘国としての姿
今この国 日本が世界に誇り得るものは
幾多 多様の形を持つ この国の文化 様式
人の心に寄り添い 人の心に和みと安らぎ
至福と喜びをもたらす 柔の力 剛の力ではない
和の力 世界で一番
世界に最も良き影響力を持つ国 日本
数年前 英国調査機関により
発表された事実
今この国 日本は 世界の各地に穏やかなたたずまい
豊かな文化 知恵を浸透させ
その色で染め抜いている クールジャパン
この時 この時期 その
宝を捨て 戦火を交える事態も厭わぬ
愚を犯してはならない この国 日本を
破滅へと導く第一歩
その一里塚とも成り得る道へ
踏み出してはならない
勇者を気取る者 正義を気取る者達は
渦中に入る その愚を心に刻み
知るべきだ
戦わずして勝つ
戦う事はいずれの国 いずれの国民 人々にも
命の犠牲 悲惨を強いる
戦後七十年 この国 日本は不戦の誓い
非戦闘国 その規範のゆえに
国民の誰一人 銃弾 戦火に命を落とす事もなく
世界の中の誰一人 ただの一人の
命を奪う事もなく
過ごして来たこの国 日本
この宝 歴史の中にキラリと光る宝玉 宝を
今この時 捨て去る道を踏み出す
愚を犯してはならない
------------------
ナイフの輝き(5)
五
明夫は眼をつぶった。すると幼い自分の姿がはっきりと見えて来た。同時に、まだ顔も知らない酔っ払いでならず者の父や、小さな飲み屋の二階で、明夫が傍に寝ている事もはばからず、夜ごと、男達の体の下で感情のままに乱れ狂う母親の姿などが脳裡に浮かんだ。
明夫は母を憎み、父親を憎んだ。誰よりも真っ先に、この二人を殺してやりたい、と思った。あの母親と父親がいなければ、自分はこの世にいなかったのだ。そう思うと、生きている事への嫌悪感が、先に立った。鉄さびにまみれ、ネズミのように地べたを這いずり廻っている自分が虚しかった。まさに最低だ、と思った。
ナイフの輝きは、そんな時にも明夫の脳裡を離れなかった。ナイフの見事な存在感と共に自分の生きている世界の惨めさが自ずと対比され、虚しさは一層に増幅された。
始めて仕事を休んだのは、そんな感情を抑え切れなくなった、ある日だった。土曜日の、映画を観て三人連れと悶着を起こしたあの日から、十日近くが過ぎていた。
その日、明夫は終日、精液で薄汚れた布団の中でごろごろしていた。
午後一時過ぎになって、ようやく起き出したらしい、二階の女の立てる物音が聞こえて来た。明夫は、聞き耳を立てながら、女が今、何をしているのか、と想像した。いつだったか、女が階段を下りて来る時、チラッと眼にしたスカートの中の太ももの白さが眼に浮かんだ。女は、時折り、男を連れ込んでいるらしかったが、明夫自身には眼もくれなかった。小坊主のお前なんか歯牙にもかけない、と言ったような、ツンとした態度に明夫は日ごろから女への反感を募らせていた。
女の立てる物音が静かになった。
今、女は何をしているのだろう、明夫は布団の上で仰向けになったまま、想像した。たった一枚のこの天井板を剥がせば、女の部屋なんだ、と考えると、異常な興奮に捉われた。この天井板を剥がして、女の部屋へ行き、思いっ切り女を犯す場面を思い描いた。明夫の手にはナイフが握られていた。
" 騒ぐな。大きな声を出したら、このナイフで刺すぞ "
女の恐怖と共に、思い掛けない出来事に呆気にとられた顔が眼に浮かんだ。
" いいか、俺の言う事を素直に聞け。そうすれば何もしないから "
女は怯えた顔で黙っていた。
" 服をぬげ"
女は渋々、ブラウスを脱いだ。
" スカートもだ "
明夫は自信に満ちた声で言う。いつもの" 山ザル " と呼ばれる、おろおろした態度の明夫はそこにはいなかった。
" 大人しくやらせれば、なんにもしない。どうせ、いつでも、男たちを咥え込んでるんだろう "
想像しているうちに耐えられなくなって、自分の手で果てていた。
女は風呂へでも行くのだろうか、ドアを閉めるらしい音が微かに聞こえた。
明夫は夢想に疲れていつの間にか眠っていた。
翌日、明夫が出勤すると、工場主任の成瀬は血相を変えて怒った。
「みんなが一生懸命に働いている時に、無断で休む奴があるか、バカ野郎。おまえなんか、休むのは十年早いよ。ひょっこのくせに」
明夫は謝りもしなかった。頭を垂れただけで聞いていた。
成瀬主任が去った後、明夫は仕事への強い嫌悪感を抱いて、持ち場に向かう気力も失せたまま、のろのろと足を運んだ。
" もし、主任があんまりうるさい事を言ったら、あのナイフでいつでも刺してやる "
腹の中で呟いた。
明夫の仕事は次第に投げ遣りになっていった。以前のように几帳面に後片付けをする事もなくなった。
仕事から帰ると、ナイフを持ってアパートを出た。心の内にはいつでも、充たされない思いの苛立ちを抱えていた。自分が何をしたいのか、よく分からなかった。アパートの部屋にこもり、食パンを齧りながら週刊誌を彩るヌードを眺めての、一人の性には満足出来なくなっていた。
明夫は喫茶店に入り浸った。口の重い陰気な山ザルに親しい仲間の、すぐに出来るわけもなかった。ボックスの片隅で、ジャンパーの内ポケットに忍ばせたナイフを唯一の頼りに、華やかに出入りする人の群れに、敵意のこもった視線をむけ、見つめていた。
喫茶店を出ると、当てもなく夜更けの街を歩き廻った。
心の内には何もなかった。その心で明夫は時折り、夢想した。
明夫によく似た境遇の女でよかった。明夫と同じようにその女も、華やかな明かりを避けるように暗がりの路地の角に立っていた。
" なんだ、こんな所にいたの ? "
明夫は言った。
女は化粧も乏しい蒼白い顔に、微かに微笑みを浮かべて頷いた。
" 何処へ行こうか? "
明夫は女の腕を取り、肩を並べて歩きながら言う・・・・・。
現実には、そんな女の子はいなかった。華やかな夜の街には、明夫には近寄りがたい、けばけばしく装った水商売の女たちの、艶やかな姿が溢れているばかりだった。
明夫は歩き疲れると、ようやく、今日一日の虚しい思いを抱えたまま、アパートの自分へ帰って行った。
「おまえ、仕事をする気がないんなら、この工場を辞めろよ。遅刻はするわ、一週間に一度は休むんじゃあ、はた迷惑だよ。みんながどれ程困ってるのか、分かってんのか」
工場主任は言った。
明夫は主任に逆らう気持ちはなかった。諦めに似た思いだけが強かった。
明日からの生活に、当てがある訳ではなかった。それでも明夫は仕事を辞めた。
その月の給料と、給料の半月分が退職金として支払われた。
明夫は一度に支払われた、今までにない金額、明夫にとっては大金を手にしたまま、ただ、茫然とした思いの虚ろな心を抱いて、一日中、部屋にこもった生活を続けていた。外出する事もなかった。自分がどうしたらいいのか、分からなかった。パンを買いに出るのだけが、唯一の外出だった。精液と汗の匂いのこもった部屋の窓を開ける事もなかった。
仕事を辞めて以来、初めて外出したのは、半月程してからだった。閉塞状態の、牢獄にでもいるような生活にさすがに息苦しさを覚えるようになって、その殻を突き破りたいという、衝動的な思いのままに部屋を出ていた。無論、ジャンパーの内ポケットには、あのナイフが収められていた。
久し振りに見る夜の街は華やかだった。今までに見た事もない街を見るような、新鮮な思いに捉われた。なぜだか、気分が浮き浮きしていた。自分のそばを通り過ぎて行く人々の群れにも、懐かしさにも似た思いを抱いた。
果物店の店先や、洋品店の華やかな飾りつけがまぶしく眼に映った。
明夫は突然、胸を突かれた。眼の前に、例の金物店のウインドーがあった。狼狽した。思わず逃げ出しそうになったが、同時に、懐かしさにも似た感情を覚えて足を止めた。
自分が盗んだナイフの飾られてあった、あの場所はどうなっているのか、好奇心が湧いた。
ウインドーの中には、明夫が盗み取ったナイフと同じナイフが、以前のままに三本並べて、刃を開いたまま飾られていた。
ナイフはウインドーの中で相変わらず華やかな輝きを見せながら、照明を浴びて置かれていた。三匹の蛇が絡み合う柄の飾りも見事で、白銀の中に蒼い波型模様を見せる刃の輝きも見事だった。良いナイフだ、と改めて思った。
明夫は今まで忘れかけていたナイフの輝きを再認識させられた思いの、微かな興奮状態のまま、ウインドーを離れた。再び、夜の街を歩きながら、ジャンパーの内ポケットからナイフを取り出して、刃と柄の接点にある金色のボタンを押しては、ナイフを開いたり閉じたりして歩いた。
その夜、部屋へ帰った時には夜半を過ぎていた。
どのようにしたら、最も自分の気持ちを満足させられるように生きられるのか、考え続けていた。外出する事はなかった。
心は奇妙に澄んでいた。気分は爽快だった。あれこれ思い悩む事もなかった。確かな事は、自分の気持ちの内で、何かが一つに集約されつつあるという実感だった。その集約されるものが何なのか、まだ良く見えて来なかった。
明夫は再び、外出するようになった。食事には小ぎれいなレストランなどを選んだりした。その日の気分のままに行動した。
集約されつつあるものが次第にはっきり見えるようになって来た。
明夫は街の中で人々の群れの中にいる事に、奇妙な安心感と喜びを感じるようになっていた。自分が社会の中の一員であるような気分が強く意識された。今まで抱いていた孤独感を意識する事もなかった。
自分の行動は、この数限りない群衆の中で、何時でも実行に移す事が出来る。そう思うと幸福感にも似た思いが生まれた。
明夫の外出は続いた。ジャンパーの内ポケットには、いつでもナイフが収められていた。ナイフがもたらす微かな重みと、その存在感が明夫の安心感に繋がっていた。
明夫は夢想した。この行為の決行には、軽々しい相手ではいけない。ナイフが持つこの確かな重量感と、華やかさに似合った相手でなければいけない。
明夫の頭の中にはもう、憎しみに溢れた自分の父親や母親の姿はなかった。工場主任の成瀬の顔もなかった。明夫を山ザルと呼んだ工員たちの姿も、二階の部屋の女の姿もなかった。
その行動がいつになるのか、明夫自身にも分からなかった。今はただ、この幸福な思いを心一杯享受したいと思うだけだった。その頭の中にははっきりと描き出されていた。
" 理由なき殺人事件 十九歳の少年、通行人を襲う "
完
kyukotokkyu9190様
いつも有難う御座います
励みになります
ブログ 独特の語り口
何処から来るのですか
思わず 吹き出します