不祥事(2011.5.18日作)
例年ならば浮き立つ心で人々は
思い思いに
絶好の行楽季節を満喫していたはずーーなのに
この年 平成二十三年(2011)五月 今
東日本大震災により
完膚無きまでに傷め付けられ
技術立国としてのプライドを見事に崩壊させた
原子力発電所の事故は なお
解決の糸口を見い出せないままに
管理者に悪戦苦闘を強いて
国民を不安に陥れている
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かつて世界に名を馳せ
優良企業としての名声をほしいままにしていた会社
「ソニー」の眼にし 耳ににするに堪えない
情報管理の杜撰さ
完全に地に落ちたブランド
今 あの会社には新製品の創造力を誇った
往年の輝き 昔日の面影はない
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さらに近隣諸国に於いて
優良品として その価値を評価され
この国に居ては想像も出来ない
高額商品としての地位を築いて来た
様々な食料品 その管理技術
他国での不祥事を嘲笑い
この国では起こり得ない事のように
誰もが慢心していた節のある
焼き肉店に於ける事故 中毒死
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次々にこの国を襲って来る不祥事に
言葉もない
今では遠い昔 過去の出来事としてのみ記憶される
第二次世界大戦 あの悲惨な敗北
その敗北の跡 廃墟の中から立ち上がった人々
その人達の懸命 必死の努力によってもたらされた
この国の繁栄 それに対する
多くの外国 他国から寄せられた
賞賛 賛辞 信頼 驚異の眼差し 現在
この国に住む者達が信じて疑わなかったものが今
足元から崩れてゆく
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いったい この根底には何があったのか?
今では この国が誇った一九八十年代の繁栄
あの栄光も失われ
この国が手にしたと思ったものがすべて
砂上の楼閣でしかなかったかのように 崩れてゆく
この国が世界に誇り 様々に賞賛されたすべての事柄は
上辺を取り繕っただけの模造品にしか過ぎなかったのか?
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平成二十三年(2011)五月現在
この国に住む者達に次から次へと襲い掛かり
真実の姿を突き付けて来る現実 その現実の前で
この国の人々は今 改めて 自身の足元 足下に視線を落とし
この国が この崩壊現象から起ち上がり 歩き出すには
何が必要で 何処から始めるべきなのか
何処に向かって 一歩を踏み出すべきなのか
謙虚に自身の心に問い掛け ふたたび
一九八十年代のあの輝きーーたとえ それが
虚飾に彩られた輝きであったにしても
それが輝いていた事実に違いはなく
その輝きを見つめて今度こそは
誰に恥じる事もない真実の輝きを放つ栄光 繁栄を求めて
新たに歩き始める時に来ているのではないか?
この国の国土 本州の四分の一に近い地域が破壊され
そこに有ったものたちが失われ 人の命も失われ
それでも残った人々がいる今 人々は
あの第二次世界大戦の敗北
廃墟の国土から起ち上がった人々の記憶を頼りに
新たなこの国 真実の輝きを放つこの国を築くための
歩みを始める 絶好の機会が今ここにあるーーー
そう思えないだろうか?
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平成二十三年(2011)三月十一日午後二時四十六分
この国を襲った未曾有の大災害にも決して取り乱す事なく
世界の人々を感動させた
冷静に自己を見つめる事の出来る人々が
この国の底辺にいる限り
それは可能な事に違いない