遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉  161 夜のカラス

2017-10-22 14:00:27 | 日記

          夜のカラス(2017.9.29日作)

 

 

   一人の夜は不安だ

   いや 歳のせいばかりとは言えぬ

   日常の何もかもが安定性を失くして

   グラグラ揺れる

   柱を失った古い家のようだ

   この世界全体が

   柱を失った家のように

   グラグラ揺れる

   規範を失くした総てのものたち

   国家 社会 家 人

   そんな不安に満ちた日々の中の

   ふと目覚める真夜中の時間

   カラスが不気味な声で一声

   ギャアと啼いた

   それに答えてまた一声 ギャア

   カラスのアホンダラ 今は真夜中だ

   おまえたちの

   啼き叫ぶ時間ではないのだぞ

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   このカラスたちは近頃

   よく啼きわめく

   遠い記憶の中のカラスたちは

   真夜中などに啼きはしなかった

   夕焼けで真っ赤に染まった空の下

   山の木々の梢でねぐらを探して

   啼いていたものだ

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   あの頃 世界は

   今のようにグラグラ揺れていたのだろうか

   総てのものたちが規範を失くして

   波間を漂う小舟のように

   グラグラ揺れていたのだろうか

   -----

   ふと目覚める真夜中の時間

   追憶は穏やかな日常を運んで来る

   人の心は優しく 気遣いに満ちていた

   時間は今よりずっと

   穏やかに流れていた

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   今 世界は豊かさに溢れている

   人々は豊かさを求め

   豊かさに乗り遅れまいとして

   急いでいる

   時間は追憶の中の時間より

   幾層倍もの速さで過ぎて逝く

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   豊かさとはなんなのだ

   世の中に溢れ出すものたち

   利便が利便を生んで

   人の気分は王様気分

   至福の時間 ひと時の満足

   求めるものは美食に珍奇

   欲求過多

   研ぎ澄まされた欲望だけが

   ギラギラ眼を輝かす

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   人は今 欲望を旅する旅人

   利便を求め 豊かさを求め

   脇目も振らずに進んでゆく

   心は孤独な猟人

   欲望だけが

   目差すもの

   真夜中に

   不気味な声で啼くカラスたちよ

   おまえたちの世界にはいったい

   何があったのだ

   おまえたちもが昼の世界では満足出来ずに

   こんな真夜中

   何かを求めて啼き叫ぶのか

   -----

   ふと目覚める真夜中の時間

   不安に揺れる心を支えてくれるものは

   何  ?

   追憶の中の穏やかな日常を運んで来るものは

   何 ?

 

 

   

 

   

 

   

 



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