遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(517) 小説 <青い館>の女(6) 他 凪の海

2024-09-29 12:18:12 | 小説
             凪の海(2026.9.22日作)


 
 
 風は凪 海は静か
 白く輝く 広い砂浜
 人影は無く 
 遠い彼方 水平線に
 入道雲 積乱雲を浮かべて
 海は穏やか
 何事も無いーーこの幸せ
 自然は美しい
 世界は美しい
 美しい自然
 美しい世界
 人間は ?
 人間という愚かな存在
 あちらの陸地を血で濡らし
 赤く染め
 こちらの陸地で草原 樹木を
 踏み荒らし 焼き払い
 限り無く 繰り広げる
 醜い争い 戦争
 人の命を軽んじ 犠牲にして
 恥じる事が無い
 愚かな者達 人間存在
 政治 宗教 総ては虚妄
 名誉 名声 欲望のみに支配された
 虚偽の城 その支配者 長(おさ)達は
 人の命の尊さ 貴重(おも)さ そこに
 眼を向ける事は無い
 自身の権力 虚名 地位保全 
 その事だけに 精一杯 その事だけに
 心を砕く 日々 日毎
 あの地 この地で 繰り広げ
 繰り返される愚かな争い
 血を血で洗う 醜い諍い
 延々 絶える事無い蛮行愚行
 総ては愚かな支配者 長達の
 その下(もと)から生まれて そこから始まる
 それでも海は 今日も穏やか 凪いでいる
 一人の漁師が今日もまた 舟を漕ぎ出し
 海の恵みの魚貝を獲る
 やがて 日は暮れ 漁師は
 家路を急ぐ舟の上
 今日も一日 穏やかだった
 何も無く 変わった事も無い
 平々凡々 その一日 
 平々凡々 何も無い
 平々凡々 それでいい
 昨日も今日もまた明日も
 平々凡々 何も無い それでも
 こうして生きている
 生きている
 命の尊さ 貴重さ この世に生まれ 恵まれた
 一つの命 人間 人のその命 命の全う
 政治 宗教 虚偽虚飾
 もう沢山
 血を血で洗う醜い争い
 沢山だ !
 誠実 謙虚 真摯に生きる
 人と人との心を通わせ
 自身に向き合い 真摯に生きる
 平々凡々 日々同じ それでいい
 海の彼方に夕陽は沈み
 夜が来る
 家に帰った漁師は今日も
 明日の豊漁夢に見て 
 夜の静寂 その中で 心安らか
 眠りに就く 
 迎えた朝の 今朝の海
 波は穏やか 風は凪ぎ
 漁師は今日も
 一人 静かに舟を出す
 海は穏やか
 風は 凪ぎ




              ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




               <青い館>の女(6)




 
 女がその扉を開けると眼の前には狭くて短い階段があった。
 女はわたしの先に立って階段を上がった。
 人気の無い青い灯りの点った廊下が眼の前に現れた。
 女は奥に向って廊下を歩いて行った。
 両側に四つの部屋が並んでいた。
 部屋の入口それぞれに薄紅、焦げ茶、黄、紫、緑、薄紅梅、緑黄色の小さな明りが点っていた。
 明かりの色が部屋の色になっている、と女は言った。
 女は一番奥、左側の部屋の前へ来て足を止めた。
 深紅の明かりが点いていた。
「これがぁわたしの部屋なんですけどぉ、今ぁ鍵を開けますね」
 女は化粧バッグを開けて中を探り、合い鍵を取り出した。
 女が鍵を差し込みドアを開けると、外から僅かに覗けた部屋の中には深紅の明りが濃い翳を作っているのが見えた。
 女は先に立って部屋へ入ると、ドアを押さえてわたしを中へ導いた。
 部屋は八畳程の広さかと思われた。
 ほぼ中央を仕切って明かりの色より更に濃い、深紅の厚手のカーテンが鈍い光沢を見せて下がっていた。
 向こうにはベッドがあるらしかった。
 入口正面、部屋の奥には毛足の長いこれも深紅の三人掛けソファーが置かれてあった。
 部屋全体が濃密で淫靡な気配に満ちていた。
「すいません、ちょっとぉそのソファーで待ってて貰えますかぁ。今すぐに着替えて来ますからぁ」
 女は入口で気を呑まれた様に立っているわたしに向って言った。
 わたしが頷くと女はドアに鍵を掛け、深紅のカーテンの向こうへ消えて行った。
 わたしは言われたままにソファーに腰を下ろした。
 腰の半分程が埋まる感覚のソファーだった。
 膝元には店の名前そのままに、青の濃いテーブルが置かれてあった。
 上にはAVビデオや若い女性の裸を満載した写真雑誌などが置かれていた。
 他にはテレビがあるだけだった。
 豪華さを気取った雰囲気とは裏腹に何処とは無いうそ寒さがわたしの心を覆う。
 わたしは豪華さを気取った部屋の淫靡な雰囲気にも係わらず、眼の前に置かれたAVビデオや裸雑誌にも興味を抱く事も出来ないままに、ただ、抜け殻の様に空虚な心を抱いたまま坐っていた。
 頭の中には何もなかった。
 空疎な思いだけが満ちていた。
 女に導かれるままにこの部屋に来てしまったが、自分がこの場の雰囲気に馴染めるとは思っていなかった。
 初めて訪れた北の小さな漁港街の怪しげな店で、千載一遇の機会を楽しもうなどという気も湧いて来なかった。
 わたしの身体の中では最早、総てのものが空虚な影の存在としてしか認識出来なくなっていた。
 若かりし頃の溌溂としたあの気分と心の昂揚は遠い昔の、今では帰る事の出来ない過去でしかなかった。
 何時、訪れるかも知れない突然の発作とその先にあるもの・・・・意識を過(よ)ぎるのは常にその不安だった。
 それがわたしの総てを奪ってゆく。
 自身を生きる事の出来ないこの空虚。
 わたしは最早、屍でしか無い。
 カーテンの陰に消えた女はなかなか戻って来なかった。
 わたしを焦らし、気分を昂揚させる為なのか ?
 それでも、わたしの心は萎えたままだった。
 わたしは手持無沙汰のままにAVビデオやヌード雑誌を手に取ってみる。
 それがわたしの心を昂揚させる事は無い。
 わたしは手にしたものを元に戻して部屋の中に視線を漂わす。
 途端に暗い明かりの深紅の色が息の詰まる様な感覚で迫って来る。
 思わず息苦しさを覚えて大きく息を吐く。
 更に、足元のテーブルの青が部屋の暗い深紅と絡み合ってわたしの眼を混乱させ、刺激する。
 わたしは苛立ちと共に女の消えたカーテンに眼を移す。
 その時、カーテンが微かに揺れて女がカーテンの陰から姿を現わした。
 女は裾を引きずる赤い身体の透けて見えるネグリジェを付けていて、その下は全裸だった。
 女の肉体の総てがわたしの眼に映った。
 女は両手にブランデーのグラスを持っていた。
 中味が微かに揺れて、わたしの傍へ来た女は、
「どうぞ」
 と言って、右手に持ったグラスをわたしの前へ差し出した。
「有難う」
 わたしはグラスを受け取った。
 女はソファーに腰を下ろすとわたしに身体を摺り寄せて来た。
「お客さんとわたしの夜の為にぃ乾杯 !」
 女はわたしの前に自分の持ったグラスを差し出して言った。
 わたしは小さく自分の持ったグラスを差し出して女の言葉に応える。
 それでも、わたしの心は萎えたままだった。
 こんな行為の無意味な事をわたしは知っている。
 一体、わたしは何に乾杯するというのか ?
 女はだが、わたしの気持ちなどに拘ってはいなかった。
 自分のグラスの中味を口に含むと、その口をわたしの口元へ寄せて来る。
 わたしの首に腕を絡めて女は、その唇をわたしの唇に押し付け、口に含んだブランデーをわたしの口に流し込んで来る。
 わたしは女の為すがままにそれを受け取る。
 わたしの脳裡には無意識裡に、過ぎ去った日々に蓄積された数々の思い出が蘇る。
 幾度もあった同じ様なこの行為。
 女のネグリジェを着けただけの肉体が、わたしの衣服を通してわたしの身体に触れて来る。




             ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




               takeziisan様


               
               リバティバランスを射った男
              人を思い遣る暖かい心を持ちながら無口で無骨ゆえに
              黒色人種の下僕一人に見守られただけで死んでいった男の悲哀
              数々の名作を持つフォード監督の作品の中でも
              「捜索者」と並んで一、二を競う名作だと思います  
              「カサブランカ」 あのピアノの場面と共にラストシーン    
              良いですね 名場面の一つだと思います  
              「ウエストサイド物語」ジョージ チャキリスが一気に名前を売りましたね        
              「危険な関係のブルース」何度 聴いたか分かりません
              勿論 レコードは持っています
              冒頭の音を聴いただけで自然に体が揺すられてしまいます
              アート ブレイキーとジャズメッセンジャー
              懐かしい名前です
               尾瀬 八月末に那須へ旅行しました
              あの自然が良いですね 山々の樹々 空気の清涼さ
              車の並んだ風景を拝見して改めて思い出しまた                      
                都会の風景の殺風景な事 心の潤いも失われます
              猿にイノシシ 様々な害を思っても何故か 羨ましく思われます
               川柳 相変わらずいいですね
              どの作品もそうだそうだと頷けます
              以前見た何処かの代表作品集に比べ 深さが感じ取れます
              勿論 以前にも書きましたがオベッカではありません
              失礼ですが やはり 年の功という事でしょうか
              「深い」 冒頭の二句 皮肉と深さ まず心に響きました
              その他 皮肉たっぷり等 面白く拝見しました
              有難う御座いました















































































] 
 

遺す言葉(516) 小説 <青い館>の女(5) 他 時間という悪魔

2024-09-22 12:46:26 | 小説
             時間という悪魔(2024.9.2日作)



 
 青春の樹々は日々 
 日毎に美しさを加え
 逞しさを増して その 葉を
 陽光に輝かせ 彩り豊かに 伸展
 天を目差して 伸びてゆく
 老齢の樹 老木は日毎 年毎
 その光りを失い 衰退 衰えの色を深くして
 命の輝き 色彩を失くしてゆく
 時 時間は 片時も休みなく
 刻一刻 時々刻々 流れ
 過ぎて行く
 時々 刻々 休みなく過ぎて行く時間 この
 時間という悪魔
 世界の総てを創り 
 世界の総てを消し去り
 破壊と創造 その繰り返し
 変わる事無い この世の法則
 人の世の営み
 新たに生まれ来る世界
 日々 時々 刻々 失われ行く世界 永久不変の
 時間という悪魔 この前で
 総ては無力 総てが無意味 無
 虚無の世界 人はただ生きる
 生きる事 只今現在 今を生きる
 人に出来る事 それのみ
 迫り来て 過ぎ行く時間 その前で 総ては無力 無
 無 無 無 虚無 虚無 虚無 虚無・・・・虚無




         ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




            <青い館>の女(5)



 

 女はわたしの行為を拒まなかった。
 むしろ、わたしを誘う様に身体を寄せて来る。
 わたしはそんな女の耳元で言う。
「いい歳をして、助平な奴だと思うだろう」
 女はその言葉に答えて、
「そんな事、無いですよお。此処へ来るのはみんなが歳を取った人達ばっかりだしぃ、若い人達はこのお店へは来ないんですよぉ、高いからあ」
 と言った。
「一万円で高いの ?」
 わたしは驚いて聞いた。
 わたしの感覚では理解出来ない金額だった。
「そうですよぉ。一時間、五千円か六千円で遊べる処がいっぱいあるからぁ、若い人達はみんなそっちへ行っちゃうんですよぉ」
 女はなんの不思議も無い様に言った。
「じゃあ、此処へは年寄りだけが来るんだ ?」
「年寄りだけって事も無いんですけどぉ、お店で遊ぶだけならぁ、若い人にはもっと面白い処もあるしぃ」
「こんな風な店が ?」
「そうなんですよぉ」
「それなら、君もそっちへ行った方が楽しいんじゃないの ? こんな年寄りを相手にしているより」
「嫌(いや) ! わたし、若い奴なんて大ッ嫌い」
 思わぬ激しさで女は言った。
 その口調の激しさにわたしは驚いた。
 女の顔には微かな怒りの表情さえが浮かんでいる様に見えた。
 女のそんな様子に戸惑いながらもわたしは、
「じぉあ、年寄りが好きなんだ ?」 
 と、冗談めかして言った。
 すると女は、
「だってぇ、歳を取った人の方が優しいからぁ」
 と何故か、沈んだ声で呟く様に言った。
 その言葉には、自分に言い聞かせる様な響きと共に、哀しみにも似た色合いが含まれていて、女の心の微妙な揺らめきが感じられた。
 わたしはだが、そんな女の抱える事情にまで踏み込んでゆく心算は無論、無い。それで、女の腰に廻していた手を胸に這わせ、その乳房に微かな愛撫を加える。
 女はわたしの動きにも嫌がる素振りは見せなかった。かえってわたしを誘う様に女自身もわたしの身体に胸を押し付けて来て、
「もし、良かったらぁ、奥の部屋に行ってみませんかぁ。料金は別料金になるんですけどぉ、そこでなら自由に遊べますからぁ」
 と言った。
「二人だけになれるの ?」
 わたしは女の言葉に好奇心からのみ聞いていた。
「そうなんですよぉ」
 女は言った。
 先程の寂しげな様子とは違って、早くも商売女の表情に戻っていた。
「でも、駄目なんだ。今日は酒が入ってるから」
 わたしは自身の不可能性を意識して逃げの姿勢に入っていた。
「ああ、それならぁ、別にぃ気にしなくても大丈夫ですよぉ。お年寄りの人にはそんな人がいっぱい居るしぃ、ただ気ままに遊んで貰えればいいだけなんですよぉ」
 わたしの不安をよそに女は、珍しい事では無いかの様に言って気にする様子も見せなかった。
 その言葉に誘われてわたしは、
「別料金って幾らなの ?」
 と聞いていた。
 ここでも好奇心が働いていた。
 「明日の朝までなら五万円でぇ、二時間ならぁ二万円なんですよぉ。その後(あと)ぉ、四十分毎に五千円ずつ戴くんですけどぉ、ちゃんと個室になていてベッドもあるんですよぉ」
 女はまるで貸間を貸す女主人でもあるかの様に言って、なんの拘りも見せなかった。
「個室って、此処には幾つも部屋があるの ?」
 女の言う事がよく理解出来ずにわたしは聞いた。
「そうなんですよぉ」
 女は言った。
「幾つあるの ?」
「八個なんですよぉ」
「八個 ? で、女の子は何人居るの ?」
「八人居るんですよぉ」
「じゃあ、八人居て、みんながそれぞれに部屋を持っているっていう事 ?」
「そうなんですよぉ」
 思わぬ処でわたしは興味を引かれた。
 それが本当なら、どんな部屋なのだろう ?
 怪しげな店の雰囲気の戸惑いにも次第に馴れて来て、興味の赴くままにわたしはその部屋を見てみたいと思った。それで、女に対する心使いでもあるかの様に装って、
「此処に居るよりそっちへ行った方が君たちには良いの ?」
 と聞いた。
「それは勿論ですよぉ」
 女は力を込めて言った。
 その言い方がわたしを誘っている様にも思えた。
 続けて女は、
「もしぃ向こうへ行って貰えるんならぁご案内しますけどぉ」
 と、口に出して誘いを掛けて来た。
 その言葉と共にわたしは先程、女の「それなら別に気にしなくても大丈夫ですよ」と言った言葉を思い浮かべ、自身の肉体の不可能性への拘りを抱く事も無く、赴く興味のままにその部屋へ足を運んでみたい気持ちに動かされていた。
 当然の事ながら、女が言った五万円という金額が安いものか高いものか、現場を見て見なければ分かるはずのものではなかった。
 それでも、普段わたしが重ねて来た様々な遊興の中では決して、高額とは言えない金額だった。金額に対する迷いはわたしの気持ちの中には無かった。
「じゃあ、それがどんな部屋なのか行ってみようか」
 わたしは言った。
 女はその言葉を聞くとこぼれる様な笑顔を見せて、
「すいません、有難う御座いますぅ。そうしたらぁ、すぐにご案内しますからぁ」
 と言って、早速、わたしに寄せ掛けていた身体を離して立ち上がった。

 女はわたしを導いて暗い店内の通路を奥へ向かって進むと、一見、壁と見紛う厚い扉の前で立ち止まった。




             ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




               桂蓮様



                お忙しい中 お眼をお通し戴き有難う御座います
               先週 拝見しましたがお身体の不調 お大事になさって下さい
               何れにしても身体は動かさなければ衰える一方です
               血流が関係しているのだと思います
               わたくしはほとんど 自己流マッサージと指圧で治しています
               少し前 膝に痛みが出て心配したのですが 
               毎日の指圧とマッサージで今は殆ど痛みが無くなりました
               また 左の耳が気が付いたら聞こえなくなっていたのですが
               これもマッサージで治しました 今ではほぼ完全に聞こえます
               耳は一度悪くなったら治らないと聞いていたのですが
               何れにしても 今もマッサージは続けています
                兎に角 人間 生きる上で 基本的な事が何より大切だと思います
               基本をおろそかにしない 基礎の出来ていない建物は壊れ易い
               すぐにボロが出る どの世界に於いても同じ事だと思います
               幸い 何処も悪い所は無いのですが年齢からみて
               何時 何があってもおかしくないと思って日々の生活に今までより一層
               注意をしています
                有難う御座いました


               


                 gtakeziisan様



              何時も有難う御座います
             暑さ寒さも彼岸まで どころか猛暑 衰える気配なし
              確実に気候は変わりました
             この先 地球の気候はどうなる事やら 人類危機の懸念さえ
             頭を過ぎります 実際に気候変動はこれまでにも地球上に様々な影響を及ぼしていると聞くと
             絵空事では済ませない気がして来ます
              それにしても何やかや 厳しい世の中になったものです
             そんな中 秋の七草 様々に咲く花は心慰めてくれます
             毎年毎年 変わる事の無い自然の移ろい 姿ですが
             またこの季節を迎えた と思います
              雹 落ちた銀杏 懐かしい風景ですが この地方では
             滅多に見られません
             銀杏は眼の前にそれなりに大きな公園があり そこに何本も並んでいるのですが
             まだ樹が小さいのか 毎年 剪定をしてしまうせいか稔りません
             銀杏を煎って食べるのが好きなんですが
             雹はこの地方では滅多に見られません 何時も書く様ですが
             気候的には本当に安定した住みよい場所です
             今朝もニュースで能登地方の大雨を放送していましたが
             踏んだり蹴ったり 災難の上に災難 お気の毒の一言で 言葉もありません
              懐かしい音楽の数々 思い出ばかりが蘇ります  
             それにしても此処に見る人達の誰彼がみんな遠い人になってしまって
             自身の人生の残りも思いやられます
             生きる事の厳しさが年々 身に沁みて来ます
              楽しい画面を有難う御座います


























 

遺す言葉(515) 小説 <青い館>の女(4) 他 雑感四題

2024-09-15 12:20:33 | 小説
              雑感四題(2020~2024年)



 
 1   無意識の世界は
   知識から得られるものではない
   体験から得た事実感覚が基になり
   自ずとその物事に対しての行動を促す
   知識 理論だけでは及ばぬ世界
 
 2     禅の世界は日常 常套を 超え その
   向こう側に有る 
   物事の本質に迫る世界
   理論 理屈 知識では
   到達し得ない

 3      人生は
   未知から未知への旅
   今日という日の運命も
   今という時の一寸先も
   見えないーー偶然は何時でも起こり得る 
   明日という日はなおの事
   総ては未知の世界を歩んで行く旅
   旅が人生 人は時を旅する旅人

 4  古時計 壊れたままに 年老いて
   
   行く時の ツバメの如し 五月雨
   
   思い出の 年毎増えて 今一人
   
   父が居て 母が居て 夢一夜 




            ーーーーーーーーーーーーーーーーーー




              <青い館>の女(4)



 

 男が消えるとわたしはまたしても落ち着かない気分に捉われた。
 料亭やそれなりに高級なクラブには馴れていても、この店の如何わしさには怖れがあった。
 落ち着かない気持ちのままに煙草が欲しいと思ったが、既に何年も前に止めていた。
 無論、心臓発作への恐怖からだった。
 そうするうちに女性が来た。
 カーテンの入口を塞ぐ様にして立った女性は、薄いピンクの短いネグリジェにも似た透き通る衣装を着けていて下着が透けて見えていた。
 一目で幼さが見て取れた。
「いらっしゃいませぇ」
 小さな化粧バッグを手にした女性は丁寧にお辞儀をして言った。  
「今晩わ」
 わたしは座席から見上げて言ったが、その若さの前ではやはり居心地の悪さを覚えずにはいられなかった。 
 いい歳をした助平親父が・・・・そう思われるに違いない。
 自分が好色で品性の無い人間と思われる事に屈辱感にも似た感情を覚えて居た堪れない気持ちになった。
 少なくともこのいかがわしい店には、一流クラブや高級料亭の様にわたしの自尊心を満たしてくれるものは何も無い。
 惨めさと屈辱的な思いだけが増した。
「お邪魔しますぅ」
 若い女性はだが、屈託がなかった。
 如何にも馴れた口調の商売用といった上品さを気取って明るい声で言うと、そのまますぐにわたしに身体を押し付ける様にして座席に坐った。
 若い女性の柔らかな肉体の感触が直(じか)にわたしの肉体に伝わった。
 瞬時に甦る幾重にも重なり、混じり合った過去に得た感触だった。
 目まぐるしく、走馬灯の様に交錯する様々な感触、体験、若かりし頃の豊かな色彩に彩られた記憶がわたしを過去へと引き戻す。
 だが、そんな過去も今のわたしには枯れ葉の世界に埋もれた遠い日々の記憶でしか無かった。
 あの日々の再び戻る事は無い。
 わたしの心は萎えていた。
 この店のいかがわしさにも係わらずわたしは、女が静かにして居てくれる事を願わずには居られなかった。
「このお店へは初めていらっしゃったんですかぁ」
 女はなお、屈託のない声でわたしを見詰めて言った。
 歳は幾つぐらいになるんだろう ?
 二十歳  ? あるいは、二十一歳か二歳にはなるのだろうか ?
「そう、初めてなんだ。霧に包まれた夜の街があんまり綺麗だったもので、歩いて来たら呼び止められた」
 若い女の屈託の無さに誘われて自ずと柔らかい口調になっていた。
「旅行でいらっしゃったんですかぁ ?」
「そう」 
 わたしは無意識の裡に取り繕っていた。
 こんな所でわたしが誰かを知られては拙い。
<スーパー・マキモト>の存在が頭の中にはあった。
 この事が直接、営業に影響を及ぼす事は無いかも知れないが、もし、噂が広がれば店員達の間でわたしの権威は忽ち失墜してしまうだろう。
 北の小さな漁港街のピンクサロンで遊んでいた会長。
 社員や店員達は蔑みの眼でわたしを見るだろう。
「でも、こんな辺鄙な漁港街へ旅行で来るなんて珍しいですよぉ」
 女は言ったがわたしの言葉を疑う様子は無かった。
「観光客が来る事はないの ?」
 言い訳でもする様にわたしは聞いた。
「仕事なんかで来る人は時々いますけどぉ、観光なんかで来る人はあんまりいないですよぉ。ロシア人達はよく来ますけどぉ」
「ロシア人 ?」 
 わたしは意外な思いで聞いた。
「そうなんですよぉ。漁船に乗ったロシア人達が蟹やお魚を持ってこの港に来るんですよぉ。それでぇ、隣り町まで行ってぇ、日本製の電気製品なんかを買って行ったりするんですよぉ」
 女はそれが当たり前の事の様に言った。
「ああ、そうか」
 わたしは納得する思いだった。
 と同時に早くもわたしは長年の習慣から身に付いた、経営者としての立場からこの事を考えていた。
 息子や店長はこの事を知っているのだろうか ?
 当然、知っているだろう、と思った。
 市場調査の為に息子は何度もこの街に来ているのだ。
 店長はどうだろう ?
 いずれにしても、この街ではロシア人相手の商売が成り立つかも知れない。
 女の言葉はわたしには予期せぬものだったが、それとは別に改めてそんな情報の何一つわたしの耳に入っていなかった事にわたしは、小さな驚きと共に些かの寂しさをも感じ取っていた。
 これが、息子が完全に独り立ちをしたという事なのだろうか ?
 殊更、わたしに反抗的な息子では無かったが、それでもわたしは、北の街での細かな情報の何一つ、わたしの耳に入れる事無く仕事を進める息子に次第に遠くなって行く姿を見る思いがして、一抹の寂しさを覚えずにはいられなかった。
 その後ろにはやはり妻の影がある。
 𠮟咤激励する妻。
「あなたのお祖父さんなら」「あなたのお祖父さんは」
 幼い頃から母親に飼い馴らされて来た一人息子は、漸く母親離れをしたとはいえ、未だにその影響の皆無だとは言い切れないものがあった。
 事に当たっての決断にはわたしより先に母親の意見を求める。
 すると母親は息子の父親であるわたしの意見を聞く事も無く「失敗を恐れるな。兎に角、遣ってみろ。決断は迷わず、損切は早くしろ。迷ったら負けだと思え、それがあなたのお祖父さんの口癖だったのよ」と言う。
 息子はそれで漸く、公園で遊ぶ許可を貰った子供が表へ飛び出して行く様に心を決めて、危ない橋も渡って行く。彼の祖父を思わせる強引さで。
 幸い、今日まで大きな怪我の無かった事が何よりだ。
 だが、彼等、息子も妻も、息子の祖父も、わたしが何時も彼等の歩いた跡を懸命に均して歩いていた、という事実に眼を向ける事は全く無かった。総ての事が当然の事だと思い込んでいる。ーー
 考えて見ればそんな事の総てが、わたしに取っては屈辱以外の何ものでも無かったが、今更、こんな所で悔やんでみても始まらない。今は今という時間の中に自分を埋め尽くして総てを忘れてしまうがいい。
 わたしはそう自分を納得させると初めて、若い女の裸体にも見える衣装を纏った柔らかい肉体に腕を廻わした。
 踏み込んで女の世界に入って行く事は出来ないが、その肉体の甘味な感触だけは楽しむ事が出来る。




             ーーーーーーーーーーーーーーーーー




              takeziisan様

       
                彼岸花 もうそんな季節になりましたか  
               それにしてもこの猛暑 彼岸花の実感が湧きません
               田圃などの畦道に一面に咲く彼岸花 あの爽やかな秋の気配が懐かしさの中に
               偲ばれます
                朝五時台の出動 お元気な証拠ですね
               わたくしは五時前後に一度眼を覚まし 六時半の起床に向って
               また一寝入りです   
               幸い 寝付きは良く ぐっすり眠れもします
               お陰様で健康体で老人介護保険料など少しはキックバックしてくれ と
               ボヤキたくもなります
               クスリを呑む事も無く保険料の厄介になるのは    
               毎年の健康診断料のみです
               奥様の薬の分別 母親を思い出しました
                チャップリン 街の灯 良いですね
               ドタバタの中に込められたヒューマニズム
               他の喜劇には無い優れた要素です 天才が偲ばれます
                川柳入選作 それなりに状況を読んでいるとは思いますが
               これは・・・と言った身を乗り出す様な秀作はない気がします            
               鋭い皮肉の利いた作品が欲しいですね
                この暑さ 何時まで続くことやら
               運動 身体を動かす事 歳を重ねれば重ねる程
               必要になって来ると思います どうぞ これからもウォーキング 水泳 続けて下さい
               何か一つの趣味を持つ事も大切ですね
               川柳も頑張って下さい
                有難う御座いました

 
   




遺す言葉(514) 小説 <青い館>の女(3) 他 食べて眠る

2024-09-08 11:48:52 | 小説
            食べて眠る(2024.8.14日作)



 
 眠りなさい ただ 眠りなさい
 あなたが人生に何も見い出せない
 そう言うのなら眠りなさい
 眠って眠って眠って眠る
 眠りは仮相の死 一時的な死 そこでは
 何を考える事も無く 何をする事も無い
 ただ眼を閉じ闇の世界に身を置くだけ
 時には天国地獄 絵図を見る事 
 あるかも知れない それはそれ
 仮相の世界 一時的 夢の世界
 眼を開けば消える
 あなたがそうして眼を開いたなら また
 食べて眠りなさい 眠って覚めたらまた食べる
 その繰り返し 繰り返しのその中できっと何時かは 
 単調なその世界 射し込む光りが見えて来るはず
 何も無い する事が無い 虚無 無の世界
 そこに射し込む僅かな光り それこそが本物 真実あなたの
 心の世界
 眠って眠って眠って眠り 食べ食べて食べて食べる
 いったい 俺は何を遣ってるんだ !
 何時かはそんな自分が見えて来るはず
 何も考えない 何も見ない 何もしない
 虚無 無 無の世界 そこに射し込む光り
 一筋の僅かな光り その光りこそが
 真実 本物 あなたの世界 きっと
 あなたを活かしてくれる希望の光り
 希望の光り そこに向って歩いて行く
 歩いて行けばいい あなたはきっと
 そこで生きられる
   それまではただ 眠って眠って眠って眠る
 食べて食べて食べて食べる そしてまた
 眠る その繰り返し 無 無の世界
 無の世界を生きる  生きる事 ただ生きる
 そこに望みが生まれる 希望の光りが見えて来る
 それこそが本物 あなたの世界



           
             ーーーーーーーーーーーーーーーーーー




             <青い館>の女(3)




 
 わたしは酔ってはいなかった。
 少しの酒が深い霧の中でも寒さを感じさせない程に身体を温めていたが、頭も身体も動きは明晰、活発だった。
 それに、わたしはまだ物事の判断を誤る程に思考力が衰えてもいなかった。
 その中でただ、年々、加齢と共に増して来る虚無の思いだけが深くなっていた。
 絶えずわたしを脅(おびや)かし続ける心臓疾患が死に関して無関心でいる事をさせなかった。
 もう見えて来た人生の境界線、生と死の分岐点。
 その前でわたしの生きて来た過去がわたしを苦しめる。
 悔いと自己憐憫。
 哀れな男の姿だけが見えて来る。
 だが、わたしは一体、幸福だった時の自分を知らないのだろうか ?
<スーパー・マキモト>の社長としての自分を誇りに思い、得意になって、嬉々として仕事に励んでいた日々は無かったのだろうか ?
 否、そんな事は無い。
 恐らくわたしにも心の晴れやかだった日々の無かった事は無いのだ。ただ、今のわたしにはそれが思い出せない。
 思い返すわたしの過去に浮かび上がって来るのは何時も、妻と義父の姿だった。過去のあらゆる物事がその姿の前に掻き消され、呑み込まれてしまう。
 苦さと共に生きた妻との三十数年。
 屈辱と悔悟に彩られた歳月。
 しかし、今更、悔やんでみても始まらない事だった。
 もう、わたしには様々な悔いを抱いた心のままに、既に見えて来た人生の境界線に向って歩いて行くより外に出来る事は無い。
 その人生に望む物は何も無い。
 何時、変調を来すかも分からない心臓疾患がわたしの心も身体も制約する。
 年々、深くなる心の裡の虚無を抱いたままわたしはこれからも、妻との不毛の人生を生きて行く。
 息子は恐らく、わたしが居なくても大丈夫だろう。確実に会社を発展させてゆく事だろう。
 会社経営にかけては、息子はわたしより上だというのが専らの評判だった。
 そんな息子を見守りながらわたしは、枯れ木が朽ちてゆく様に朽ちてゆく。
 それにしてもわたしは一体、何故こんなにも心臓疾患に拘るのか ?
 死ぬ事がそんなにも怖いのか ?
 死んでしまえば何も分からなくなってしまうだけの事ではないか ?
 一体、わたしは生きる事の何に未練を残しているのだろう ?
 わたしには、わたしの心が分からない。
「お一人様御案内 !」
 霧に包まれた夜の街でわたしを案内した男は、薄暗い廊下にある店の薄汚れた黒い扉を開け、奥に向って言った。
「いらっしゃいませ」 
 途端に、奇術師の様に突然、扉の陰から姿を表した背の高い瘦せぎすな男が丁重に頭を下げて言った。
「どうぞ、こちらへ」
 わたしは店の外にいた若い男に案内され、漆喰の白い壁が汚れている急な階段を降りている時、ふと、自分が二十代の頃の自分に還っているかの様な奇妙な錯覚に捉われた。
 と同時に、自分に取ってはそれが青春の性の唯一の捌け口だった事が改めて思い出されて、あの頃はよく、この様な階段を降りていたものだった、と思った途端に、現在の自分が如何にも場違いで惨めな場所に足を踏み入れている様な気がして来て激しい嫌悪感に捉われた。
 このまま踵を返して地上に戻ってしまおうか・・・・そう思った時には既に遅かった。階段は尽きていた。
 黒い扉が開けられ、薄暗い内部が眼の前にあった。
「足元にお気を付け下さい」
 扉の陰から現れた背の高い痩せぎすな男はわたしに言うと、足元を懐中電灯で照らして、わたしは弥(いや)が上にも店内に引き入れられていた。
 懐中電灯で足元を照らす背の高い男はすぐにわたしの前に立って、両側にそれぞれカーテンで仕切られた個室が並んでいる狭い通路を奥に向かって進んで行った。
 カーテンの透き間からは赤色(せきしょく)の暗い明かりが小さく漏れていた。
 中から聞こえる人の蠢く気配と囁く声がわたしの不安を誘った。
 旨くこの場の雰囲気に対応出来るだろうか ?
 わたしを案内した男はカーテンの開いている個室の前で止まるとわたしをかえり見て小さく頷いた。
 男はそのまま部屋の中に入って小さなテーブルの上のスタンドランプに手を延ばして明かりを点けた。
 テーブルの前にはこれも深紅の深々としたソファーが置かれてあった。
「どうぞ、奥の方へ」 
 男は二人掛けのソファーを指して言った。
 わたしが中へ入って腰を落ち着けると男は、
「誰か、御希望の子はおりますか ?」
 と聞いた。
 怪しげな思わぬ場所へ足を踏み入れてしまった事への後悔と共にわたしは不機嫌な声で、
「いや」
 とだけ答えた。
 男はその答えには係わりなく、
「前金で一万円戴く事になっております」
 と言った。
 わたしが上着の内ポケットを探って財布を取り出し、一万円札を渡すと男はそのまま、
「時間は一時間限になっております。飲み物は追加が自由になっています」
 と、店内の規則を説明してから、
「少々、お待ちください。只今すぐに女の子が参ります」
 如何にも事務的な口調で言ってそのままカーテンを閉め、去って行った。




             ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




               takeziisan様


                有難う御座います
               取れ過ぎちっゃて困るのよ
               贅沢な悩み 大腸がん手術をしたので 日頃
               野菜を多く取る食事をしています
               その野菜の高いこと高いこと 総てがべら棒値
               年金生活者には堪えます
               出来たら貰いに行きたいものです それにしても
               雑草 こいつには全く困りもの 屋上のプランターでさえ
               たちまち雑草の山 人間もこの位 活力があるといいのですが
                たったこれだ ?
               何事も実際の実入りとなると少ないものですね  
                旅愁 観てないですね 昭和二十七年 まだ中学生
               田舎に居ました 曲は勿論 知っています
                夜霧のしのび逢い これは観ました
               あの主題曲と共に終末部分の二人の別れのシーンに
               ジーンと来た事を今でも覚えています
                主題曲と共にもう一度 観てみたいですね
               自分の感情が何十年も経ってどの様な反応を見せるか
                荒野の七人 矢張り原作には敵いません
               七人の侍 封切を日劇で観ました あの雨の中の決闘シーン
               その迫力に圧倒されました
               名場面ですね 黒沢監督が四つのカメラで撮ったという事で
               話題になりました
               映画史上十指に入る名作だと思います
                20度 ? ちょっと考えられないですね
               気違いじみたこの暑さ 今日も既に猛暑です
                なかなか腰が上がらない
               実感です 年々 動く事が億劫になって来ます
               かと言って動かないでいると衰えるばかり
               生きるという事もなかなか辛いものです
               もう少し 生きていたいと思いますので
               弱音を吐いたら終わりと頑張っています
                    カマキリ この獰猛な生き物 以前 NHKテレビで
               舳倉島でカマキリが小鳥を捕まえて食べるシーンを放送していました
               小鳥がカマキリを食べるのではなく
               カマキリがあの鎌で小鳥を捕まえる びっくりしました
               世の中には何があるか分からない
               この世の中の複雑怪奇さ 単純な自分勝手の思い込みは通用しない様です
                有難う御座いました












































遺す言葉(513) 小説 <青い館>の女(2) 他 生きる目的

2024-09-02 11:13:54 | 小説
             生きる目的(2022.1.15日作)



 人間が地球上に生きる
 究極の目的
 人間 一人一人が その国 その地域の文化の下
 如何に幸福に生きられるか その点に有り
 政治も 思想も 科学も 化学も
 その為に 奉仕されるべきもの
 思想の為の思想 科学の為の科学 化学の為の化学 政治の為の政治
 思想至上主義 科学至上主義 化学至上主義 政治至上主義 総て
 邪道
 人の心 人の幸せ
 その原点を忘れた思想や科学 化学や政治
 やがて
 人類の破滅 滅亡という道を
 辿るだろう




             ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




          
               <青い館>の女(2)



 

 わたしが社長の時代にも義父は会長職にいた。
 その点では義父の死に伴う今度の人事にも何らの不自然さは無く、わたしが現在の立場を不満に思わなければならない理由は何も無かった。
 わたしが社長を補佐して要所要所を押さえ、社長の経験不足による失敗を補つてゆく。
 だが、<スーパー・マキモト>創業者として、店頭市場に株式を公開してからも、なお七十パーセントに近い自社株を保有して絶大な権力の下、ワンマンと言われた義父とわたしとでは同じ会長と言っても雲泥の差があった。
 現在、わたしには株式総数の六十数パーセントを二人で持つ妻と妻の母親が居た。義父の様に絶対的権力を行使する事は出来なかった。
 総ての事が妻と妻の母親の意向によって決定される。
 その上、わたしには義父の様な豪胆さも無い。以前から、細心、細やかな心配りをする社長と言うのが、現場で働く社員達のわたしに対する評価だった。
「厭ならやめろよ」
 義父の口癖だった。
 札束で頬を張る。
 倒産企業の買い叩きは義父の最も得意とする手法だった。
「血も涙も無いね、あの社長は !」
 それでいて他人の恨みを買う事が無かったのは何故だったのだろう ?
  頑固一徹でありながら、何処か大雑把なところの透けて見える人柄が多くの人々の気持ちを和らげていたのかも知れなかった。
 そんな義父の仕事ぶりに対して、社長のわたしが口を挟む余地は殆ど無かった。第一、わたしが口を挟んだとしても義父は端(はな)から受け付けない事は眼に見えて明らかだった。
 わたしの役目はただ、義父が強引なまでの手法で切り開いた荒れ地を均して後から付いて行く、それだけのものと言ってよかった。
 殊更、わたしが意識してした事では無かった。わたしが生まれた環境ーー家の貧しさ、妻との結婚に至るまでの過程、様々な条件が重なり合った結果に依るものに外ならなかった。
 義父が死んだ時、専務であったわたしの妻はわたしに言った。
「孝臣を社長にして、あなたは会長の立場からあの子を見てやって下さい」
 わたしに異存はなかった。
 異存を言っても始まらなかった。
 株式の絶対多数を妻とその母親に握られている以上、わたしの意見は通らないのだ。
 それに、息子が社長になる事に父親のわたしが敢えて反対をしなければならない理由も無かった。赤の他人に権力が移る訳ではない。
 心筋梗塞で倒れた経験を持つわたしには、体力的にもまた自信が持てなかった。
 日常の生活には格別の不自由は無かったが、激務に耐えられるか ?
 幼い頃は何かと母親の言いなりに成りがちだった息子もこの頃には、少しずつでも自分の考えを持つ様になっていて今度の、一見、辺鄙とも言える北の小さな漁港街への進出を決めたのもその一つの例だった。
 息子は大手スーパーの間隙を埋める様に小まめに地方へ足を運んでいた。
 そして、わたしは今度もまた、義父の跡を均して歩いた様に息子の開いた跡を均して歩いている。
 何事もわたしの提案には素直に頷かない妻も、義父に性格の良く似た息子の大胆な提案にはよく耳を傾けた。
 妻はわたしとの出会いの当初から、あらゆる面でわたしなど念頭に置いていなかったのだ。
 妻の腰巾着の様に何事も彼女の言いなりだったわたしなら御し易いと考えて、数多く居た彼女に言い寄る男達の中からわたしを選んだのに違いないのだ。
 妻は学生時代から誰の眼も引かずには措かない評判の美貌の持ち主で、裕福な家の気位の高い一人娘だった。

「会長、お帰りになられるんですか」
 店長がわたしの傍へ来て言った。
 三十八歳の高木という店長とわたしは今日、初めて会った。
 息子が隣り町にある大手スーパーから引き抜いて来た男だったが、息子の眼に狂いは無さそうだった。
 切れの良い彼の言動には好感が持てたし、他人への接し方一つ採ってみても自然に滲み出る柔らかさがあって、この男なら、まず、間違い無いだろう、わたしは秘かな満足感の裡に合格点を付けいた。
「うん。ちよっと疲れたから先に帰るよ。皆さんには宜しく伝えておいてくれ」
 パーティーの主要な行事も済んで会場が乱れて来た時、わたしは若い社員を捕まえて、
「そろそろ帰るから、店長には後でそう言っておいてくれ」
 と告げて会場を後にしようとすると、店長は早速、その言葉を聞き駆け付けて来たのだった。
「はい、分かりました。じゃあ、ちょっとお待ち戴けますか、すぐにタクシーを呼びますから」
 店長は気を利かせて言った。
「いや、タクシーは要らないよ。歩いて帰ろう。ホテルまでは近いし、此処は初めてなんで街の様子を見ながら海岸通りを行ってみよう」
「そうですか。では、お気を付けてお帰り下さい。わたしはもう少し、皆さんのお相手をしていますので」
「うん、そうしてくれ」
「明日はホテルから直接、お帰りになられますか。それとも一度、お店の方へ来て戴けるのでしょうか。多分、開店セールで混雑すると思うのですが」
「一度、顔を出すよ。東京へ帰るのは多少、遅くなっても構わない」
「帰りの航空券は ?」
「いや、未だだ。ホテルで聞いたら何時でも取れるだろうという事だった」
「わたし共の方で手配致しましょうか」
「いいよ。忙しい中で、そんな心配は要らない。それより、みんなも早く切り上げて明日に備えた方がいい」
「はい。分かりました」
 パーティー会場のある建物を出ると外は深い霧だった。わたし自身も霧に包まれて見知らぬ街を歩いて来ると、突然、霧の中から現れた男がわたしを誘ったのだった。




              ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




                taheziisan様


                 懐かしい映画音楽の数々 音楽に限らず
                映画自体も昔のものは良く作られている様に思います
                最近の映画は日本映画に限らず ハリウッドの物でも
                何かつまらない様に感じます 映像自体が軽くなっている様な気がして 
                なりません
                 ハリウッドには昔は綺羅星の如くスターが存在して居ましたが
                今はどうなのでしょう かつての様にスターが並び立ってはいない様な気がしますが
                 哀愁 愛情物語 ベンハーのスケールの大きさ
                 哀愁 は日本の 君の名は の原型ですね
                 ウォータールーブリッジが数寄屋橋
                 ヴィヴィアン リーの被っていた帽子が真知子巻き 
                 後はドラマの好評の結果 次々と物語が独自に展開してゆく 
                 一世を風靡した ドラマでした              
                 懐かしいですね
                  愛情物語も良い映画でした
                 亡くなった永六輔さんがよく タイロン パワーが終戦直後の
                 銀座の四丁目十字路で交通整理をしていた と言っていましたが 
                 わたくしが東京へ出た頃は既に進駐軍はいませんでした             
                 みんな遠い思い出です
                  遠い思い出と言えばかつての山小屋で勉強をしていた次男さんでしょうか
                 アメリカから一時帰国されたとの事 時は過ぎ行くですね
                 お疲れ様でした ちよっとした環境の変化が身体に応える
                  お互い そのような年齢を生きているのですね        
                  川柳 
                 呑み助は あれやこれやと 口達者 
                  と言うところでしょうか
                 春になれば花が咲き 老木は枯れてゆく
                 人生ですね
                  自然に溢れる音楽 電線の五線譜 鵜は
                 歌っている様に見え 花は踊っている
                  今回も様々 楽しませて戴きました
                 有難う御座いました