goo blog サービス終了のお知らせ 

遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(549) 小説 <青い館>の女(38) 他 愚人大統領

2025-05-25 11:25:50 | 小説
               愚人大統領(2025.5.23日作)



 この 大言壮語の果ての無能ぶり
 アメリカと言う国の品性 権威が
 日毎 月毎 低下 失われ
 渦巻く嘲笑の波は
 世界各地に沸き起こる
 それでも御当人 何処吹く風の
 暴言 妄語 愚行の数々 乱発
 アメリカ大統領 トランプ
 かつては限り無い憧れの国 
 垂涎の的だったアメリカ
 只今現在 その魅力は失せ果てて
 失望と軽蔑の対象国へと成り下がって行く
 無能な大統領 下卑た動作のあの 身振り手振り
 歪めた顔での悪口雑言 世界各地に撒き散らす
 品性 品位 資質の欠けらも無い アメリカ大統領
 愚かで無能なトランプ故に
 世界の平和 秩序が乱され 日毎 月毎
 壊れてゆく 




          ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




              <青い館>の女(38)




「切ってしまった」
 わたしは気を取り直して加奈子に言った。
「なんて言ったんですか」
 不安気な表情で加奈子は聞いた。
「会う必要なんか無いって言った」
「全く卑怯なんですよぉ」
 込み上げる怒りを抑えられない表情の憎悪を込めた口調で加奈子は言った。
 わたしは手に持ったままの受話器を元に戻した。
 加奈子は窓辺へ行くとカーテンを揺らす事なく小さく開いて外を覗いた。
「見えるかい ?」
 その背中に問い掛けた。
「見えないですよぉ」
 加奈子は外を見詰めたまま言って、なお外を覗いていた。
 その夜は再び電話の鳴る事は無かった。
 男はわたしと加奈子の上に共通の影を落として新たな気懸かりとなった。
 その夜、わたし達は同じ難題を抱えた者同士としての共通意識の下、思いも掛けない充足感を何時もの行為の中で得ていた。
「だからと言って、無理をしてはいけません。抑制だけがこの安定を保証してくれるんですから」
 斎藤医師の言葉が頭を過った。
 斎藤医師は常にわたしの暴走を牽制する様にこの言葉を口にしていた。
「言わば、終身執行猶予の身と言う事ですかね」
 わたしは取り戻す事の出来ない虚無感の中で、斎藤医師の言葉を肯定するより仕方がなかった。
「まあ、そう思っていれば間違いありません」
 斎藤医師は軽い微笑と共にわたしの言葉を受け入れた。
 男はその夜以降も、格別、変わった行動に出て来る事は無かった。
 それでも加奈子に付き纏っている事に変わりは無くて、電話の夜以来、わたしには奇妙にそれが気になって、小うるさく鬱陶しいものに思えた。
 心の表層を荒立てられる様な気分の居心地の悪さと共に、男の存在を抹殺してしまいたい苛立ちに囚われた。
 無論、直接的な行動に出る事など出来るはずもなくて、わたしは苛立ちだけを募らせた。
 北の街の支店ではその間にも開店一周年を迎えていた。
 記念の感謝セールと銘打った安売りが一週間にわたって行われた。
 改まっての行事、パーティー等は行わなかった。
 経費削減、簡素が義父から受け継いだ<スーパーマキモト>の経営理念で、それはわたしや息子の代になっても受け継がれていた。
 わたしはそれでも、感謝セールの最終日には支店長に、売り場の主任達だけでも一年の労をねぎらう様に言って、その為の出費を認めた。
「だから、あなたは甘いって言うんですよ」
 妻なら多分,そお言うだろう。
 無論、構わない。
 これまでにもわたしは、義父や妻には内緒で何度もそうして来たのだ。
 北のこの小さな街で思いも掛けない成績を上げた従業員達の労をねぎらうのも悪くはない。
「なかなか良いですねえ。結構、遣り手ですよ」
 東京本社から送り込んだ川本部長も若い支店長の手腕を高く評価していた。
 その支店長が希望している中古車販売に関しては、目立った進展は見られなかった。
 息子はまず、中古部品の販売から入りたい意向で、その方面との提携を模索していた。
 わたしは息子の依頼で、提携相手になりそうな業者を何度か現地に案内したが、息子は相変わらず多摩地区の物件の立ち上げに向けて精力的に動いていた。
「親父さんに北の街へ案内して貰った篠田興業が、話しに乗ってもいいって言って来たよ」
 本社のわたしの部屋へ顔を出した時、息子は言った。
「いいって ? で、どうするんだ。進めるのか ?」
 わたしは部外者の様に熱意も無く聞いた。
「うん、進めようと思うんだけど、今直ぐにっていう訳にもゆかないんだよ。ちょうど、多摩地区の物件も煮詰まって来ているし、先にこっちの目安を付けて置きたいんだ。だから、篠田興業の方は当分、見ていて貰いたいと思ってるんだ」
「多摩地区の相手は急いでいるのか ?」
「急いでる訳ではないけど、篠田興業の社長には、一応、会長に相談してみて詳しい返事は後でするって言って置いたんだ」
「まあ、繋ぎは付けて置くが、最後の交渉はお前がすべきだなあ。お前がこの会社の責任者なんだから」
「うん、それは分かってるよ。だから、もう一度相手の実態を詳しく洗い直してみて、間違いが無ければ進めようと思うんで、それまで繋いで置いて貰いたいんだ」
 わたしが北の街へ向かう月に一度位の割合はその間も変わりなく続いていた。
 その度にわたし達は加奈子の部屋で会う様になっていたが、それも慣れて来ると如何にしても部屋の狭さが気になった。
 普段、広い部屋で気ままに過ごしている身には、その狭さが何に付けても息苦しく思えた。
 わたしは北の街へ向かう飛行機の中で次第に一つの思いに没頭する様になっていた。
 最早、不治とも言える身体不調を抱えて日々、鬱々として過ごす身に取って北の街は、思いも掛けず偶然出会った年若い一人の女の存在と共に何故かしら、不思議に生きる事の息苦しさと滅入る気持ちを解き放ってくれる空間になっていた。
 その北の街で生きる為に、加奈子にマンションの一部屋を買って与えてはどうか ?
 これからも加奈子との関係を続けてゆく為には一つの良案に思えた。
 今のわたしには決して不可能な事では無かった。
 それ位の事なら何時でも出来る。
 無論、名義は加奈子のものにする。
 加奈子も恐らく厭とは言わないだろう。
 マンションの住居が自分の物になるのだ。
 それにわたし自身、北の街へ来る度にあの狭い部屋へ行かなくて済む事になる。
 周囲の眼を気にする必要も無くなる。
 今のわたしに取って最良の構想に思えた。
 あとは加奈子がなんと言うか ?
 恐らく、世間一般の常識から見た時、如何にも馬鹿げて物好きな戯(たわ)言に思える違いなかった。
 然し、当のわたしに取っては戯言で済まされる事では無かった。
 残り少ないわたし自身の人生に於ける最後の自分自身を生きる為の一つの道に他ならなかった。
 悔いなく残り少ない最後の人生を生きる。
 後はわたし自身が納得無出来ればいい。
 わたしは加奈子を付け廻す男の存在も考えた。
 もし、住所が変われば男も付け回しが出来なくなるのではないか ?
 だが、直ぐにその考えの甘い事に気付いた。
 例え、住所を変えたとしても、仕事からの帰りを付けられた直ぐに住所はばれてしまう。
 男の眼から逃れる為には住所を変えるだけでは駄目なのだ。




             ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




              tyakeziisan様


               このブログをお止めになるとの事
              長い間 何時もお眼をお通し戴き有難う御座いました
               新しいブログわたくし自身 対応出来るかどうか分かりませんので心配です
              ちょっと拝見して なんだか記事が狭苦しく感じられる印象でした
              わたくし自身もこれから何処かへ移動しなければなりませんが         
              こういう事に疎い身に取っては心配の種です
               いずれにしても長い間 有難う御座いました
              感謝申し上げます
 

 
  


 
 
  
 
 














































 

遺す言葉(548) 小説 <青い館>の女 (37) 他 愚人賢人

2025-05-18 11:33:52 | 小説
              愚人賢人(2025.4.25日作)



 権力的高い地位にある人間
 地位ゆえの自己過信と共に
 権力維持の為 往々にして
 横暴 暴挙に走り勝ち 
 折角 得た地位 名誉 名声 尊敬 等々
 台無し 無にして 結果 批判 非難の下
 人知れず消え去ってゆく
 市井に生きる名も無き人々  
 名も無き故の謙虚さ 日々
 人の眼に触れぬ場所での隠れた善行徳行
 日々 人の眼に触れなくても
 人から人 口から口
 噂は広がり その輪は次第に広がり 大きくなり
 深さを増し 賞賛 賛美の下
 生涯を全うし得る
 無名の賢人
 高位の愚人
 共に真実 その姿




              ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




               <青い館>の女(37)




 
 加奈子はそれでもそれ以降、深夜の帰宅時にはなるべく同僚の女性を誘ってタクシーで一緒に帰って貰う様にしていた。
 そんな時、街路樹の陰に隠れている男の姿が見られたりして、
「あそこだよ、ほらぁ、あそこにいるじゃん」
 加奈子が言うと、同僚も一緒にタクシーを降りてくれて、
「二人で行って、文句を言ってやろうよ」
 と言った。
 男はだが、二人に気付くとすぐに逃げてしまった。
「全くぅ、卑怯な奴ったらありゃしない」
 加奈子は悔しさを吐き出して言った。
 そんな男はわたしがほぼ月に一度の割合で加奈子に会っている事を知っているのだろうか ?
 ある夜、わたしが加奈子の部屋に居る時に電話が鳴った。
 午前一時を過ぎていた。
 加奈子はすぐに男からの電話だと察した。
 わたしの顔を見つめたまま受話器を取ろうとはしなかった。
 わたしはその様子を見て自分で手を延ばし、受話器を取った。
 途端に電話は切れてしまった。
「切れちゃった」
 わたしは加奈子を見詰めて言った。
「あいつからですよぉ」
 加奈子は言った。
「こんな事はよくあるの ?」
 受話器を握ったまま聞いた。
「しょっちゅうですよぉ」
 加奈子は辟易した口調で言った。
「だからぁ、夜中は何時も電源を切って置くんですけどぉ、さっき電話を貰ったままでぇ、切るのを忘れちゃったんですよぉ」
 加奈子は言った。
「電話番号は教えたの ?」
 男が電話番号を知っている事自体が疑問に思えて多少の非難を込めた口調で聞いた。
「教えた事は無いんだけどぉ、わたしがよく通販で買い物するんでぇ、そこでぇ電話番号を盗まれたんじゃないかと思うんですよぉ。品物は取られた事は無いんだけどぉ」
 再び電話が鳴った。
 わたしは即座に受話器を取ると、
「こんな時間に何んの用だ !」
 威喝する様に言った。
 今度は切れなかった。
 相手は答えなかった。
 少しの間、沈黙が続いた。
 その沈黙は一体、何を意味するのか ? 
 突然聞こえた、男の野太い声に戸惑っているのか ?
「変な電話ばっかりしていると警察に訴えるぞ」
 威嚇の口調のままわたしは言った。
 突然の反撃だった。
「訴えるなら訴えろよ。お前が訴えるなら、俺だってみんなバラしてやるよ。なんだ、いい歳しやがって」
 憎しみの籠った声で男は投付ける様に言った。
 若い声だった。
 一瞬、肝を冷やした。
 わたしは男に見られている。
 物陰に隠れていた男の様子からして、それは当然だとしても加奈子の部屋へ来る事まで、男は知っていたのだろうか ?
 もし、知られていたとすれば厄介な事になる。
 支店を開いて間もないこの地での不祥事をわたしは恐れた。
 店に影響の及ぶ事への思いもあったが、加奈子との関係に水を差される事態をもわたしは恐れた。
 男がもし、わたしの身元を察知して世間に言い触らしたりした時には、たちまち好奇心に満ちた世間の人々の眼差しに晒されて、わたしはいい笑い物になるだろう。
「ほら、あの人だよ。ピンクサロンの若い女と出来ている<スーパーマキモト>の会長って言うのは」
 その時、わたしは人々の視線を無視して今まで通りに、平然とこの街に来る事が出来るだろうか
 噂が直ちに店の営業に影響を及ぼす事は無いにしても、店長を始め店員達に対するわたしの権威は間違いなく失墜して、嘲笑と蔑みの眼差しだけが向けられる様になるだろう。
 スケベ親父が威張り腐って何言ってやがんだ !
 東京本社や、わたしの家族に知られる事への危惧はそれ程意識しなかった。
 それより、この北の街でのわたしの立場がどうなるのか、それのみが気懸かりだった。
 既に、この街はわたしに取っては日々、生きてゆくのに必要な場所になっていた。
 唯一、わたしに取っての安息の地と言えるかも知れなかった。
 此処でならわたしは、僅かな果実ながらにも、加奈子という年若い一人の女性の下、日々を生きるのに必要な力を得る事が出来る。
「いい歳をしやがって ? 一体、おまえは何を勘違をしてるんだ」
 わたしは防御の立場に立たされた自分を意識しながらも、その弱味を包み込んで強い口調で言った。
「勘違いだって ? ふざけた事を言うなよ。勘違いなら、なんで若い女の部屋に年中、いい歳をした男が通って来んだよ。おかしいじゃねえかよぉ」
 わたしは息を吞んだ。
 そこまで男は見ている。
「わたしは親戚の者だ。仕事の関係で毎月、こっちへ来てるんだ」
「親戚 ? 親戚の者がわざわざラブホテルへ行ったりなんかすっかよお」
 背筋を恐怖が走り抜けた。
 一体、何処まで男はわたしと加奈子の事を知っているんだ ?
 何んとかしなければ・・・・
 何をすればいいんだ !
 男はわたしが<スーパーマキモト>の会長だと知っているのだろうか ?
 知っているとすれば猶更、厄介な事になる。
 頭の中が混乱で渦巻いた。
 その混乱を抱えたままわたしは強い口調で言った。
「なんでお前は何度も何度もしつっこく電話を掛けて来るんだ。何が欲しいんだ。一度会ってゆっくり話しをしようじゃないか !」
「会う必要なんか無いよぉ」
 男は投げ捨てる様に言うとそのまま電話を切った。
 受話器を置く乱暴な音が聞こえた。
 わたしは取り残され、放り出された様な気分でその音を聞いた。




              ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




                takeziisan様



                有難う御座います
               わたくしもブログの引っ越しそろそろ考えなければと
               思っていますが
               パソコン操作に疎い身で上手く出来るか考えるとついつい先延ばしに
               なってしまいます   
               気の重い事です
                野菜畑 羨ましい光景です
               ネギ どうします ?
               出荷も可能ですね
                ジャガイモの花 懐かしく思い出しながら拝見しました
               それにしても小さな雑草の花々 改めて眼を凝らして見ると
               それぞれがそれぞれに美しい 昭和天皇が雑草という草はない
               と言ったそうですが改めて納得させられます
               もうツユクサの季節 時は確実に移ってゆき
               人は老いてゆく
               先の見えてきた人生に思いは複雑です
               セキチク ? 初めて見ました。
               サトイモ 楽しみですね 
                イノシシ この言葉に自然の豊かさが改めて偲ばれます
               「おしゃんぽ」人生の活性化に繋がります
               頑張って楽しく美しい絵を引き続き見せて下さい
                有難う御座いました
              



























 
  
 
 
 

遺す言葉(547) 小説 <青い館>の女(36) 他 コンクラーベ

2025-05-11 12:22:35 | 小説
                 コンクラーベ (2025.5.8日作)

 

 教皇退位 
 コンクラーベ 
 根(こん)比べ ?
 劇場は今日も開いているのか ?
 華やかな衣装を身に纏い
 豪華絢爛 巨大な建造物内での
 世界を挙げてのお祭り騒ぎ

 神に向き合うのに
 豪華絢爛 巨大な建造物
 華美な衣装など必要なのか
 必要ない
 裸身で向き合う

 神は 自身が自身を律する為に
 自身の心の内に育む存在
 頼るべき存在などでは ない
 
 全智全能の神など 存在しない
 人の生涯 総ては自身が持つ 運命 が
 決める事
 人はただ 今日一日を真摯に生きる
 人に出る事はそれだけ
 
 人の運命
 運命は 閉ざされたものでは無い
 無限の可能性 無限の絶望を秘めている
 努力によって開ける運命
 永遠に開かれない運命
 偶然がもたらす幸運
 偶然がもたらす不運 悲劇
 
 運命の予見など
 誰にも出来ない
 この世に存在し得ない
 神などに出来るはずがない
 神 自身が自身を律する為に心の内に育む存在
 神は 道端の一本の草木にも宿り得る

 豪華絢爛 煌びやかな衣装 寺院 
 飾った名称など
 神は 必要としない
 総ては教会宗教 その飾り物 権威付け 
 虚栄の為の道具に過ぎない 

 教皇退位 コンクラーベ
 劇場は今日も開ているのか ?
 バチカン その内膜  真の姿は ?




    神 宗教 の 名の下に 醜い争い
    戦争は起きても
    神 宗教に 戦争を収める力は無い







             ーーーーーーーーーーーーーーーーー




              <青い館>の女(36)



 

 唯一、わたし達を悩ませていたのが、わたしが最初に加奈子の部屋を訪ねた時に眼にした、あの男だった。
 男はなお、加奈子に付き纏っていた。
 わたしが加奈子を知らなかった頃から続いている事で、仕方がないと言えば言えるかも知れなかったが、それだけで済まされる事でも無かった。
 わたしが二度目に加奈子の部屋を訪ねた時にも男は居た。
 わたしの乗ったタクシーがマンションの前で停まると、慌てた様に四つ角の建物の陰に隠れる男の姿が見られた。
「今日もあの男が居たよ」
 わたしが言うと加奈子も、
「わたしもカーテンの陰から見てたんですよぉ」
 と言った。
 これから行くから、とわたしが電話をした時、
「人目に付くといけないから、タクシーを降りたらすぐにわたしの部屋へ来ちゃってくれますかぁ」
 と加奈子は言った。
 タクシーが止まる音がしたので外を見ると、あの男の姿があったという事だった。
「わたしの部屋に明かりが点いている時には何時もああして、うろうろしてるんですよぉ」
 加奈子は困惑の表情を浮かべて言った。
 わたしはだが、今度は警察という言葉は口にしなかった。
 加奈子との不健全な関係、その意識がこの時にも頭の片隅を過っていた。
 それにしても、一体、加奈子と男との間にはどの様な関係があったのだろう ?
 男がこれ程までに執拗に付け廻す裏には当然、何かの経緯があるはずだった。
 わたしは二人の間の背景に思いを馳せながら聞いた。
「全然知らない男なの ?」
 加奈子は隠す事もなく言った。
「そうじゃなくてぇ、二回か三回、お店に来た事があるんですよぉ。その時にぃ、わたしを指名してくれてぇ、でもぉあのお店は高いからぁお金が続かなくなっちゃったみたいでぇ、それっきりぃ来てないんですよぉ」
「それからずっと、後を付け廻しているの ?」
「そうみたいなんですよぉ」
「男は店で、奥の部屋へ行ったの ?」
 興味に駆られて聞いた。
「行かなかったんですよぉ。何時も一万円だけ使って帰ったんですよぉ」
「奥に部屋がある事は知ってたの 」
知ってましたよぉ。お店に来た人にはみんな説明しますからぁ」
 それで納得した。
 何処か人当たりの柔らかい加奈子に男が魅かれたとしても不思議はなかった。
 それでも、年若い男にはそんな心の内を満たすだけの財力が無かった。
 胸の内に溢れ出る若い欲望と共に、それを満たす事の出来ないもどかしさが、加奈子を高嶺の花として男に仰ぎ見させたとしても不思議は無かった。
「何をしている男なの。学生 ?」
 わたしは聞いた。
「良く知らないんですけどぉ、働いているみたいな事を言ってましたよぉ」
「君はその男が嫌いなの ?」
「若い奴なんて大っ嫌い ! あの人じゃなくても若い奴なんて大っ嫌い」 
 驚く程に激しい感情をむき出しにして加奈子は言った。
 わたしはその口調の激しさに驚いたが、何時だったか加奈子が同じ言葉を口にしていた事を思い出した。
 加奈子と若い男との間に一体、何があったのか ?
 無論、わたしの知り得る事ではなかったが、複雑な状況を想像しながら、
「それで君は、わたしの様な年寄りを相手にしているんだ ?」
 と冗談めかして言った。
 加奈子はその言葉には答えなかった。
 堅い表情のまま口を噤んでいた。 
 わたしはそんな加奈子をなだめる様に、
「兎に角、なるべく男を近付けない様にした方がいいよ」
 と言った。
 男はそれからもなお、加奈子に付き纏っていた。
 夜中の電話、その電話の中での卑猥な言葉による行為の強要、そして付け廻し。
 男が何時、何処から現れるのか予測が出来なかった。
 仕事に出掛ける時間帯の事もあれば、深夜一時過ぎの帰宅時の時もあった。
 隙を見せれば男は何処ででも接近して来た。
 過去に何度か腕を掴まれたり、背後から抱き締められたりした経験があるだけに、細心の注意だけは怠らなかった。
 それでもある時には、深夜の帰宅時にマンションの玄関内で待ち伏せされた事があった。
 加奈子の悲鳴を聞いて男はすぐに逃げて行ったが、以来、マンションの正面玄関の壁には <最近、痴漢が出没します。不審な者を見た人は直ちに管理人に御報告下さい> と書かれた大きな注意書きが張り出された。
 男はそれ以来、建物の中に入って来る事は無くなったが、加奈子は自分が付け廻されている事は管理人にも話さなかった。
「いろいろ聞かれると嫌(や)だからぁ」
 と言った。




               ーーーーーーーーーーーーーーーー




                takeziisan様


                春真っ盛り 良い季節になりました
               それにしても今年は雨が多い様に感じられます
               野に咲く花にとって雨は良いのか悪いのか  
               普段 何気なく眼にしている野の花 草花たち
               改めてこうして見ると実に美しい衣装を纏っています
               そんな美しさ 自然の美に触れる事の出来ない都会生活の味気無さ
               今はしみじみ自然の中でもう一度暮らしてみたいと思っています
               毎回 ブログの記事 羨ましい思いで拝見しています
                モンカラクサ 初めて眼にします
               外来種でしょうか そう言えばこの頃 セイタカアワダチソウの
               噂を聞きません
                半世紀以上前 この地に来た時には辺り一面セイタカアワダチソウの群生でしたが
               今ではどこもかしこも人家の屋根 壁ばかり
               しみじみ時の流れを感じます  
               マツヨイグサ 宵待ち草と呼んでいましたが懐かしい花です            
               紫蘭は旺盛な花でほったらかしの土の中から芽を出し
               庭の片隅にまで花を咲かせています
               防風囲い 一口に農業と言っても農家さんの御苦労が偲ばれます
                方言 良いですね 特に関東以北地方の方言が好きです
               柔らかい響き 寒さの厳しい中 互いに思い遣る心の表れでしょうか
                様々な花の美しさ 眼の慰めです
               有難う御座いました






































































































 
         

遺す言葉(546 )  小説  <青い館>の女 (35) 他 生きる力 

2025-05-04 12:15:32 | 小説
              生きる力(2025.4.12日作)



 何時の時も
 眼の前にあるのは現実
 現実のみ その
 現実に向き合い
 耐え得る力 能力を
 養い 育て 身に着ける
 現実 今この時を正確 確実に把握
 自身の進む道 探り出す
 人が生きる
 最も大切 為すべき事
 失敗を恐れるな
 重ねる失敗 成功の基 礎
 要らぬ助言 進言
 下手な教本 解説本
 頼るな
 それらは総て それを語る者達
 彼等の勝手な解釈 思い込み
 現実 今 眼の前にある事象
 総ては一つ一つ 各々 異なる
 異なる事象 異なる現実
 その前で総ての事柄
 総ての事象 その
 原因 要素を自分で探り 
 自身の進む道 を 探り出す 
 その事こそが 今この時
 眼の前 そこにある現実
 総ての事象に耐え得る力
 解決の源となる




             ーーーーーーーーーーーーーーーーー




              <青い館>の女(35)



 
 その財力でわたしを支配しているという自信が常に彼女にはあって、わたしが何処で何をしようが、結局は自分の手の中から逃げ出す事は出来ないーー。
 わたしのお里を知る彼女は冷静にそう判断していたのだ。
 わたしの女性関係など、彼女に取っては取るに足りないものでしか無かった。
 軽蔑すべき事以外の何物でも無かったのだ。
 彼女に取っては孝臣という牧本家の跡継ぎが出来てしまえば、後はもう、わたしなどは意味の無い存在にしか過ぎなかった。
 嫉妬の対象にも成り得なかった。
 何故なら妻は、石の存在でしか無いのだから。
 妻との二人の朝食は何時もの朝と変わらずに始まった。
 わたしが新聞に眼を落とし、妻はテレビを観ながらハルさんと会話を交わす。
 程なくしてハルさんもテーブルに加わった。
 わたしが眼を落す新聞には、どれも取り立てて興味を惹かれる記事は無かった。
 さっと五紙各紙の見出しを見た後、二、三の記事を拾い読みしてから、何時もの様に死亡記事欄に視線を移した。
 体調を崩して以来のわたしは、その死亡記事が奇妙に眼に付いて興味を引かれるものになっていた。
 各々記されたそれぞれの人達の経歴を見ながら自分の人生を其処に重ねていた。
 格別の付き合いは無くても様々な会合などで出合った人達の死には、自分を取り巻く周囲の空気が揺り動かされる様な感覚を覚えて、愕然とした思いに捉われた。
 自分がこうしてこの欄に掲載されるのは何時の事になるのだろう、などと考えたりしていた。
 明日でもある様にも思えたし、まだまだ遠い未来の事でもある様にも思えた。
 何れにしても、やがてはわたしにもその様な日は確実に訪れるのだ。
 日々、死亡記事欄を眼にする度に死への思いを深めている自分がそこに居た。
 食事が終わると洗面所に向かい、すぐに出社の支度に取り掛かった。
 歯を磨きながら改めて鏡に映った自分の顔に注意を向けた。
 一昨日別れたばかりの加奈子の若さに満ちた存在が、意識の何処かでわたし自身を照射して来た。
 衰えた髪と広くなった額、弛(たる)みを増した頬などに未だ年端もゆかない加奈子との遥かな距離を感じて、その距離をも顧みずなおも加奈子の若さにしがみ付いてゆく自分に浅ましさを覚えて思わず鏡の中の自分から視線を逸らした。
 自分自身の無色透明が望まれた。
 清廉潔白、公明正大、君子のわたし。
 もし、そうであれたらどんなに良い事か !
 だが、それは不可能だった。
 妻へのなんとはない憎しみを抱え、体調不良に怯えながらもなお、失われてゆく歳月に未練を残して無様に過去を手繰り寄せようとしている。
 それがわたしの現実なのだ。
 混沌に沸き返る坩堝でもがいている。
 人は誰もが生きている限り、惨めさからも無様な自分からも逃れられないのではないか ?
 君子のわたしなど、望むべくも無い。
 そう納得して、漸く加奈子との関係を肯定した。
 これからも可能な限りわたしは、加奈子との係わりを続けてゆくだろう。浅ましても、醜くても、愚かでも。
 そうしなければ、自分が生きている事の根拠が失われてしまう様な気がするのだ。
 それにしても何故、加奈子はこれ程までにわたしの心に侵入して来るのだろう ?
 これまでわたしは、直ぐには思い出せない程の数多くの女性達と関わって来た。
 その女性達との間では常に一定の距離が保たれていた。
 わたしが何時も拒絶の姿勢を崩さなかったのだ。
 人生という場に於いてわたしは、それ程深い関係を女性達に求めて来なかった。
 わたしに取っての人格としての女性は、ただ一人、石の女、妻であったに違いないのだ。
 その妻との間にわたしは確執を持っていた。
 あらゆる面でわたしは妻を否定し、踏み越えなければならなかった。
 そんなわたしに取っては、世間の女達は束の間の気晴らし、気を紛らす為の存在以外の何物でも無かった。
 人格としての女性など必要ない。ーー
 その日、会社に出るとわたしは何時もの様に、秘書が整理をし、まとめて置いてくれた各支店からの営業報告書の数字に眼を通した。
 息子は一日中、外出していた。
 多摩地区の物件の立ち上げに本腰を入れ始めた様子だった。
 いずれにしても、詳細はわたしに報告され、決定に向けての相談が持ち掛けられるだろうが、その時には既にわたしの妻の意見をも取り入れて、総てが決定済みに近い条件で固められているのだ。
 わたしが反対しても息子はそれを実行するだろう。


            5


 わたしの支店廻りは依然として、二カ月に一度の割合で継続していた。
 加奈子が居る北の街には、東北地方へ出向いた折には誰にも内緒で、加奈子にだけ電話をする事があったが、関係は依然として変わらなかった。
 海岸ホテルに宿泊したわたしが電話をして加奈子の部屋で会う。
 ホテル代に代わる二万円はその都度、彼女に渡していた。
 管理人やマンションの住人達の視線は殊更、気になる事も無かった。
 無論、それなりに気は使っていた。




               ーーーーーーーーーーーーーーーーーー  




                 takeziisan様    

    

                新天地 順調の様ですね
               まずはおめでとう御座います   
               当方 重い腰はまだ上がりません
               パソコン操作が不慣れなもので なるべく簡単な方をと 
               考えているのですが どうなります事か
                仙丈岳 荒々しい山肌 雰囲気が伝わって来ます
               これでは断念も仕方が無いかと納得            
               山の景色は好きで 旅行した折りなどに眼にした
               山の景色を思い出しながら 何故か懐かしい気持ちで拝見させて戴いております
                人間 目的が無ければ気力も湧かない
               目標を持つ 人が生きる上での最も重要な要素ではないでしょうか
               目的があれば多少の苦労も乗り越えられる
               腑抜けの殻 これでは何も出来ません 
               気を張って生きて行きしょう  
                花道 見事 素晴らしい光景です
               実際現場を見てみたいです
                スズラン 何故か懐かしい 
               クンシランほっぽり放しのわが家でも花盛り 
               棕櫚は田舎のわが家にもありました
               栴檀の木と共にこれも懐かしい木です
               それに柿の木 これも あの秋の彩りと共に郷愁を誘われます
               日本の原風景とも言える様な光景
               いずれにしても都会の屋根を見て暮らす人間には
               過去への郷愁と共に様々な思いが蘇ります
                イノシシ ジビエ 是非 食べてみたい物の一つですが
               都会に居ては無理なのでしょうか
               以前 旅行先でシカの肉の刺身を食べた事がありますが
               癖が無くて美味しかった記憶が残っています
               本来 癖が無いのか 上手に調理した結果なのかは分かりませんが
               イノシシ クマ 食べてみたいと思っています
               野生動物被害の叫ばれる中で 何故もつと
               ジビエを活用しないのかと不思議に思っているところです 
                今回も楽しく拝見させて戴きました
               有難う御座いました