goo blog サービス終了のお知らせ 

遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(540)小説 <青い館>の女(29) 他 少女の涙

2025-03-23 11:32:14 | 小説
             少女の涙(2025.3.21日作)



 テレビがロシアのウクライナ侵攻に関する
 映像を映していた
 兵士としてロシア国内から戦場に赴いた
 幼い二人の娘を持つ一人の若い父親が 
 戦死した
 父親の亡き骸は祖国へ還り
 国の為 戦い 尊い命を犠牲にした 英雄
 として称賛 褒賞された
 父親の遺影は 埋葬された墓地
 少女(姉)の通う学校 で
 国の為に戦い 尊い命を落とした 
 英雄として飾られ 崇拝された
 まだ幼い少女は 英雄として祀られ
 多くの人々 同級生などから
 称賛の眼差しで見られる
 父の遺影を眼にする度に
 嬉しくなり 誇らしい気持ちになった
 少女には祖母が健在だった
 祖母もまた 英雄として 称賛され
 崇拝される息子の姿が誇らしく
 思えた
 誇らしさ 誇らしい気持ち それでいながら
 心の奥の底 何処かには やはり 最早
 この世には居ない息子の存在 その淋しさが
 拭い難く 消し難く 残っていた
 テレビの前 祖母は
 英雄として称賛され 崇拝される
 息子を語る時 誇らし気な表情
 その裏に 時折り
 滲み出る淋しさ その表情 哀しみを
 垣間見せた
 両の眼には涙があった
 祖母の傍ら 横には 肩を抱かれて
 少女の姿もあった
 少女もまた 始め 祖母の息子を思う
 誇らし気な話しを聞いていて それが
 自分の父である事に 得意な気持ちを覚えた
 それでも 祖母が涙を浮かべ 
 再び帰る事のない 父の話しになった時
 少女は祖母と同じく 涙を浮かべていた
 二度と 自分の元へ帰る事のない父
 少女はこの時 明らかに 国の為
 英雄として死んで逝った父を 誇りに思う
 その気持ちより 二度と再び 
 自分の傍へ帰る事のない父を思って
 哀しみの涙に暮れていた
 幼い少女のこの哀しみ
 永遠に消える事のない 哀しみ
 再び 自分を抱き締め 
 頬ずりをして呉れる事のない父
 ロシア大統領 プーチンと言う 一人の愚か者
 この愚か者が齎した少女の哀しみ
 その哀しみの
 永遠に消える事は
 無い !




              ーーーーーーーーーーーーーーーーーー




               <青い館>の女(29)




 
 加奈子はだが、気の進まない様子だった。
「でもぉ、部屋が狭いしぃ」
 重い口調で言った。
「狭くたっていいさ。兎に角、これから行ってみるよ。それで、その男を見てみよう」
 わたしは押し付ける様に言った。
「でもぉ・・・、いいですからぁ、約束は無かった事にしてくれますかぁ」
 困惑を織り交ぜた口調で加奈子は言った。
 自身の生活の場に一介の客でしかない見知らぬ男を招き入れる事を嫌ったのかも知れなかった。
 わたしの執着心はそれでもなお解けなかった。
 何故なのかはわたし自身にも分からなかったが、日頃のわたしには思いも及ばない執拗さだった。
 五カ月近くも離れていた若さに満ちた加奈子の肉体への執着心からだったのか ?
 或いは、唯一、わたしが生きている事への実感を得られる思いへの拘りだったのか ?
「それじゃあ、その男が付き纏ってる限り会えないじゃないか」
 わたしは批難がましく言っていた。
 わたし自身、何時の昔に失われてしまったのか、今では思い出す事も出来ない一途な情熱と感情の昂ぶりが自分でも不思議だった。
 加奈子はそんなわたしの言葉に何かを言ったが、わたしの耳には届かなかった。
 わたしは更に、加奈子を無視して言った。
「もし、迷惑でなかったら、これから迎えに行くよ」
「別にぃ迷惑って事はないですけどぉ」
 加奈子はやはり気が進まない様子だった。
 わたしはそれでも諦めなかった。 
「大丈夫だよ。君には悪い様にはしないから。もし、男が絡んで来て何か言ったら警察に突き出してやればいい」
 恋に一途な若者の様にわたしの言葉には熱意が籠っていた。
「でもぉ、その人の事はぁそっとしておいて貰いたいんですよぉ」
 加奈子は幾分、迷惑そうな気の進まない様子で言った。
「なんで ?」
 わたしは疑問に思って聞いた。
「厄介な事には係わりたくないからぁ」
 加奈子は言った。
「それならそれでいいけど、兎に角、君の住所を教えて呉れないか。君には一切関係ない様にして行ってみるから。わたしも君との事は誰にも知られたくないんで、悪い様にはしないよ。それに君だって今日は店を休んで、もし、わたしが行かなかったら十万円は入らないし、店の日当も貰えなくて一日が無駄になっちゃうじゃないか」
 わたしが口にした十万円という言葉に加奈子は改めて心を動かされた様子だった。
 ぼそぼそとした口調で、マンショんの名前と住所を教えて呉れた。
「もしぃ、管理人さんに何か聞かれたらぁ、わたしのおじさんだって言ってくれますかぁ。そうすると都合がいいのでぇ」 
 加奈子は言った。
「うん、分かった」
 わたしは受話器を置くと電話ボックスを出た。
 タクシーを探しながら大通りを海岸ホテルの方角へ向かって歩いた。
 加奈子が教えてくれた建物が何処にあるのかは分からなかった。
 それでも、何時来るのかも分からないタクシーを待ってじっとしている気にはなれなかった。
 タクシーは十分ぐらい歩いて漸く捕まえた。
 建物の住所と名前を言うと五十歳絡みの運転手はすぐに分かった。
 加奈子が住む町に入ると程なくしてタクシーは街灯の灯りの乏しい通りに乗り入れた。
 こじんまりとした瀟洒な感じの三階建て三十戸前後の建物の前でタクシーは停まった。
 その時、建物に向き合った大きな駐車場に沿って並んだ街路樹の陰から不意に一人の男が飛び出して、タクシーが来た方角へ向かって慌てた様子で走り去って行った。
 加奈子が言っていた男に違いないとすぐに判断出来た。
 タクシー代を払い、車を降りた時には男の姿は見えなかった。
 わたしはそれでも男が何処かに隠れて居はしないかと警戒し、辺りを見廻し、確認してから眼の前にある建物に向った。
 加奈子は三階、正面入口の左外側から二番目の部屋が自分の部屋だと言った。
 その部屋に明かりは無かった。
 用心して明かりを消しているに違いなかった。
 片側一車線の二車線道路を渡り、建物の玄関先に立った。
 大きなガラスのドアの金色のドアノブに手を掛けて開けた。
 玄関に人影は無かった。
 入口左側に管理人室と書かれた黒いドアがあるのがすぐ眼に入ったが、窓口からは人影が見えなかった。
 建物全体が奇妙に静まり返っていた。
 怪しまれる事を恐れて窓口に近寄り中を覗いた。
 小さな部屋には窓口近くに椅子が置かれていたが人影は無かった。
 そのままその場を離れ、正面に見えるエレベーターのある場所へ向かった。
 その時不意に、エレベーターの横合い、左廊下の陰から加奈子が姿を現わした。
 思わずギョッとしたわたしに向って加奈子は、
「吃驚しましたぁ」
 と、屈託のない笑顔で言った。
「驚いたぁ」
 わたしは息を吐き出す様にして軽く言った。
 加奈子はそれには答えず、
「すぐに分かりましたぁ」
 と聞いた。
「うん、タクシーで来たからすぐに分かった」
 わたしは機嫌よく言った。
 玄関正面に掛かった丸時計が十一時七、八分の辺りを指していた。




               ーーーーーーーーーーーーーーー




                 桂蓮様


                 お久し振りです
                記事 拝見しました
                理想と現実 何事に於いてもそうですね
                まして 自身に関する事は自身の思っている姿と
                他者の視点から見る姿とは全く異なります
                他者の眼を気にして自分を失うのも困りますが
                自分を主張するばかりで他者の視点を考慮に入れないのも
                また困りものです
                総て程々 と言う事でしょうか
                それにしても あらゆる事柄に於いて感覚で掴み取り 理解する
                これが大切な事ではないのでしょうか
                この事に関しては文章にも纒てあり 後日
                掲載する予定でいます
                 感覚で掴み取り 理解してこそ 本当の理解と言えると思います
                それまでの努力 是非 頑張って下さい
                写真撮影 良きパートナーの方に恵まれお幸せです
                日本の男性なら多分 フーンと言って 面白半分の軽い眼差しで
                見るぐらいでしょうね
                いずれにしても それに打ち込めるものの有るという事は
                人生を豊かにしてくれますものね
                実は 今日(3月23日)NHKで午後九時からバレーの放送があります
                楽しみにしているところです
                 バレーでの充実した日々の中 ブログがおろそかになるのも
                仕方のない事かも知れません 
                 またの御報告 楽しみにしております
                有難う御座いました
                          

































コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。