BOX 袴田事件 命とは
2010年/日本
思い込みの恐ろしさ
総合 60点
ストーリー 0点
キャスト 0点
演出 0点
ビジュアル 0点
音楽 0点
渋谷の映画館で上映されていたことは間違いなかった。上映前に‘ボックス’というアナウンスも確認した。しかし上映が始まって「かごめかごめ」というわらべ歌が流れてきた頃には私は自分が観ている作品が私が本来観るつもりでいた爽やかな青春映画である李闘士男監督の『ボックス!』ではないことを悟っていた。何故こんなミスをしてしまったのか自分でもよく分からないが、既に入場料を払ってしまっている上に、‘ボックス’間違いをしてしまったから返金してくれと言おうものなら笑われることは確実なのだから、最後まで観た次第であり、その時初めてキャメロン・ディアス主演映画の原題である‘The Box’を『運命のボタン』にした理由が分かった。
主役を演じている俳優の名前がそれぞれ市原隼人と萩原聖人で、‘原’や‘人’まで同じであるのか、‘原’や‘人’しか同じではないのかということは似て非なるものである。何故ならばそのような瑣末な違いでもって袴田巖は死刑囚という汚名を着せられているのだから。
このような作品を通して事件の真相を世の中に問うことは大切なことではあるが、映画作品としては決して良質であるとは言い難い。袴田が被害者宅を襲うシーンで、夜中であるにもかかわらず次女と長男が寝間着ではなくて学生服を着ていることは、強要された自白によって警察官が作成した調書を元に作られたシーンという言い訳ができても、袴田が油を撒く時に母親役の雛形あきこの瞼が動いてしまっていることも、熊本典道が教えていた学校を辞めると生徒に告げる時に、それまで授業をしていたはずの背後の黒板がまっさらだったことも演出が甘いという謗りを免れない。
なによりもこの作品で私が知りたかったことは、袴田巖がボクシングをしていた動機である。それはただたんに自身の鍛錬のためだったのか、あるいは社会に対する何らかの思いがあったのか? 残念ながらその点に関しては何も言及されていないために、ラストで袴田と熊本が拳を交えるシーンの意味が不鮮明なのである。
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