原題:『Cloud クラウド』
監督:黒沢清
脚本:黒沢清
撮影:佐々木靖之
出演:菅田将暉/奥平大兼/古川琴音/吉岡睦雄/山田真歩/矢柴俊博/森下能幸/岡山天音/荒川良々/窪田正孝/松重豊
2024年/日本
「バカ者たち」の乱射撃について
『ラストマイル』(塚原あゆ子監督 2024年)が物流の問題を扱っていたのに対して、本作は転売の問題を扱っている。テーマの目のつけどころまでは良いとしても、やはりどうしても脚本が悪いのではないかと思ってしまう。例えば、主人公の吉井良介の引っ越し先の群馬の住宅兼仕事場まで滝本と三宅が襲撃しに来るのだが、吉井を追い詰めた時に壊れかけのコーヒーメーカーが破裂音を出し、何かと思って音がした方へ滝本と三宅が二人とも行ってしまうから吉井にまんまと逃げられるのである。常識で考えるならばどちらかが吉井を見張っているはずなのである。あるいはさらに村岡などが加わり、いよいよ吉井が人里離れた小屋に追い詰められるのだが、たまたま通りかかった猟師に向かって滝本がライフルで射殺し、その遺体を全員で始末し出すためにまたまた吉井に逃げられるのである。常識で考えるならば最低一人くらいは小屋を見張っているはずなのである。
結局吉井に恨みを持つ者たちはいとも簡単に騙されてしまう馬鹿者たちのようにしか見えないのである。最後は吉井と吉井を助けに来た佐野が全員を射殺して勝ってしまい、つまり騙された方が悪いのだというメッセージを発してしまっているのだが、それでいいのか? いいのならば仕方がないのだが。