原題：『影裏』
監督：大友啓史
脚本：澤井香織
撮影：芦澤明子
出演：綾野剛/松田龍平/筒井真理子/中村倫也/國村準/永島瑛子/安田顕
２０２０年/日本
秘密の均衡の危うさについて
当初は主人公が転勤で関東から岩手県に赴任してきた直後に東日本大震災に被災した今野秋一だと思っていた。いつも人を避けるような生き方をしていた今野が同性愛者だと分かるのは職場で唯一付き合いがあった日浅典博が泊まって寝ていた時に我慢ができずに抱こうとするのだが、日浅にはね返されてしまい未遂に終わる。しかし翌朝、日浅はベランダでタバコを吸っており、まるで何事もなかったかのように今野に接するのだが、ここから実は問題があるのは日浅の方ではないのかという疑問が湧いてくる。
実際に、職場を辞めて新たに営業の仕事に就いて再び現れた日浅は仕事のノルマを達成するために今野に契約を頼みにくるのだが、再び行方不明になって今野が日浅の父親の征吾や兄の馨を訪ねると、日浅の経歴は嘘まみれだったのである。
今野が同性愛者であるという秘密と日浅の経歴の秘密の均衡の危うさとは、日浅の秘密に比べれば今野の秘密は大したことはないという風には必ずしもならないところにある。
