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『オテサーネク -妄想の子供-』 100点

2012-01-18 00:16:48 | goo映画レビュー

オテサーネク -妄想の子供-

2000年/チェコ

ネタバレ

夫婦というメタファー

総合★★★★★ 100

ストーリー ☆☆☆☆☆0点

キャスト ☆☆☆☆☆0点

演出 ☆☆☆☆☆0点

ビジュアル ☆☆☆☆☆0点

音楽 ☆☆☆☆☆0点

 最新作である『サヴァイヴィング・ライフ ‐夢は第二の人生‐』(2010年)を観ても分かるように、ヤン・シュヴァンクマイエル監督は執着心に‘執着’している。本作においても主人公のホラーク夫妻は共に不妊症で子供が出来ないのであるが、夫が冗談半分で子供のように見える木の切り株を妻に見せたところ妻は本気にしてオテークと名付けた辺りから、木の切り株に命が宿り、飲食を求め出し、夫妻は後へ引けなくなる。ホラーク夫妻の子供に対する執着と同様に、やがて郵便配達人や保健所職員までも食べてしまうオテークの食に対する執着も常軌を逸しているのであるが、その陰で少女の下着に執着している老人や、最後に盗み食いをしたオテークを鍬で殺すに至るほどに、畑のキャベツに執着しているアパートの管理人も作品に更なる不気味さを加えている。
 そんな中で周囲の大人たちの行動を冷静に観察している人物がホラーク夫妻の隣人の娘であるアルジュビェトカである。彼女は「オテサーネク」というチェコの民話の顛末が分かっていることもあり、冷静な対応をとることが出来る。ホラーク夫妻がただオテークに請われて食べ物を運んだり、後始末をするだけであるのに対して、アルジュビェトカは地下室に閉じ込められたオテークを厳しくしつけるのであるが、悲しいことにまだ少女であるアルジュビェトカの出来ることには限度があり、オテークを最後まで守ることが出来ない。
 よくよく考えてみるならば、ヤン・シュヴァンクマイエル監督も妻のエヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーと共にシュルレアルな映像表現に執着しているのであるが、アルジュビェトカが持つ冷静な視点も取り込んだ本作は、とても洗練された「ウルトラQ」として楽しむことが出来る。


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