原題:『決戦は日曜日』
監督:坂下雄一郎
脚本:坂下雄一郎
撮影:月永雄太
出演:窪田正孝/宮沢りえ/赤楚衛二/内田慈/小市慢太郎/音尾琢真/前野朋哉
2022年/日本
飲み慣れたコーヒーの「味わい」について
主人公の川島有美を演じる宮沢りえの意図したものなのか天然なのかよく分からない演技が瞳孔全開の狂気に満ち溢れ、それが今の与野党問わない女性国会議員の性格とリンクしているところが恐ろしい。ハンディカメラの多用による画面の揺れが臨場感をもたらしていると思う。
当初は父親の川島昌平の地盤を守るために、つまり自分が失職しないように無我夢中で選挙運動をこなしていた秘書の谷村勉がいつものようにいつも使っているコーヒーメーカーで入れたコーヒーを飲んでおり、そこにボランティアの2人の青年が同じコーヒーを飲むと「不味い」と言い出す。驚くべきことに谷村は自分が飲んでいるコーヒーが飲み慣れているが故に「古くなったコーヒーメーカー」に「カビ」や「澱み」がこびりついて不味くなっていることに気が付かず、感性がバカになっているのである。
ところがいざ谷村が傀儡を潔しとしない有美と示し合わせて自分たちに不利になるような情報を流しても、ことごとく良いように解釈されてしまうところもアイロニーが効いている。
ラストで当選してしまった有美が谷村に文句を言っている最中に、支援者たちが事務所に戻ってこようとしている場面は、実は当選後が有美たちの「戦い」であるという暗示が効いていて、決して与党の民自党を皮肉るだけになっていないところが好感が持てる。
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