原題:『四畳半襖の裏張り しのび肌』
監督:神代辰巳
脚本:中島丈博
撮影:姫田真佐久
出演:宮下順子/江角英明/丘奈保美/絵沢萠子/芹明香/吉野あい
1974年/日本
「お金」よりも「子作り」が重要な時代について
もしも本作が『四畳半襖の裏張り』(1973年)の続編であるならば、テーマはどのように変化したのだろうか? 主人公の花清は旦那の横井と染八の間に子供が出来て本妻になり損なった腹いせに赤ん坊の正太郎を盗んだ直後に大正12年(1923年)9月1日の関東大震災が起こり、何故か自分の子供として育てることになる。
しかし花清が営んでいた芸者置屋の芸者たちに早熟の正太郎が次々と手を出すことに困り果てた花清は子供のいない映写技師の小宮山と妻の美也子に正太郎を預けた。上映されている映画は『土と兵隊』(田坂具隆監督)や『土』(内田吐夢監督)だから1939年の話であり、正太郎は16歳である。
ところが正太郎はまず美也子ではなく小宮山に手を出すという荒業を披露し、ついには3Pとなり、「種無し」だった小宮山は美也子が妊娠したことを寧ろ喜ぶような有様で、ついには育ての母親である花清にも手を出す。
産みの母親である染八の反対も聞かず太鼓持ちになりたいという正太郎は普段から女性と性交に至るまでの奇妙な猥唄を練習しており、正太郎の子供を身ごもった女性たちに送られて正太郎は太鼓持ちとして満州へ向かうことになる。小ふくがラストで「男と女にゃ、あれしきゃないよ。万歳」と叫ぶ通り、もちろん正太郎の役割は種付けであろう。
前作『四畳半襖の裏張り』では太鼓持ちは旦那に首つり自殺させられそうになっていたが、本作においては逆に「富国強兵」の大黒柱として縦横無尽の活躍である。第二次世界大戦を前に資本はお金から人材に変わったのである。