Dr.パルナサスの鏡
2009年/イギリス=カナダ
‘神’と‘悪魔’の終わりなきゲーム
総合
100点
ストーリー
0点
キャスト
0点
演出
0点
ビジュアル
0点
音楽
0点
これほど難解なファンタジー映画も珍しい。間違いなく主演のヒース・レジャーの急逝が原因だと思う。私の解釈を書いておきたが、ここで丁寧に筋を辿って書いてみても却って煩雑になるであろうから、物語の‘構造’を捉えてみたい。
Dr.パルナサスは人々の夢やイマジネーションを信じており、それを具体的な形にして見せる‘イマジナリウム’を運営している‘神’として描かれている。それに対してMr.ニックは‘悪魔’として人々の心の中に密かに宿っている欲望を同時に見せることで人々がどちらに傾くか楽しんでいる。例えばある女性は鏡の中の彼女の想像力による世界でMr.ニックが作り出したモーテルに行こうとする寸前でトニーに促されてパルナサスのゴンドラに乗る。あるいはトニーがギャングたちに追われて鏡の中に飛び込んだ後、最初はトニーの想像力による世界が広がり、彼はギャングたちから逃れるために空に繋がっている梯子を登るのだが、途中でMr.ニックに邪魔されて梯子が壊されて落下してしまう。しかし今度はギャングたちの想像力による世界が展開して、実は彼らが手に入れたいと思っている権力の象徴である警察官たちが現れるが、同時にMr.ニックによって実は自分たちの臆病さを擁護してくれる母親の象徴であるバブーシュカも現れてギャングたちは4人ともバブーシュカのスカートの中に飛び込んで爆発してしまう。
女性4人の魂はDr.パルナサスに靡いたが、4人のギャングたちの魂はMr.ニックの手中に落ちて2人の賭けはイーブンになる。
しかしここで予想外の出来事が起こる。父親とMr.ニックの賭けのことを知らされたDr.パルナサスの娘のヴァレンティナが父親の不死を願い、Mr.ニックの鏡に飛び込んだのである。これでMr.ニックが賭けに勝つことになったのだが、それは彼の本意ではなかった。Mr.ニックはヴァレンティナのように‘夢’と‘欲望’が一致することを想定していなかったために不本意ながら賭けはそこで終わってしまう。
この作品で一番理解できない人物は主人公のトニー・シェパードの存在であり、それがこの作品を難解なものにしてしまっているのだが、トニーのキャラクターをヴァレンティナのキャラクターと正反対のものと考えるならば分かりやすくなると思う。トニーが記憶喪失という設定にしている理由はトニーには実は‘夢’も‘欲望’も無いままにただ周囲にいる人たちの期待に応えるだけの‘お調子者’なのであるが、結局トニーには確固とした‘本心’がないためにヴァレンティナの求愛にたじろぎ、せっかく子供たちのためのチャリティーパーティーを催しても、新聞などで詐欺師と名指しされてしまうとひるんでしまい、肯定も否定もできないままトニーの想像力による世界は崩壊してしまう。
Dr.パルナサスは人々が欲望に負けてしまうことに歯がゆい思いをしていたが、それ以上に許せないことは‘夢’も‘欲望’も抱けないトニーのような人物だったため、Dr.パルナサスはトニー自身に偽物のフルートを選択させることで直接手を下さないようにして殺すのである。
その後にDr.パルナサスは砂漠をさまよい、二手に分かれる道しるべを見つけるのであるが、俯瞰から映されたその道は両方ともに途切れていた。彼には行く場所がなかったのである。
この結果、‘夢’と‘欲望’を超越したヴァレンティナはアントンの本物の愛を受け入れて結婚して娘ができる。彼らを遠くから見ながらDr.パルナサスはMr.ニックとの賭けが再びイーブンとなったために、2人の‘ゲーム’は続くことになる。
余りにも物語の奥が深すぎて自分がここに書いていることが正しいのかどうか正直自信がない。観れば観るほど新しい発見がある作品だと思う。
ちなみにトニーが新聞を信じるなと言った後に、「‘ミラー’もな!」という‘ミラー’はイギリスの日刊タブロイド紙の‘デイリー・ミラー(The Daily Mirror)’のことだと思う。
朝青龍クビ 現役続行望むもしぶしぶ引退(日刊スポーツ) - goo ニュース
今朝の毎日新聞の記事にウランバートル市の女性会社員、マンドハイさん(27)の
インタビューが掲載されている。「モンゴルの男性は普段はおとなしいけど酒を飲む
と暴れたりする。日本人は朝青龍のマナーが悪いと思うでしょうけれどモンゴルでは
酔って殴ることはよくあるし、次の日には仲直りしている。モンゴル人の感覚から
言うと、引退するほどの問題ではないと思う」そうである。私は普段お酒は飲まない
のでさらに不可解ではあるけれど、どのように考えても私の場合に関して言えば、
顔面骨折させられて、次の日にその相手と仲直りできそうにはない。文化の上に
酒まで絡んでくる事件に関しては私には何がなんだか分からなくなる。