「おちゃっぴい」宇江佐真理
宇江佐真理さんの初期短編集。
デビュー当時から、既にレベルが高いのが分かる。
P27
「能の場合、主役をシテと言いますが、能面をつけるのはシテだけです。で、このシテに因縁を訊ねたりして、見ている客を物語の世界に誘う役をワキと呼びます。ワキは文字通り脇役のことです。シテというのは大抵、この世に未練を残して死んだ霊である場合が多いのです」
(中略)
「例えば『東北』というのは旅の僧が東北院の梅に見惚れておりますと、里の女が現れて、その梅は和泉式部という名の梅だと告げるのです。僧はその梅に読経を唱えると和泉式部がありし日の姿で僧の前に現れるのです」
【ネット上の紹介】
札差し・駿河屋の娘お吉は十六、蔵前小町。鉄火伝法が玉に瑕。人呼んでおちゃぴい。浅草寺に向かって、お吉は走る。追うのは、手代の惣吉…。婀娜や鯔背は江戸の華。やせ我慢も粋のうち。惚れたが悪いか恋の顛末。笑いと涙の人情譚六話収録。