

「歓喜の仔」(上・下)天童荒太
天童荒太さんというと、「永遠の仔」を思い出す。
今回のタイトルは似ているけど、どうなんだろう?
結果から言うと、登場人物等に関連はない。
3人の子供達が描かれるのが同じ。
さらにその両親の人生も詳細に描かれ、
過去と現在が交錯しながら物語が展開する。
母親の夢の世界、長男の空想する戦場世界も描かれ、より複雑な群像劇となっている。
子供達の父親が多額の借金を負い、姿を消す。
借金取りの追い込みにより、母親は発作的に窓から飛び降り植物人間となる。
子供達の日常は一変する。
音楽好きの長男は高校を中退し、音感も失い、借金を返す為、早朝から野菜市場で働き、その後、中華料理屋、深夜は覚醒剤のアジツケで、犯罪にも手を染める。
絵が好きな小学年6年生の次男は、事件後色彩感覚を失い、母親の世話をしながら、クラスから「くさい」といじめにあう。
幼稚園にかよう長女は、見えないものが見える。
この幼稚園が特殊で、世界の縮図のような様々な人種の子供達がかよっている。
ストーリーと心理描写のほどよいマッチングで、重く濃い物語が展開する。
「ミステリだけど、謎解き部分は少ない」と思って読んでいたら、最後にあっと驚かされる。
下巻の最後1/3は、怒濤の展開。
巧妙な伏線。
「えっ、そうだったのか」と驚く。
【重要な台詞】
ここからネタバレなので、未読の方読まないように。
重要な台詞が2つある。
奇しくも、同じ内容の台詞だ。
P91(下巻)カデナの台詞
おかあさんに、はなしてきて。おこってないよ、って。わたし、おこってないよー。
P286(下巻)父の台詞
「おこってない。正二、おれはおこってないよ」
【参考作品】





【蛇足】
「永遠の仔」と「歓喜の仔」・・・どちらがおもしろいか?
意見が分かれるでしょうが、私は「永遠の仔」の方がおもしろく感じた。
石鎚山が重要な舞台だから?
【ネット上の紹介】
愛も夢も奪われた。残されたものは、生きのびる意志だけだった。『永遠の仔』『悼む人』を経て、天童文学はここまで進化を遂げた。日本の現実を抉り、混迷する世界と繋がり、私たちの魂を源から震憾させる金字塔、ここに。