
「小田嶋隆のコラム道」小田嶋隆
小田嶋隆さん、コラムの書き方入門。
いくつか文章を紹介する。
P75
モチベーションを、有限の資源みたいに思うのは、間違いだ。
モチベーションは瓶の中の液体ではない。
使ったらその分だけ減るというようなものではない。
むしろ、定期的に搾乳しないと生産をやめてしまう牛の乳や、くみ出し続けないと枯れてしまう井戸みたいなものだ。
P145
『源氏物語』の日本語が主語を省略している理由について、私が通っていた予備校の講師は、「要するに悪文なのです」と断言していた。卓見だと思う。が、別の理由もあったはずだ。どういうことなのかというと、おそらく、紫式部の時代の日本人は、主語を明示することを「はばかって」いたということだ。(中略)
省略だらけの文脈から主語を類推し、関係を把握し、空気を読み、余白を想像力で埋めることで書き手の意図を読みとる能力が、すなわち国語の読解力であるとする思想が、われわれのうちには古来から連綿と伝えられていて、そういう言語感覚を信奉している古い日本人は、なんであれ、あからさまに表現することを、一貫して軽蔑してきたのである。つまり、原始の日本語は裸足だったということだ。
【ネット上の紹介】
数々の名コラムを生みだしてきた著者による、笑えて深遠、奇跡のコラム論。書き出し、オチ、文体と主語、裏を見る眼…天才コラムニストによる「超絶!文章術」。内田樹氏との夢の対談、収録。
[目次]
コラム道に至る隘路;コラムとは何か;コラムと枠組み;会話はコラムの逃げ道か;モチベーションこそ才能なり;書き出しについてのあれこれ;結末、結語、落ち、余韻、着地;コラムにメモはいらない?;文体と主語;推敲について;すべては要約からはじまる;裏を見る眼;長さとコラム;特別対談 小田嶋隆×内田樹