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【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「西の善き魔女」荻原規子

2019年10月09日 08時24分17秒 | 読書(小説/日本)
「西の善き魔女」荻原規子

読み返し3回目。
久しぶりの読み返しで、細部を忘れていた。
「そうだった」と思いながら読み返した。

本書は4回出版されている。
①中央公論社、C・novels fantasia
 本伝5冊+外伝2冊
②中央公論新社のハードカバー版
 本伝3冊+外伝1冊・・・4巻目に書き下ろし外伝「真昼の星迷走」収録。
 イラストが佐竹美保さんで、私が所持しているのはこの版である。
③中公文庫
 本シリーズ初の文庫版、全8巻・・・現在は一部入手困難かも。
 佐竹美保さんが表紙を新たに描かれているのが魅力。
④角川文庫
 現在、入手しようとするならこの版になる。全8巻。
 特に、特別短篇が3篇収録されている。
 何といっても、それが角川文庫版の魅力。
 3巻目「ハイラグリオン王宮のウサギたち」・・・ユーシスとレアンドラの出会い
 4巻目「ガーラント初見参」・・・12歳のユーシス
 7巻目「彼女のユニコーン、彼女の猫」・・・ユーシスとアデイルのその後
特別短篇で一番面白かったのは、「彼女のユニコーン、彼女の猫」。
レアンドラからユーシスとアデイルに招待状が届く。
そこで、ユーシスとアデイルは、クリスバード男爵、ヴィンセント嬢、マリエを伴ってアッシャートンにあるチェバイアット家を訪問する。

P334
「アデイル姫は、いちだんと美しくなられたな。しばらく離れているあいだに、何かあったのかな。そして、姫のご友人はいつのときもレベルが高い。名前を何といったっけ。そうそう、たしか、ヴィンセント嬢・・・・・・」
 ユーシスは一蹴した。
「彼女は、フィリエルと同じくらい不可侵だよ。今にわかる」
「おいおい、つれないな。情報をくれよ」

P369
「わたくし、馬の乗り手がお兄様でなければ、けっしてこんなことをしようと思わない。だからお兄様も、わたくしでなければユニコーンを取りもどせないと、そう信じてくださらなくては。わたくしたち二人にしか、これはできないことなの。あなたを信じているの、何があろうとも」

【おまけ】
本シリーズは、のちのRDGシリーズに通じるものがある。
芯の部分、コンセプトが似ている。舞台はまったく異なるけど。
ヒロインはフィリエルだけど、どちらかと言うと、RDGの泉水子には、アデイルの面影を感じる。「西の善き魔女」でも、性格が複雑で心理的な葛藤が一番あるのがアデイルなので、外伝「銀の鳥プラチナの鳥」が好み。ティガも登場し、ルーンの過去も明らかになってくる展開もすばらしい。

【おまけ】
今後、もし外伝が出るとしたら、アデイルが登場して欲しい。
また、フィリエルとマリエの出会いも読んでみたい。
フィリエルが塔から出て学校に通っていた日々はどうだったんだろう?

【ネット上の紹介】
15歳になったフィリエルは、はじめての舞踏会の日、燦然と輝くダイヤと青い石の首飾りを贈られ、幼なじみの少年ルーンに、それがフィリエルの母の形見であると告げられる。青い石は女王試金石と呼ばれ、王国でもっとも大切な宝石であることが明かされていく。それは自らの出生の秘密とつながっていた―。人里離れた北の高地で育った少女の運命が、大きく動きはじめる。人気ファンタジー作家、荻原規子の新世界の幕が上がる!

「喪の女王」〈全8巻〉須賀しのぶ

2019年09月24日 21時09分22秒 | 読書(小説/日本)
「喪の女王」〈全8巻〉須賀しのぶ

外伝と番外編を抜かして、本伝のみを再読している。
いよいよ『流血女神伝』シリーズ最終章、「喪の女王」を読んだ。
これにて本伝、再読終了。(次回再読はいつになるだろう?)
今回もネタバレありなので、ご注意!

3巻目P173
「わたしは順応性あるもん。だって、王子と奴隷と小姓と海賊と総督もやったもんね。修道女ぐらいできるよ。だって、べつに戦ったり、誰かを欺いたりする必要がないもの」(今回は、修道女だ!これだけ色んな役になるヒロインは珍しいぞ)

5巻目P171
ロイは親指と人差し指で、金貨の形を作った。
(日本では、これでお金を意味するが、西洋でこれをやるとエッチな意味になると聞いたことがある・・・実際どうなんだろう?)

【蛇足】
4巻目P218
(誤)しか彼女が行った
 ↓
(正)しかし彼女が行った

【おまけ】
この物語にはモデルがあると、皆さんお気づきと思う。
バンディーカ=エカテリーナ
ガンダルク=サンクトペテルブルク
ルトヴィア=ローマ帝国
エティカヤ=オスマン・トルコ
他に気づいた方がいたら教えて。

【ネット上の紹介】
大祭のザカールを襲った大地震により、囚われの身からからくも逃れたカリエは、その身を挺して助けてくれたエディアルドとともに新しい旅を始めていた。胎内には、千人目のクナムとなるであろうリウジールの子を宿し、癒しきれぬ心の傷を負って…。しかし二人の逃避行を容認できない王バルアンは、執拗なまでにその行方をさぐろうとしていく。流血女神伝シリーズ・最終章スタート。

「暗き神の鎖」〈前・中・後〉須賀しのぶ

2019年09月24日 08時42分36秒 | 読書(小説/日本)
「暗き神の鎖」〈前・中・後〉須賀しのぶ

外伝「女神の花嫁〈前・中・後〉を飛ばして、『流血女神伝』シリーズ、第三章にあたる「暗き神の鎖」を読んだ。
今回もネタバレありなので、ご注意!

P205
「マヤラータはさ、いろんな名前をもってますよね。もちろんぜんぶ同じ人なんだけど、役どころは全部ちがう」
(この作品は、ストーリー中心で、どちらかというとキャラクターは類型化されている。それでも、おもしろくて夢中にさせる魅力というのは、激動のストーリーにある。
小説の面白さには、いろんな役を主人公と共に楽しむ、って要素がある。本作は、ひとりの主人公が次々にいろんな「役」をとっかえひっかえなりきっていくことだ。こう言うのって珍しいと思う。猟師の娘、身代わり皇子、奴隷、王妃・・・次はどんな役だろう?、と)

【ネット上の紹介】
カリエがバルアンの王妃となって一年が過ぎようとしていた。いまだ懐妊の気配はないところへ、バルアンの妾妃でもある親友のナイヤが身ごもったとの報せを聞く。ナイヤを祝福しながらも、複雑な想いにとらわれるカリエ。そんな時、彼女はバルアンから聖なる山オラエン・ヤムに一緒に登ろうと誘われる。

「砂の覇王」須賀しのぶ〈全9巻〉

2019年09月24日 08時31分18秒 | 読書(小説/日本)
「砂の覇王」須賀しのぶ〈全9巻〉
『流血女神伝』シリーズ、「帝国の娘」(上・下)に続く第二章にあたる。
今回ネタバレありなので、以下ご注意!

第一章では、猟師の娘・カリエが、日突然さらわれ、少女でありながら皇太子の身代わりとなり、他の皇帝候補たちと共同生活を送る、という激動の設定だった。
しかし、今回はさらなる激変が待っている。
奴隷となってハーレムに売られるのだ!
この9巻は、このシリーズ中でも特に面白い章だ。

【ネット上の紹介】
カリエがエディアルドとともにカデーレの森から脱出して半月が経った。薄暮のなか、その日の目的地の途中にある村に辿り着いた頃、エディアルドの高熱に気がついたカリエ。二人は、宿をその村で求めようとしたが、訪ねる家々で冷たく断られてしまう。途方に暮れるカリエ。そこに一人の男が現れ、自分の家に来てもいいと言う。しかし一夜を過ごすことになったその家には、恐ろしい罠があった。

「帝国の娘」(上・下)須賀しのぶ

2019年09月13日 19時55分40秒 | 読書(小説/日本)
「帝国の娘」(上・下)須賀しのぶ

こういうのを大河小説、と言うのでしょうね。
あまりに長いので、なかなか読み返す機会と気力が涌かなかった。
しかし、このところ「読み返したい」という思いが強くなってきたので実行した。(約10年ぶり)
『流血女神伝』シリーズ、第一章が「帝国の娘」(上・下)である。
萌え要素満載だ。
2度目でもおもしろい、一気読みだ!

【参考】
次のような構成になっている。
「帝国の娘」(上・下)
砂の覇王〈全9巻〉
女神の花嫁〈前・中・後〉・・・外伝
暗き神の鎖〈前・中・後〉
喪の女王〈全8巻〉
天気晴朗なれど波高し。(1)(2)・・・番外編
本編22巻、外伝3巻、番外編2巻、全27巻

【ネット上の紹介】
女神の僕たる神鳥リシク、その翼から生まれたテナリシカ大陸の西に位置する大帝国・ルトヴィア。辺鄙な山村で平凡に暮らしていた少女カリエは、ある日突然さらわれ、ある高貴な人の身体わりにされた。礼儀作法から武術まで、過酷な訓練の日々、冷徹な教育係エディアルド、宮廷をゆるがす謀略―カリエは持ち前の負けん気と行動力ですべてを乗り越えてゆく。ただひたすら、生きるために―魂ゆさぶる大河少女小説開幕。

「邂逅の森」熊谷達也

2019年09月10日 20時34分36秒 | 読書(小説/日本)
「邂逅の森」熊谷達也

大正時代のマタギを描いた作品。
以前読んで良かったので、再読した。
直木賞、山本周五郎賞をダブル受賞した作品だ。
やはり面白かった。

P116
そもそも、平地にいる時、自分からマタギであると、里人に明かすことはない。(中略)なぜならば、マタギという言葉そのものが、本来は里で口にしてはならない山言葉であるからだ。

【参考リンク】
「邂逅の森」熊谷達也・・・初回読書

【ネット上の紹介】
秋田の貧しい小作農に生まれた富治は、伝統のマタギを生業とし、獣を狩る喜びを知るが、地主の一人娘と恋に落ち、村を追われる。鉱山で働くものの山と狩猟への思いは断ち切れず、再びマタギとして生きる。失われつつある日本の風土を克明に描いて、直木賞、山本周五郎賞を史上初めてダブル受賞した感動巨編。

「これは経費で落ちません」(6)青木祐子

2019年09月04日 09時45分51秒 | 読書(小説/日本)
「これは経費で落ちません」(6)青木祐子

シリーズ6作目。
次の5編が収録されている。

第一話 男ができると女って変わりますよね
第二話 大きなダムが決壊するのは、小さなひび割れからだ!
第三話 恋愛ってコスパが悪いんだよな
第四話 わたしはフェアではありません
エピローグ ~真夏の真夕ちゃん~

オフィスを舞台にしたライトノベル、だけど、登場人物の造形がしっかりしていて、一般向けの小説として、充分内容のあるシリーズだ。
今回は特にそれを感じた。
第二話と第三話が繋がっており、秘書のマリナが副業としてキャバ嬢をしている、って発端から、M&Aの話にスケールアップしていく。
企業小説として成り立つ内容で、社内の「政治」に無関心な森若さんが、どう関わっていくか?興味深いところだ。(読んでいて、雫井脩介さんの「引き抜き屋」を思い出した)

P47
彼氏ができたからといって沙名子自身は変わらない。すりあわせが必要なだけだ。スマホに新しいアプリを入れたようなものである。ちょっと面倒なアプリだが、そこそこ役立つし楽しいので使うことにする。(森若さんのキャラが良く出ているモノローグだ)

【おまけ】
TVドラマ化され放映中の作品。
シナリオが良く練られている。
小説の複数エピソードを、巧く絡めて進行させている。
それぞれのキャラも、より明確になるよう設定されいている。
つまり、「分かりやすい」と言うことだ。
小説では、「読者が察する」「行間を読む」と言った手間があるが、
それを省いて、「答え」を明示しているような感じだ。TVだからね!
(文句を言ってるんじゃない、誉めているのだ・・・よく出来ている、と。役者さんも良い演技をしている。特に、 伊藤沙莉の真夕と、ベッキーのマリナ役は、いい感じ)

【参考リンク】
これは経費で落ちません! - NHK ドラマ10

【ネット上の紹介】
天天コーポレーションに企業合併の危機!?役員秘書の有本マリナが、キャバクラでアルバイトをしているという噂を確かめるため、調査を始めた麻吹美華がとんでもない情報をつかんだ。知り合いに頼んで潜入調査で撮ってきてもらった映像のなかに、天天コーポレーションの部長三人が、企業買収の専門会社の人間と会っている場面があったのだ。会社の危機に沙名子は…?

「慈雨」柚月裕子

2019年08月24日 12時37分42秒 | 読書(小説/日本)
「慈雨」柚月裕子

警察を定年退職した神場は、妻と四国・巡礼の旅にでた。
霊場を巡りながらも、現在起こっている幼女殺害事件が気になり、部下と連絡をとる。
16年前の事件と酷似していたから。
アームチェア探偵ならぬ、お遍路刑事である。
妻、娘、部下とのやり取り、お遍路で出会う人々との描写がいい。

p172
「お遍路さんのはたいがいは、心になんか重たいもんを抱えていなさるけんど、あんたもそうなんじゃろ」
(中略)
「人生はお天気とおんなじ。晴れるときもあれば、ひどい嵐のときもある。それは、お大尽さまも、私みたいな田舎の年寄りもおんなじ。人の力じゃどうにもできんね。(後略)」

【ネット上の紹介】
警察官を定年退職した神場智則は、妻の香代子とお遍路の旅に出た。42年の警察官人生を振り返る旅の途中で、神場は幼女殺害事件の発生を知り、動揺する。16年前、自らも捜査に加わり、犯人逮捕に至った事件に酷似していたのだ。神場の心に深い傷と悔恨を残した、あの事件に―。元警察官が真実を追う、慟哭のミステリー。

「検事の死命」柚月裕子

2019年08月20日 07時07分54秒 | 読書(小説/日本)
「検事の死命」柚月裕子

佐方貞人の検事時代を描いた連作ミステリー。
佐方貞人シリーズ3作目。

「心を掬う」
「本懐を知る」
「死命を賭ける」―事部編
「死命を決する」―公判部編
2作目に匹敵する面白さだ。

P171
同じ痴漢でも、下着の中に手を入れたり胸を鷲摑みにしたりすると強制わいせつ罪に問われるが、衣服の上から身体を触った程度では、適用される法令は迷惑防止条例違反だ。

【ネット上の紹介】
郵便物紛失事件の謎に迫る佐方が、手紙に託された老夫婦の心を救う(「心を掬う」)、感涙必至!佐方の父の謎の核心が明かされる「本懐を知る」完結編(「業をおろす」)、大物国会議員、地検トップまで敵に回して、検事の矜持を押し通す(「死命を賭ける」―『死命』刑事部編)、検察側・弁護側―双方が絶対に負けられない裁判の、火蓋が切られた(「死命を決する」―『死命』公判部編)。骨太の人間ドラマと巧緻なミステリーが融合した佐方貞人シリーズ。刑事部から公判部へ、検事・佐方の新たなる助走が、いま始まる!

「検事の本懐」柚月裕子

2019年08月19日 19時35分02秒 | 読書(小説/日本)
「検事の本懐」柚月裕子

佐方貞人の検事時代を描いた連作ミステリー。
佐方貞人シリーズ2作目。

「罪を押す」
「樹を見る」
「恩を返す」
「拳を握る」
「本懐を知る」
私は学生時代の恩を返すため広島に行く「恩を返す」が好み。
1作目より面白く感じた。

P75
小野が犯したのは、留守の家を狙っての空き巣ではなく、十人が在宅しているとわかったうえでの居空きだった。

P192
仮を返せば、恩が返せるわけじゃない

【ネット上の紹介】
12万部突破の法廷ミステリー『最後の証人』主人公のヤメ検弁護士・佐方貞人の検事時代を描いた連作ミステリー、待望の文庫化です。出所したばかりの累犯者が起こした窃盗事件の真実を抉る「罪を押す」。県警上層部に渦巻く嫉妬が、連続放火事件の真相を歪める「樹を見る」。同級生を襲った現役警官による卑劣な恐喝事件に、真っ向から対峙する「恩を返す」。東京地検特捜部を舞台に、法と信義の狭間でもがく「拳を握る」。横領弁護士の汚名をきてまで、約束を守り抜いて死んだ男の真情を描く「本懐を知る」。

「最後の証人」柚月裕子

2019年08月19日 07時17分54秒 | 読書(小説/日本)
「最後の証人」柚月裕子

傑作法廷ミステリー。
ホテルで起きた刺殺事件。
密室ゆえ、圧倒的に不利な状況。
これを覆せるのか?
当初、単純な男女間の愛憎のもつれと思われた。
裁判が進むに従い、過去の事件が絡んでくる。
佐方貞人シリーズ1作目。

【ネット上の紹介】
元検察官の佐方貞人は、刑事事件を専門に扱うやり手弁護士だ。そんな佐方の許に、かつて在籍した地検の所在地で起きた殺人事件の弁護依頼が舞い込む。高層ホテルの一室で起きた刺殺事件。物的証拠、状況証拠ともに、依頼人が犯人であることを示していた。男女間の愛憎のもつれが引き起こした悲劇。世間やマスコミの誰もが、依頼人に勝ち目はないと見ていた。しかし佐方の、本筋を見抜くプロの勘は、これは単純な事件ではないと告げていた。敗戦必至の弁護を引き受けた佐方に、果たして勝算はあるのか。やがて裁判は、誰もが予想しなかった驚くべき展開をみせる…。

「闇夜の底で踊れ」増島拓哉

2019年07月30日 21時39分50秒 | 読書(小説/日本)
「闇夜の底で踊れ」増島拓哉

人気の話題作を読んだ。
物語は、ヤクザ組長の後継者争いを縦糸、チンピラとソープ嬢の恋が横糸に展開する。
読んでいて、黒川博行さんの「疫病神」シリーズを思い出した。
ヤクザの桑原と建設コンサルタントの二宮の軽快な掛け合いが魅力の作品だ。
桑原=山本、二宮=伊達、と当てはめるとよい。
ただ、「疫病神」シリーズと異なるのは、ソープ嬢の詩織が絡んでくる点。

また、「疫病神」シリーズ同様、舞台が大阪なので、そこも嬉しいところだ。
雰囲気として、黒川博行+馳星周と言ったところか?
思った以上に楽しめた。

【ネット上の紹介】
35歳、無職、パチンコ依存症の伊達。ある日、大勝ちした勢いで訪れたソープランドで出会った詩織に恋心を抱き、入れ込むようになる。やがて所持金が底をつき、闇金業者から借りた金を踏み倒して襲撃を受ける伊達だったが、その窮地を救ったのはかつての兄貴分、関川組の山本だった。その後、山本との奇妙な共生生活を続けながら、詩織に一層のめり込んでいく伊達。一方、関川組の組長引退をきっかけにした内紛が抗争へと発展し、関川組周辺にきな臭い空気が立ち込める。伊達の秘められた過去、そして山本が伊達の前に現れた本当の理由が明かされるとき、事態は思いもよらぬ方向へと転がり進んでゆく――。【

「姑の遺品整理は、迷惑です」垣谷美雨

2019年06月11日 20時27分51秒 | 読書(小説/日本)
「姑の遺品整理は、迷惑です」垣谷美雨

独り暮らしの姑が亡くなり、その遺品整理をすることになった嫁の望登子。
断捨離のできない姑のマンションは、無駄なものにあふれていた。
これって2か月で片づくの?

P138
「(前略)あれから思ったんだけど、親っていうのは、死んで初めてどんな人間だったかがわかるね」
(中略)
「親とはありがたいものだけど罪なものね」
「そうよ。私の人生に多大な影響を及ぼしたわ。本当に迷惑な存在よ」
(中略)
「親になるって、実はすごく難しいことだと思うようになったの」
(中略)
「親になるというのは誰にとっても初めての経験でしょう。だから、うまくやれる方が奇跡だと思わない?」
「そういえば、そうかも」
「子供たちに、もっとこうしてやればよかった、ああしてやれていればって思うことがいっぱいあるもの」

【感想】
「(前略)親っていうのは、死んで初めてどんな人間だったかがわかるね」
・・・とあるが、死ななくても分かる。
人は「こうありたい」「このように思われたい」という自己演出がある。
(意識、無意識を別にして)
認知症になると、そのバリアがなくなる。
素の部分、演出されない「芯」がダイレクトに表出する。
「あぁ、こんな人間だったのか・・・」、と。
(あるいは、「やっぱりな・・・」、とか)
そしてさらに進行すると、「芯」も溶けてくる。
「炉心溶融」、だ。
人間メルトダウンは、素人の対処が困難・・・。
(元気なときの自分が見たら、不本意で情けなく思うでしょうね、でも看る方も情けなくも不本意だ)

【追加】
あと、介護が疲れるのは、人間関係の距離が崩れるから。
本来、1人1人楽で、居心地の良い距離、ってのがある。
仕事をして疲れるのは、これも一因と思う。
様々な距離感の人を相手にする必要があるから。
人は自分の距離で接することができないと疲れる。
(その反動で独りになりたくなる・・・その繰り返しだ)

【おまけ】
今年から、不要な物を捨てていっている。
粗大ゴミの日は月に2回ある。(大型+小型)
その日に、不要な物を捨てていっているが、出てくる出てくる。
いっこうに片づかない。
なぜこんな物を残しておくの?
何に使うつもりでとってあるの?
昭和一ケタ、って、皆さんこうなの?

【誤植】
P130
誤「パーリー?今パーリーっておっしゃいましたか?」
      ↓
正「パーティ?今パーティっておっしゃいましたか?」

【参考】
断捨離を意識するあまり、勝手に同居する家族の所有物を捨ててしまう、売却してしまうことでトラブルになる例も多々有り、妻が夫の貴重なコレクションを同意無しに捨てる、子供が大切にしていた思い出の品を親が勝手に捨てるなどで、離婚問題に発展することもあるが、断捨離とは自分と自分の所有物に行うものであり「家族を含めて他人のものを勝手に捨てるのは断捨離ではない」と、提唱者であるやましたひでこ自身も発言している。by Wikipedia

【ネット上の紹介】
独り暮らしの姑が亡くなり、住んでいたマンションを処分することになった。業者に頼むと高くつくからと、嫁である望登子はなんとか自分で遺品整理をしようとするが、あまりの物の多さに立ちすくむばかり。「安物買いの銭失い」だった姑を恨めしく思いながら、仕方なく片づけを始める。夫も手伝うようになったが、さすが親子、彼も捨てられないタイプで、望登子の負担は増えるばかりである―。誰もが直面する問題をユーモラスに描いた長編小説。

「エール!」①②③

2019年06月08日 19時59分11秒 | 読書(小説/日本)
「エール!」①②③

お仕事小説のアンソロジー。
好きな作家の作品だけ選んで読んだ。
その中で、次の4作品が特によかった。

「終わった恋とジェット・ラグ」近藤史恵・・・ツアー・コンダクター
「心の隙間を灯で埋めて」垣谷美雨・・・遺品整理会社社員
『ラブ・ミー・テンダー』森谷明子・・・ベビーシッター
「クール」山本幸久・・・農業

「終わった恋とジェット・ラグ」は、元カレの新婚旅行のツアー・コンダクターになった話。
①巻目p289
ヨーロッパのホテルにはバスタブのない部屋が多い。安いホテルだけではなく、かなりいいホテルでも一部の部屋にしかバズタブがないことは決して珍しくない。(東南アジアのホテルでも同様。それでもバスタブにこだわる日本人。いやなら旅をするなと言いたいが、仕事だと無下にできない。でも、それぐらい自分で交渉しろよ。そして、ないならあきらめてよ。どうしようもないんだから)

【ネット上の紹介】
①旬の作家六人による、お仕事小説アンソロジーシリーズ第1弾。漫画家、通信講座講師、プラネタリウム解説員、ディスプレイデザイナー、スポーツ・ライター、ツアー・コンダクター―六人の「働く」女性たちが、ときに悩み、へこみながら、自分らしい生き方を見つけていくさまを、気になる職業の裏側や豆知識も盛り込みながらいきいきと描ん。オール書き下ろし、文庫オリジナル企画。
②バイト君の教育、クライアントの不正、育児と仕事の両立…働く女性を取り巻くさまざまな問題のゆくえは!?スイミングインストラクター、社会保険労務士、宅配ピザ店店長、遺品整理会社社員、ラジオパーソナリティ、メーカーのOL。六人の女性を主人公に、ミステリー、ファンタジー、ちょっぴりサスペンスと、多彩な六話を収録するアンソロジー。オール書き下ろし。
③小学生の娘と暮らしながら、新幹線清掃の仕事をするシングルマザーが出合う奇跡とは!?(伊坂幸太郎「彗星さんたち」)ほか全六編。運送会社の美術輸送班、東京消防庁災害救急情報センター、ベビーシッター、農業、イベント企画会社など、多彩な職場で働くヒロインたちの奮闘を描くお仕事小説アンソロジー第三弾。それぞれの仕事の裏側や豆知識も満載。オール書き下ろし!

RDG再読

2019年06月02日 16時59分35秒 | 読書(小説/日本)
RDG①~⑦を再読した。
また、「花のお江戸で粗茶一服」も再読した。
このあたり、1年に1回は読み返したくなる。