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【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「シンデレラ 中野京子特別授業 読書の学校」中野京子

2017年12月05日 21時38分15秒 | 読書(エッセイ&コラム)

「シンデレラ 中野京子特別授業 読書の学校」中野京子

灰が象徴するもの…死、再生、キリスト教での改悛や贖罪
P52
しかし古代の多くの文化圏では、灰は魔術と関連づけられました。これは火に焼かれたものの力が灰に凝縮されるとの考えからきたようです。かまどのそばで寝起きし、常に灰にまみれていたシンデレラが、いつしか異界の魔力を身につけていったとしても不思議ではありません。

P55
――昔話における「王族」は、特になんらかの説明がない限り、完璧さの象徴です。人は誰しも心の中に各々の王国を持っており、不遇から脱して上昇すること、ないし精神的成長を遂げることが、王や女王になる、ないし王子や王女と結婚する、という形で表現されているのです。

P58
「豆」は古代ギリシャで死者の魂を宿すと信じられていました。そのため食べると魂が乗り移るとして(「灰」と非常によく似ています)、当時の哲学者ピタゴラスは食べることを禁じました。(中略)豆と霊魂の結びつきは人びとの無意識に食い込み、「ジャックと豆の木」で主人公が豆の木を登ると異界へ行けたのはそのためです。シンデレラの豆の拾い出し作業にも、同じシンボル性が考えられましょう。

P67
いったいどうしてシンデレラの足はそんなに小さいのでしょう。そこで思い出されるのは、シンデレラ類話の最古版が中国だったということ。シンデレラ纏足説が有力視される由縁です。


アレクザンダー・ツィック「豆を選り分ける鳥たち」

「枕草子のたくらみ」山本淳子

2017年09月21日 20時32分15秒 | 読書(エッセイ&コラム)


「枕草子のたくらみ」山本淳子

「枕草子」に隠された様々な思いを読み解いていく。
読んでいて、切ない気持ちになった。
1000年の時を経て、心に染みてくる。

P4
紫式部が出仕したのは、長保2(1000)年の定子の崩御によって清少納言が職場を去ってから、5年が過ぎた後のことである。二人が内裏にいた時期はすれ違っており、今まさに対抗し合う二勢力を代表する文芸の女房として角を突き合わせることはなかった。察するに面識もなかったのではないか。

「紫式部日記」の清少納言へのコメントについて
P6
批評はやがて非難となり、言い募るうちに激高の色さえ帯びて、最後は清少納言の行く末を呪うかのように終わっている。
 なぜ紫式部は、ここまで清少納言を、そして『枕草子』を批判したのか。研究者から「教養ある中年の貴族女性としての慎みを一切かなぐり捨てたかのよう」「いささか異常」とまで言われるこの批評は、長く才女間のライバル意識によるものと考えられてきた。

P17
紫式部の清少納言批判を、清少納言本人が目にすることはなかっただろう。が、もし目にしても、批判は的外れではない、むしろ言い得ていると、彼女はきっと笑ったに違いない。闇にあって闇を書いていないのは、清少納言自身がそう意図したからだ。何はさておき、定子のために作ったのだ。定子の生前には、定子が楽しむように。その死を受けては、定子の魂が鎮められるように。皆が定子を忘れぬように。

春は、あけぼの。この有名な冒頭について…
P28
清少納言は、私たち千年後の読者に向けてこの章段を書いたのではない。今ここで苦しみを抱える定子のために、あるいはその魂のために書いたのだ。

P48
我が身の分身である作品内の「清少納言」に演じ切らせたのだ。もちろんそれは定子のため、あるいは定子死後の読者の心に働きかけるためである。
 目的のために身を挺するこうした方法は、プライドが高くてはできない。例えば紫式部には、到底まねのできないことだったのではないか。

P60
今こそ胸を張って、自由闊達な定子文化サロンを書いて遺さなくては。清少納言が『枕草子』に自分たちの生活文化を記したということには、そうした意味があったのだ。
(中略)
確信犯として他愛なさを纏う章段たちは、悲しみに暮れていた定子の心を、温かく励ましたに違いない。

P130
胸つぶれてとくあけたれば、紙にはものも書かせ給はず、山吹の花びら一重包ませ給へり。
P132
ただ一枚の小さな花びらによって、定子は思いのたけを清少納言に伝え、清少納言はそれを受け止めて生きる力を取り戻した。

P139
ふと思い出し、清少納言の好きな紙を贈った。するとやがて、手元に一冊の冊子が密かに届く。題は『枕草子』。(中略)
中関白家が倒れ権威は地に落ち、何もかも失ったかのように思われたこの時に。今度は定子の心に熱いものがこみ上げただろう。かつてのプライドを思い出し、うつむいた顔を上げることができただろう。(そして、定子は山吹の文を清少納言におくるのだ)

P271
喪われたものへの鎮魂の書、それが同時代の『枕草子』だった。その意味で、『枕草子』は一つの〈挽歌〉だったのだ。

【おまけ】
『源氏物語』の桐壺更衣とは?…ここは実際読んでみて。「そうだったのか!」と驚いた。P157

【ネット上の紹介】
平安に暮らす女房の視線で、その日常を明るく軽やかに描いた随筆として有名な『枕草子』。だが、作者・清少納言の執筆の真意は“お仕えする中宮定子の御ため”その一点にこそあった。生前は定子の心を慰めるために、死後にはその鎮魂のために思いを込めて―。定子の死後、その敵方であった藤原道長の権勢極まる世で、『枕草子』は潰されることなく、平安社会に流布した。果たしてこの事実は何を意味するのか。『枕草子』が平安社会を生き延びるために、清少納言が駆使した戦略とは?冒頭「春はあけぼの」に込められた、真実の思いとは?『枕草子』のまったく新しい扉が、ここに開かれる。
清少納言の企て
春は、あけぼの
新風・定子との出会い
笛は
貴公子伊周
季節に寄せる思い
変転
女房という生き方
政変の中で
人生の真実〔ほか〕


「貯金1000万円以下でも老後は暮らせる!」畠中雅子

2017年09月14日 20時28分48秒 | 読書(エッセイ&コラム)


「貯金1000万円以下でも老後は暮らせる!」畠中雅子

目の前に迫った切実な問題「老後」。
いったい、いくらあったら安心なのか?
「最低でも3000万円、出来れば5000万円」これは本当なのか?
あるに越したことはないが、ない袖は振れぬ、である。
少なくても、大丈夫なのか?
老後設計の為に、本書を読んでみた。

(本来なら、青色字の箇所は、本に書かれているとおりを写しているが、今回は私がかいつまんで要点をまとめている…情報が多いので、ご容赦下さい)
実際、本書を読んでいただくのがベスト!

P56
(年金受給を)1か月遅らせると0.7%増額となります。1年で8.4%も年金額が増える計算で、仮にいちばん遅い70歳からもらい始めるようにすると、42%の増額となり、増額された年金額が生涯続きます。(長生きしたら得だけど、そんなに生きられるのだろうか?)

老後の住まいを考える
P106
①ずっと自宅で暮らす
②自宅を売って、コンパクトなマンションに住み替える
③しばらく自宅、介護認定を受けたら、介護付有料老人ホームなどに住み替える
親子同居はリスキー、とのこと。お嫁さんが同居を望まないから、と。

P144
東京スター銀行のリバースモーゲージについて書かれている。
資金繰りが厳しくなったら、一考の価値あり。

P156
「イオンのお葬式」が費用が抑えられて良いらしい。
(高いお葬式に比べると、祭壇の花が少し淋しいかも?)

介護が必要になった際の、住み替え方法
①70代半ばを過ぎたら、自立しているうちに介護型ケアハウスを併設しているケアハウスに住み替える
②要介護2までは在宅で介護を受け、要介護3になったら、すぐに特養の申請をして、入居できるのを待つ
③要介護認定を受けたら、自分の年金額で入居できるエリアの介護付有料老人ホームを探して転居する

見学の際の注意点(要点をまとめてみた)
P184-186
見学の際は、食事も試してみる(必ず料金を払う事…タダで食事をいただくと、味の評価が甘くなるから)
食事の際、お酒を飲めるかどうか確認
周辺にどのくらい飲食店があるか
入浴時間も確認(施設のなかには、人出の多い午前中しか、入浴できないところがある)
アクティビティが多いか少ないか(多いとゆっくり読書できない)
「食事がおいしい」という評判はあてにならない
「入居率」をチェック(開設して2~3年が経過しても空きが多い施設は要注意、経営面でも不安)
「そんぽの家」という介護付有料老人ホームがあり、入居一時金もなく、月額費用も地方なら11~12万円

【参考リンク】

介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」
大阪府/介護サービス情報の公表のページ

【ネット上の紹介】
年金/保険/再就職/節約/介護…etc.老後の生活設計の勘どころ、大事なところだけをざっくり把握!50歳からの安心老後を実現するマネープランの教科書。
序章 「貯金1000万円」を貯められそうにない人の人生設計
第1章 貯金の少ない人が知っておきたい暮らしの知識
第2章 老後を乗り切る生活の知恵
第3章 老後資金を左右する住まいのお金
第4章 老後の暮らしを守る保険の話
第5章 介護にどう備えるべきか?


「京都の凸凹を歩く」(2)梅林秀行

2017年08月28日 19時27分56秒 | 読書(エッセイ&コラム)


「京都の凸凹を歩く」(2)梅林秀行

「京都の凸凹を歩く」の第2弾。
京都の街を地形から読み解く、フィールドワーク作品。

P96
今でこそ、河原町通は京都の南北メインストリートとして知られていますが、もともとは御土居という京都東側の境界部分だったというわけです。



源氏物語の世界…五条大橋を渡った辺り

 【参考リンク】
「京都の凸凹を歩く 」梅林秀行

【ネット上の紹介】
「京都ガイド本大賞2016リピーター賞」受賞作の続編!3D凸凹地形図や古地図を多数収録!待望の第2弾!!

嵐山(前編)―絵画のような絶景と「断層の美」をフル活用した夢窓疎石の最高傑作!
嵐山(後編)―「美のルーツ」はどこにある?風景と詩歌からその変遷をたどる!
金閣寺―義満が愛した絶景スポットから定家も讃えた祈りのシンボルまで「王者の宮殿」の壮麗な姿!
吉田山―斜面と人の営みが立体交差!「聖地」から「住まい」へ繋がる小宇宙!
御所東―京都の「真ん中であり、端っこ」。新陳代謝が止まらない注目エリアの多面性!
源氏物語(前編)―平安時代にタイムスリップ!架空の物語が現実と出会う場所
源氏物語(後編)―女たちの運命が動き出す!今なお根ざす、祈りと鎮魂と
伏見城(前編)―日本城郭史上、最大級の堀遺構。「豊臣建設」の圧倒的ダイナミズム!
伏見城(後編)―大名団地・直線道路・一変する風景…豊臣政権の「伏見首都計画」を体感!
特別鼎談 岸田繁×山内太郎×梅林秀行 「モザイク」なまち、京都で歩きながら考えること

「裁判の非情と人情」原田國男

2017年08月23日 18時58分37秒 | 読書(エッセイ&コラム)


「裁判の非情と人情」原田國男

元裁判官・原田國男さんのエッセイ。
2017年 第65回 日本エッセイスト・クラブ賞受賞作品。

P46
さて、刑事裁判官と民事裁判官は、お互いをどうみているか。おそらく、刑事裁判官は、刑事事件は事実認定が命であり、それに比べ、民事事件の事実認定はラフすぎるというであろう。これに対して、民事裁判官は、事実認定が大事だといっていても、結局、刑事裁判官は検察官の主張に乗って有罪にしているだけではないか、と厳しい見方をするであろう。

P68
死刑の場合、主文の朗読を最後にまわすのが一種の慣行である。これは、最初にして、たとえば被告人が失神などしてしまうと言渡し手続きが未完となるからだ。

裁判官が書いた本を三冊挙げられている
P135
出版順に挙げると、鬼塚賢太郎『偽囚記』、岡村治信『青春の柩 生と死の航跡』、ゆたかはじめ『汽車ポッポ判事の鉄道と戦争』である。

【ネット上の紹介】
裁かれるのも「人」なら、裁くのも「人」のはず。しかし、私たちにとって裁判と裁判官は、いまだ遠い存在だ。有罪率99%といわれる日本の刑事裁判で、二〇件以上の無罪判決を言い渡した元東京高裁判事が、思わず笑いを誘う法廷での一コマから、裁判員制度、冤罪、死刑にいたるまで、その知られざる仕事と胸のうちを綴る。
第1章 裁判は小説よりも奇なり―忘れがたい法廷での出会い(「法廷闘争時代」の幕開けに
右手を挙げて宣誓? ほか)
第2章 判事の仕事―その常識・非常識(紅茶を出されたら…
刑事裁判官vs.民事裁判官 ほか)
第3章 無罪判決雑感(「合理的な疑い」とは何か?
裁判官vs.新聞記者 ほか)
第4章 法廷から離れて―裁判所の舞台裏(最高裁調査官の「魔術」と「錬金術」
人生の達人 ほか)
第5章 裁判員と裁判官―公平な判断のために求められるもの(国民の目線と少年事件
裁判官vs.弁護士 ほか)


「鬱屈精神科医、占いにすがる」春日武彦

2017年08月21日 19時05分41秒 | 読書(エッセイ&コラム)


「鬱屈精神科医、占いにすがる」春日武彦

精神科医・春日武彦さんによるエッセイ(のようなもの)。

P61
わたしは阿倍なんてインチキ男は大嫌いで、テレビのニュースを見ているとしょっちゅう「死ね、クソ阿倍!」なんて悪態を吐いている。見え透いた態度の、むかつく政治家だと思っている。だが、安倍首相の小心さと傲慢さとがミックスされたような口調、愚かな割には妙な運の強さを発揮するそのしぶとさ(それが本人にとっても日本にとってもマイナスの意味になってしまうことも含めて)、再び突然の辞任をしそうな危うさ、ぎこちない「あざとさ」、おそらく心の中に抱えているであろう低レベルの鬱屈(学歴や人望など)、力づくの振る舞いへの憧憬などは、実は結構わたしと似通っているかもしれない。

p78-79
ついでに、わたしが普段の診療で用いている診断名を示しておく。わずか六つ。治療を行うという立場からすれば、経験的に六つで事足りるのである。
(1)統合失調症。
(2)(躁)うつ病。
(3)神経症。
(4)器質性精神病(認知症を含む)ないしは症状精神病。
(5)パーソナリティ障害。
(6)依存症。
もう少し詳しく述べるなら、(1)と(2)はいわゆる内因性精神病と呼ばれ、脳神経細胞に生化学的な失調が認められるものの、いまだに本当の原因は不明のもの。(3)はストレスや悩みによって直接的に導き出される心因性精神病。(4)は心ではなく物質としての脳がダメージを受けたことによって生ずる外因性の精神病。(5)は先天性ないしは生育史において生じた心の構造の歪み(6)はむしろ(5)の一部と考えるべきかもしれない。

P104
相手の話へ熱心に耳を傾けることがモテるコツ、といった話はかなり知られているのではないだろうか。もはや都市伝説に近いかもしれない。
でもそれを実践している人は案外少ない。だって相手の話はおおむねつまらないうえに「くどい」のである。

P193
念のために申し添えておくが、自傷行為と自殺とは似て非なるものである。(中略)おそらく死を迎える前に、自殺志願者は思考も感情も既に活動を停止している。だからあらゆる自殺は惰性によって遂行される。したがって恐怖や痛みに怯むことなどない。自殺を思いとどまるように説得しても功を奏するケースは少ない。首を括ったり電車に飛び込むのは、(比喩的に申せば)リアルな人間ではなく抜け殻である。

【ネット上の紹介】
人間が“救済”されるとはいったいどういうことなのか。心の医者にとって救済とは?
第1章 占い師に「すがり」たくなる気分のこと
第2章 世界を理解する方法としての占い
第3章 カウンセリングのようなもの、としての占い
第4章 「救い」に似た事象について
第5章 一線を越える、ということ


「はじめからその話をすればよかった」宮下奈都

2017年08月18日 21時31分40秒 | 読書(エッセイ&コラム)


「はじめからその話をすればよかった」宮下奈都

宮下奈都さんのエッセイ。

P80
いい小説には答えではなく、問いがある。読んで「わかった!」と爽快になってもらうことより、「よけいわからなくなった」と考え込んでもらうことを目指したい。

私の一番好きな宮下奈都作品は「よろこびの歌」とその続編「終わらない歌」。
さらに続編はあるのか?
P301
『終わらない歌』もまた、続きを読みたい、といってもらえている。私も、玲の、千夏の、彼女たちのこれからを読みたいと思う。だけど、ひとつ大きな問題がある。二十代に入り、道が分かれていくだろう彼女たちの、さまざまなこれから。嵐になることも、光が射すこともあるだろう。甘い思いもたくさん経験するに違いない。二十代にだけは戻りたくないと常日ごろ思っているひとりとして、彼女たちの激動の二十代を自分が書かなければならないというのは大問題だ。この問題さえ解決できるなら、今すぐにでも彼女たちの未来を読みたいと私も切に願っている。

宮下奈都さんのエッセイは、「神さまたちの遊ぶ庭」と本書だけ。
「神さまたちの遊ぶ庭」は、山村留学体験記なので、純粋なエッセイとも違う。
故に、本書は宮下奈都ファン必読、ということになる。
自分の作品を自分で解説される章があるので、興味深い。

【ネット上の紹介】
大好きな本や音楽、そして愛おしい三人の子どもたちと共にある暮らしを紡いだ身辺雑記。やさしくも鋭い眼差しで読み解く書評。創作の背景を披瀝した自著解説。瑞々しい掌編小説―。読者の心を熱く震わせる「宮下ワールド」の原風景が詰まった著者初のエッセイ集。文庫化に際し、掌編小説2編とエッセイ2編を新規収録。ファン必携、極上の一冊!
日々、つれづれ
掌編 オムライス
本のこと ときどき音楽、漫画、映画
掌編 あしたの風
掌編 ちゅうちゅう
自分の本を解説
掌編 野生のバス
ひとさまの本を解説
掌編 サンタクロースの息子
掌編 花は環る


「神さまたちの遊ぶ庭」宮下奈都

2017年08月08日 20時16分34秒 | 読書(エッセイ&コラム)


「神さまたちの遊ぶ庭」宮下奈都

文庫化されたのを機に再読した。
宮下家の北海道トムラウシ、山村留学体験記。ノンフィクションと言うよりエッセイ風。
巻末に、「それから」も追加収録されている。
読んでいる間ずっと、楽しい気分になれた。
こういう作品は少ない。

知り合いの編集者が子どもを連れて宮下家が暮らす村へやってきた。でも…。
P124
虫が怖い、森は嫌だ、と半ベソをかいている。帰りたい、と言っているのが聞こえてかわいそうになった。むすめがはりきってつかまえてみせた蛙にも大きな悲鳴を上げている。なるほどなぁ。たしかにここで暮らすのは無理だなぁ。良い悪いではなく、無理な人にはただただ無理なのだろうと思った。(楽しさと苦しみは紙一重かも?クライマーにとって岩を登るのは楽しみだが、多くの方にとって、苦行であり、恐怖であろう。濃度が高まるほど、楽しさと苦しみの壁は高くなり、喜びもひとしお)

P154
「メイちゃん見ながら梅干し食べてくる」と出ていったむすめ。
 日が暮れてきたので様子を見にいったら、小雨の降る中、同級生のみぃちゃんとふたりで「とむら」の軒下にすわって、メイちゃん(羊)を見ながら梅干しを食べていた。(シュールな中に情感を感じる)

P194
腕時計を忘れたことに、車の中で気づく。これ使っていいよ、とむすめが方位磁石を貸してくれた。むー、微妙にできるやつ。

P205
小学四年生のいきものがかりが素晴らしい。
今年の目標「笑顔で泳いでくれるような水槽にする」。

【前回読んだときの感想】
「神さまたちの遊ぶ庭」宮下奈都


「今日はヒョウ柄を着る日」星野博美

2017年07月19日 20時26分52秒 | 読書(エッセイ&コラム)


「今日はヒョウ柄を着る日」星野博美

著者の、最新エッセイ。

P24-25
女子校出身の私は、女性の言動には非常に神経質なところがある。十代の頃、同級生たちは、あとで引きずり下ろすために相手を持ち上げたり、散々叩きのめしておいて救いの手を差し伸べ、恩を売ったりと、手のこんだ距離の構築を図っていた。女性の発する、真意の見えない曖昧な発言を真に受けると、十中八九、捕食者の餌食となる運命が待ち受けている。

著者は、理屈っぽく、面倒な性格である。
身近な存在だと、しんどいかもしれない。
だが、作家だと、それが利点となる。
こだわりのある変人万歳、である。

今回、少し内容が薄味になったような気がする。
(歳をとって一般の人に近づいたのだろうか?)
いや、のりが死んでしまったからかもしれない。
活力の源である猫が、これで一匹も居なくなってしまったから。
この悲しみを乗り越え、さらなる活躍をされるよう期待する。

P165
世の中には、猫のいる人間と、猫のいない人間の二種類しかいない。
のりが亡くなって、はや一年半になる。私はとうとう、猫のいない人間になってしまった。






迷子の自由 




【ネット上の紹介】
朝から賑わう戸越銀座商店街。そこでおばあちゃんたちがまとう「ヒョウ柄」の存在に気づいた著者は、人間界と動物界の相似性に敏感になる。そして若い世代‐高齢者、記憶‐真実、現世‐あの世といった境界を行き来しはじめ…。星野博美ワールドの「その先」を指し示す、あやしくてせつない、ユーモアあふれる豊かな異界の淵へ、ようこそ!新境地をひらく最新エッセイ集!


「京都の凸凹を歩く 」梅林秀行

2017年06月12日 19時38分34秒 | 読書(エッセイ&コラム)


「京都の凸凹を歩く 」梅林秀行

京都の街を地形から読み解く、フィールドワーク作品。

P96
「人の世に熱あれ、人間に光りあれ」
(中略)
この宣言を採択した全国の初代委員長南梅吉が楽只(らくし)地区に住居を構えていたことから、御土居近くのこの地点に記念碑が建てられました。御土居とは、京都の「内」と「外」を分ける社会的排除の象徴でありました。
 凸凹地形、すなわち高低差とは、単なる地形を超えて、社会の高低差も意味するのかもしれません。(単なる地形の本と思っていたが、ここまで言及されるとは思わなかった…驚いた)

御土居地図

この北あたりに、鷹ヶ峰御薬園跡がある
澤田瞳子さんの女薬師・真葛シリーズの重要舞台である…いずれ訪問したい


【参考リンク】
まいまい京都

【おまけの感想】
不思議に思うのだが、神社仏閣のような聖地と祇園のような俗地が共存すること。
これは祇園だけではないと思う。
生駒山を奈良県側に下った時もそう感じた。

【参考図書】

「ふたり女房」澤田瞳子
「師走の扶持」澤田瞳子

【ネット上の紹介】
NHK「ブラタモリ」でも注目!京都高低差崖会崖長の著者が、貴重な古地図と特製「3D凸凹地形図」で紹介する、街歩きの新提案。


「本当は怖い京都の話」倉松知さと

2017年06月02日 20時43分24秒 | 読書(エッセイ&コラム)


「本当は怖い京都の話」倉松知さと

歴史+観光の雑学本。
京都はあちこち行ってるつもりだけど、見逃している箇所がいくつもあった。
この本を持って、訪問したくなる内容だ。

木屋町通りについて
P68-74
「木屋町通り」は「志士たちが駆け抜けた道」と呼ばれているそうだ。
別名「暗殺ストリート」、多くの志士たちが殺されている。


祇園祭について
P60
ジメジメする梅雨時は、気温が上昇して、細菌が繁殖したり、大雨で洪水が起きるなど、様々な要因で病気が蔓延して人々を悩ませる。そんな時期に、病気が流行る原因とされる「疫病神」を歓待し和ませ、良い気分にさせることで流行を防ごうとしたのだ。

法輪寺について
P50-51
あの清少納言が『枕草子』で「寺は壺坂 笠置 法輪」と名前を挙げるほどで、特に院政期には多くの人々の信仰を集めて隆盛を誇った
(中略)
文殊菩薩が「知識の量や経験の深さ」に御利益があるのに対して、虚空蔵菩薩の方は、集中力やひらめきに御利益があるそうだ。
(中略)
法輪寺を後にして、渡月橋を渡る時に、決して振り向いてはいけないということ。振り向くと、せっかく授かった知恵が逃げてしまうと言われている。

P70
森鴎外を森勤王と書いてある。
どうして?

P152-157
一条戻り橋…数々の伝説を持つ有名な橋。
晴明神社とセットで訪ねたい。
(「RDG」では、一条の作ったウエブサイト名が「戻り橋」で、真響がひどい目にあった)


縁切りスポットについて
P174-179
縁を結ぶより、縁を切る方がはるかに困難、と思う。
(結婚より離婚が難しいのと同じ…時間、お金、労力、の三拍子)
その割に、縁切りスポットは少ないように感じる。
本書では祇園の『安井金比羅宮』と河原町二条にある『法雲寺』が紹介されている。
写真を見るだけで、異様な雰囲気を感じる。
縁切り縁結び碑(いし) 画像 
無数のおふだが貼られている巨石。
中央に小さな穴があいている。
形代を持ってくぐり、再び、逆方向からくぐる。
その後おふだ(形代)を碑に貼り付ける
縁切り縁結び碑について|安井金比羅宮


「言ってはいけない 残酷すぎる真実」橘玲

2017年04月26日 19時32分18秒 | 読書(エッセイ&コラム)


「言ってはいけない 残酷すぎる真実」橘玲

P79
夫婦間での殺しの大半は夫の嫉妬が原因だ。妻はもちろん嫉妬することはあるが、それを理由に夫を殺すことはほとんどない。妻が夫を殺すのは正当防衛か、父親の虐待から子どもを守るのが理由だ。

P136
あらゆる社会に共通する美の基準は顔の対称性と肌のなめらかさで、女性の体型で重要なのはウエストのくびれだ。これを進化論的に説明すると、顔の対称性が崩れていたり、肌に湿疹や炎症ができているのは感染症の徴候で、ウエストのふくらんだ女性は妊娠の可能性がある。いずれも子孫を残すのに障害となるから、進化の過程のなかで健康な異性や妊娠していない女性を選考するプログラムが脳に組み込まれたのだ。

P138
美人は生涯に2400万円得し、不美人は1200万円も損して、美貌格差の総額は3600万円にもなるのだ。

【おまけ】
新書大賞1位の作品。
でも、読んで楽しい作品ではない。
遺伝と環境で、未来は決まってしまうよ、と。
言われなくても分かってるけど、データを駆使して証明しているのがエライところ。
話の種に読んでも良いけど、あまり人に薦めようとは思わない。

【ネット上の紹介】
この社会にはきれいごとがあふれている。人間は平等で、努力は報われ、見た目は大した問題ではない―だが、それらは絵空事だ。進化論、遺伝学、脳科学の最新知見から、人気作家が明かす「残酷すぎる真実」。読者諸氏、口に出せない、この不愉快な現実を直視せよ。
1 努力は遺伝に勝てないのか(遺伝にまつわる語られざるタブー
「頭がよくなる」とはどういうことか―知能のタブー
知識社会で勝ち抜く人、最貧困層に堕ちる人
進化がもたらす、残酷なレイプは防げるか
反社会的人間はどのように生まれるか)
2 あまりに残酷な「美貌格差」(「見た目」で人生は決まる―容貌のタブー
あまりに残酷な「美貌格差」
男女平等が妨げる「女性の幸福」について
結婚相手選びとセックスにおける残酷な現実
女性はなぜエクスタシーで叫ぶのか?)
3 子育てや教育は子どもの成長に関係ない(わたしはどのように「わたし」になるのか
親子の語られざる真実
「遺伝子と環境」が引き起こす残酷な真実) 


「サヨナラお金の不安」畠中雅子

2017年04月20日 21時52分32秒 | 読書(エッセイ&コラム)


「サヨナラお金の不安」畠中雅子

お金に関する悩みの相談+指南書。
いろんな悩みが具体的に描かれている。
目次を見ると、次のようになっている。

1 夫婦問題のトラブル
2 親子問題のトラブル
3 教育費のトラブル
4 身の回りのお金でトラブル
5 大きなお金のトラブル
6 家計管理のトラブル

人間関係にはお金がついてくる。
お金が絡む所に、トラブル有り、ってとこか。

浪費&浮気夫への対策
P26-27
そもそも借金体質の男性は、女性にもだらしない傾向があります。
(中略)
クレジットカードのキャッシング機能をゼロにすること。夫のカードの明細やログインIDを妻がちゃんと確認して、ネット経由でログインしてキャッシングできなくしてしまう。
(中略)
そこまでしてダメなら見切るのか、そういう人だとあきらめるのか、あとは愛情の問題です。この先はもうお金の問題ではないでしょうね。
(う~ん、この先生、クールでシビア…でも、的確なアドバイスだ)

車は何年乗るのが良いか?
P136-137
やはり車を買うときは、手元にあるお金で買うのが基本。そしていまは13年を超えると税金が高くなる制度になっていますから、15年乗るのは難しいけれど、13年は乗ること。

マイナス金利での資産運用について
P175
銀行にふつうにおいておいたらダメだとあわてて、あちこち動く人がいちばん損をするんです。とりあえず普通預金でも、私はいまのままでいいと思います。
(中略)
マイナス金利だからといって運用するのはイコールではありません。(中略)貯金を運用でふやそうというのは言語道断!
過去のいろいろな動きからわかるのは、みながいっしょに動くときにいっしょに動く人は、ほとんど負けている。動くなら最初の動きをとらえて俊敏に動くか、完全に動き終わってから動くか。いずれにしても運用はブームでやるものではないということです。

P174
自分でいろいろ調べてやっているつもりが、目先の得におどらされているだけで、総額としては、思ったほどふえていない。

P181
最後にお伝えしておきたいことは、Fさんもそうですが、人からすすめられるままに買わないということ。すすめられたものって、たいてい当たりません(笑)。

子どもを育てるのにいくらかかるか?
P99

私立と公立で、これほど違うとは。
私立の小学校に6年通うだけで一千万近くいるのか。
でも、小学校が私立だと、中等部、高等部も同じ流れで動いていく。
さらに塾やお稽古ごとにもお金がかかる。

【おまけ】
おそらく、世の中の悩みの大半はお金で解決可能、と思う。
解決しないのは心の問題。
愛情、宗教…満足も金で買えるかもしれないが、欲望にはきりがない。
ただ、圧倒的な金があれば、ひっくり返る可能性もある。
そこがお金のすごいところ。

【ネット上の紹介】
 自分の「身の丈」を知っていますか?「失敗の淵」に足をかけていませんか?その行動が「貯まらない理由」では?


「ちょっと早めの老い支度」岸本葉子

2017年03月28日 20時55分43秒 | 読書(エッセイ&コラム)


「ちょっと早めの老い支度」岸本葉子

気になるテーマなので読んでみた。
特に、畠中雅子さんとの「住まいとお金」に関する対談が良かった。

どのような高齢者住宅を選ぶか?
P162
暮らしには、その人の何かしらのこだわりがあるものなんです。生活のパターンを崩さなくてもいいかという点を考えておいた方がいいですね。

P166
老後は心配ですが、まず目先の生活を充実させないと。老後だけがよくてもしょうがないですよ。

P171
エンディングノートは二冊用意するといいですね。緊急時の誰にでも見てもらいたいものと、資産関係のものと。奥にしまい込んでしまうと、お葬式が終わったあとに発見されるケースもあって、お葬式によんでほしくなかった人が、たくさん来ていたということもあるんですよ。

【ネット上の】
老後は気になる。でも、身辺整理にはまだ早い。そんな女性たちに送る等身大エッセイ。「モノと収納」「住まいと家事」「健康と食」「人付き合いと防犯」「お金と遺言」などをテーマに、今のうちからできる工夫や、つけておきたい生活習慣が、著者の実体験を通してリアルにまたコミカルに描かれる。対馬ルリ子さんとの「健康」のこと、畠中雅子さんとの「住まいとお金」についての対談も収録。いますぐ「老い支度」を始めたくなる。
1章 モノと収納の話
2章 住まいと家事の話
3章 健康と食の話
4章 人付き合いと防犯の話
5章 お金と遺言の話
6章 これからの話 


「幸せになっちゃ、おしまい」平安寿子

2017年03月23日 20時31分46秒 | 読書(エッセイ&コラム)


「幸せになっちゃ、おしまい」平安寿子

2007.3.8号-2008.5.22号『Hanako』に連載されたエッセイ。

P11
昔、こんな歌があった。
「若いという字は、苦しい字に似ているわ」

P15
 自分だけがいい目を見たいと願ったら、いつまで経っても満たされない。なぜなら、望みは叶えられた途端、望みでなくなるから。幸せも、プーキーが言うように、ピークを過ぎたら下り坂と決まっているものだから。(中略)
 幸せになっちゃ、おしまいよ。
P100
人間関係のコメディを書くというのが、私のメインテーマだ。
 
P165
 学校とか職場とか、人間の集団は「個性を大事に」とか言っておきながら、「協調性」をもっとも要求する。自意識と協調性は相反するもので、そのため大人になればなるほど、みんな孤独になってしまうのだ。

【おまけ】
いつになく、「攻撃的」な文章、という印象を受けた。
何かあったのでしょうか。

【ネット上の紹介】
おとぎ話の決まり文句はみんな嘘っぱち。ほんとうの人生は、「めでたしめでたし」では終わらない。今日も頑張る女子たちに捧ぐ本音勝負の痛快エッセイ。
【目次】
幸せになっちゃ、おしまい(幸せになっちゃ、おしまい
心配しないで、ベイビー ほか)
イギリスのばあさんを目指せ(元祖エレガンスの呪縛
素敵なオペラ座ライフ ほか)
王子さまはお好き?(世界はひとりぼっちで一杯
片思いは報われるか? ほか)
頑張れ、わたし(来るぞ来るぞ。更年期が来るぞ
横もれ問題 ほか)