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「博士の愛した数式」

2006年11月15日 | 音楽・映画レビュー

 一生にどのくらいの映画と出会うことができるだろうか。

 1年に100枚見ても、50年で5000枚にしかならない。何と「持ち時間」が限られていることか。今、DVDになっているものだけでも数万タイトルあり、これからも増え続けるのだから、我々が見ることができるのは、ほんの数パーセントにしかならない。

 良いものを沢山見たいものだが、人はそれぞれ興味も価値観も異なり、よく売れている映画が良いとも限らない。そして、沢山の作品の中からすばらしい映画を探すのもまた楽しみである。

 これから、ぽつぽつ、これまで見て良かったと私が感じた映画について紹介していきたい。同じような興味をお持ちの方がおられたら幸いである。

[私の感想:★★★★-:ぜひ勧めたい!]
 なかなか良い映画である。のんびりと余裕のある日曜日にでも見ていただきたい。「交通事故による傷害のため80分しか記憶がもたない」というのが設定になってる。これは「前向性健忘」 という。そういえば、かなり前にNHKで前向性健忘症のドキュメンタリー番組を見た記憶がある。博士には新しい記憶が残らないため、周りから見れば博士の 時間は止まったかのようであるが、博士から見ると時間が飛んだかのように周りの変化を感じることになるのだろう。博士が記憶できないのは自動車事故後のも のであって、事故前の記憶は通常どおり残っている。だから浅丘ルリ子が演じる婦人の記憶(周りにとっては昔の記憶)は昨日のようにある訳だ。

  前向性健忘に加え、数学という変わったテーマを映画にしている点が極めて面白い。映画では「友愛数」などで登場人物の関係について言及しているが、πei という3のつ不可思議な数が寄り添うと美しい1つの数式(博士が愛した数式)になるというところが含蓄である。寺尾聰と深津絵里それぞれの雰囲気もすばら しい。小泉堯史監督の作品「雨あがる」「阿弥陀堂だより」も見てみたくなった。

 なお、「前向性健忘」を要素にした映画は、他に、ラブ・コメディーの米国映画「50回目のファースト・キス」、サスペンス米国映画「メメント」があるが、これらはかなり雰囲気が異なる。見て比べてみるのも面白いかもしれない。再度紹介予定である。

ぽすれん・レビューAmazon・レビュー
監督:小泉堯史
出演者:寺尾聰、深津絵里、齋藤隆成、吉岡秀隆
Story:
小川洋子のベストセラー小説を小泉尭史監督が映画化。80分しか記憶がもたない天才数学博士の下で働くことになった家政婦とその息子の交流を描いた感動作。圧倒的な存在感と演技力で博士役を演じた寺尾聰をはじめ、深津絵里、吉岡秀隆ら豪華俳優が共演。(博士の愛した数式)