人間らしさ！

　　人間型ロボットは、開幕した愛知万博の注目のひとつ。漫画「鉄腕アトム」でアトムが誕生したのは２００３年だった。手塚治虫氏の空想社会では、すでにロボット時代の到来である。

　子どもを事故で失った科学者が、身代わりに造ったアトム。しかし「お前は人間のように成長しない」。生みの親にいじめられ、捨てられた。人類のために戦いながら、時に人間の愚かさに憤り、ロボットの味方にもなる。

　人間の指示だけで動けば、アトムに葛藤はない。しかし「ぼくに人間の心はあるのか」「正義とは何か」と悩み、傷つきながら、優しい心を宿していく。手塚氏は、ロボットのアトムを通して、人間とはいかなる存在かを問いかけた。

　ロボットが人間らしくなる一方、人間が冷たいロボットと化しているようにも感じる。精神世界の空白。人間が凶器と化した犯罪。家庭内の虐待や殺人。人間的な心を衰退させず、社会に温かな血を通わせたい。

　いったい人間とは何か。正しい人生、幸福とは何か。この難しい命題に悩み、格闘する人生こそ、最も人間らしい生き方ではないだろうか。この葛藤の中に、人間性が培われる。

　ロボット文明の時代にこそ、人間の機械化に歯止めをかける生命哲学が求められる。