天に向かって劉備玄徳は叫んだ。「劉備はきっと、漢の民を興します」。小説『三国志』(吉川英治作)の冒頭である。
漢王朝の血を引く主人公の玄徳は、理想主義者である。民衆に根ざした政治を夢見るが、優柔不断な性格で、乱世に打って出る心が弱い。織物の商いで細々と暮らす日々。
盟友の誓いを交わす張飛、関羽も、完全無欠ではない。張飛は、生命力の強い豪傑だが、軽薄で荒っぽい。関羽も信義に厚いが、真面目な性格から損をすることもあり、寺子屋の学者に甘んじていた。
弱点も多く、乱世に埋もれていた彼らが、なぜ英傑として名を残したのか。「互いの短所を知って、補いあっていけたから団結できたのだ」――戸田先生の『三国志』論である。
別々に生きていれば、ただの夢想家、暴れ者、学者で一生を終えたかもしれない3人。結束することで「高い理想」に、「攻撃精神」や「勇気」が加わり、玄徳の陣営は民衆の熱い支持を浴びた。
団結は力である。頭で分かっていても、直せない短所を補ってくれるのが、真の同志。その結びつきの中で、互いの長所がさらに高められ、一人ひとりが、乱世を勝ち抜く勇者に磨かれていく。
一人一人は欠点があっても、互いに団結すれば、欠点が長所に変わる。
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