現存する木造建築で世界最古とされる法隆寺の五重塔。
名もなき匠たちが心血を注いだ技と知恵の結晶だ。
その改修に携わる宮大工の世界には代々伝わる口伝があるという
▼その一つが「用材は木を買わず山を買え」。
山の中腹以上の木は風雨に当たるので強い。
栄養分が豊かな谷の木は太いが柔らかい。
育った場所まで知らなければ、真に木を生かして使うことはできないとの意昧だ。
また「木組みは木の癖で組め」。
強い風が枝に当たり続ければ、幹はねじれて「癖」がつく。
癖のある木は厄介だが、素直な木より強い。
だから右にねじれた部材は、左にねじれたものと組み合わせれば、強靱なカが生まれる。
その癖をいかに見抜くかが重要だ(『木のいのち木のこころ〈天〉』西岡常一著)
▼ 人間の性格や才能もまた千差万別だ。
型にはめたところで本来のカは出まい。
一人の人をどこまで知ることができるか。
短所を包み込んだ上で、いかに長所や美点を生かしていけるか。
リーダーがこの一点に心を砕いてこそ、後輩は伸び伸びと成長できる
▼ 仏法では、生命の限りない可能性を説く。
その人間に秘められたカを信じ抜くのが仏法のリーダーである。
友の心を開き、伸ばす誠実の対話から始めたい。(己)
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