音盤工房

活字中毒&ベルボトムガール音楽漂流記

最晩年に甦った神様

2008年12月14日 | インポート

Muddy_waters2  ミック・ジャガーとキース・リチャーズが同じバンドのメンバーになる切っ掛けを作ったのは、チャック・ベリーやマディ・ウォーターズのLPレコードだった。彼らがローリング・ストーンズを結成し、翌年、チャック・ベリーの「カム・オン」でデビューを飾った1963年に僕は生を受けた。ローリング・ストーンズの名付け親だったブライアン・ジョーンズはメンバーから解雇を言い渡されその後、謎の死を遂げてしまったが、彼が愛したローリング・ストーンズは今も尚元気に活動を続けている。

 「ローリン・ストーン」。

 マディのこの曲名を捩ってバンド名にしたのは全くの偶然だった。当時はバンドの中心人物だったブライアンがギグに出る為に偶々傍にあったマディ・ウォーターズのLPレコードから苦し紛れに名付けた名前だったのだ。当時イギリスには白人の品の良いポップスソングが流行していた。イギリスの若者はもっと粗雑でワイルドな音楽に飢えていた。そんな渇望が生んだロックバンドがイギリスを席巻するのにさほど時間はかからなかった。そうやってブルースやロックンロールフリークが集まって出来たイギリスのバンドの中ではローリング・ストーンズも数多いるカヴァーバンドのひとつに過ぎなかった。それが今や世界的なロックンロールバンドになっている。初めは趣味の域を出なかったものが、その内、思わぬ反響とともに身辺が激変していく。しかし、アメリカに渉り、イギリスと同じ歓迎を受けるものと思った思惑が粉々に打ち砕かれ、それがやがて反骨精神となって音楽に反映されていく。彼らを虚仮にしたという事は、同時に彼らが愛していた音楽をも愚弄しているようなものだ。彼らの音楽の芯がぶれなかったのは、今でも心からブルースを愛している証拠だし、この時の苦い想い出があるからだと思う。

ベスト・オブ・マディ・ウォーターズ +8 ベスト・オブ・マディ・ウォーターズ +8
価格:¥ 2,039(税込)
発売日:2001-08-22

 僕は1980年代の半ばから1990年の初め頃まで頻繁にブルースのアルバムを収集し始める。初めて買ったマディ・ウォーターズのアルバムは『ベスト・オブ・マディ・ウォーターズ』だった。彼はストーンズを介して知ったブルースマンであったけれど、それまで一度もマディ自らの曲は聴いたことがなかった。当時マディ・ウォーターズについてはブルースにエレキを最初に導入した革命者という、眼で読んだ知識しか知らなく、それは殆ど知らないのと同じだった。初めて聴いたマディ・ウォーターズの第一印象は、ブルースというより、ロックそのものだった。それからしばらく書物でブルースのことを調べ始め、ブルースがロックの源流の頂点にある事を知り、いわばロックの親玉みたいなものだという事が判った。でも原曲がこれ程シンプルだとは驚きだった。演奏が淡白であるからマディのヴォーカルが際立っているような…。だから、晩年、マディが「泥水」から「聖水」になったと酷評された事が僕は理解できなかった。 

 ジョニー・ウインターがマディをプロデュースした最晩年のブルースカイレーベル時代は、まるで最後の生の焔をめらめらと燃やすような時間だったに違いない。さすがに演奏のほうは全盛期の冴えはなかったけれど、ジョニー・ウインターの好サポートにより完全に甦ったマディの姿があった。

 僕はマディの『アイム・レディ』を聴いている。僕が映像で初めて観るマディよりもすこし前のマディの切れ味鋭い歌声が録音されている一枚である。始めてみたマディはストーンズのメンバー達と「マニッシュ・ボーイ」をジャムっていた。仏陀のように椅子にどっかりと坐って、その姿は威厳たっぷりに見えた。ストーンズのメンバーはあともう少しでマディが逝った年齢に届こうとしている。でも『SHINE A LIGHT』を観る限り、彼らはマディよりもずっと長生きしそうな気がしている。ひょっとしたらマディが「まだ来なくていいよ。もっとそっちで頑張ってな」と下界を見下ろして笑っているような気もする。

アイム・レディ アイム・レディ
価格:¥ 1,785(税込)
発売日:2004-07-22

-収録曲-

  1. I'M READY
  2. 33 YEARS
  3. WHO DO YOU TRUST
  4. COPPER BROWN
  5. I'M YOUR HOOCHIE COOCHIE MAN
  6. MAMIE
  7. ROCK ME
  8. SCREAMIN' AND CRYIN'
  9. GOOD MORNING LITTLE SCHOOL GIRL
  10. NO ESCAPE FROM THE BLUES
  11. THAT'S ALRIGHT
  12. LONELY MAN BLUES

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2 コメント

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ローリング・ストーンズはスキでした。 (カキちゃん♪)
2008-12-17 12:24:42
ローリング・ストーンズはスキでした。
でも、こんなに詳しく彼らの歴史を知りませんでした。
中学当時の私はデヴィッド・ボウイーがとりわけスキで、日本のアイドル達に熱をあげていたクラメイト達に「変な趣味」と見られていたのを思い出します。
ミック・ジャガーとデヴィッド・ボウイーは、確か随分仲が良かったと記憶しています。
ところで・・・・・・・・活字中毒さんが、わたしと一つ違いだと判明しました・・・ぎゃはは・・・!!(^Q^)/^ 
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こんにちは、夏姫さん♪ (活字中毒)
2008-12-18 15:07:13
こんにちは、夏姫さん♪
ストーンズのファンには美人が多いと聞きましたが、納得です!ミック・ジャガーも一時期中性的な魅力を発散していたので、デヴィッド・ボウイと互いに吸引しあったんでしょうか。そういえばふたりが競演したライヴエイドの作品「ダンシング・イン・ザ・ストリート」はよかったですよね。ほんとうに同世代の方とこんなふうな遣り取りができるのはある意味感動でウォッシュ!…じゃなかったウィッシュ! 使い慣れない流行語は使わない方が賢明ですね(汗)。
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