音盤工房

活字中毒&ベルボトムガール音楽漂流記

走れ何処までも

2008年12月19日 | インポート

 特に今夜は書きたい音楽ネタもないので、先日行われた大阪市なんばグランド花月での間寛平さんの「アースマラソン」出発式を、実況風景をまじえながら僕なりの感想を述べたいと思う。アースマラソン……初めて彼の口からこの言葉をきいた時、それが何を意味するのか俄かには理解できなかった。それが二年半をかけた世界一周走破と知った時、なんてナンセンスな企画なんだと思った。間寛平さんについてはこれまでから芸能界きっての脚力を活かしたマラソンや鉄人レースへの参加と年齢のわりに元気な姿にいつも驚かせられていたけれど、今回ほど驚かされた事はなかった。勿論人類初の試みだし、マラソン2万キロ、ヨット1万6千キロは前代未聞の構想だ。

 正直なところ、僕は間寛平さんについては芸人として評価を低く見ていた。子供の頃から吉本新喜劇や「あっちこっち丁稚」で観させていただいていたけれど、決して巧い芸人さんだなぁと思った事は一度もなかった。お笑いは嫌いではなかったけれど、僕が好きなのは落語や漫才。いとこい、やすきよ、Wヤングはいつも巧いなぁと思いながら楽しい時間を過ごさせて貰っていたけれど、基本的に僕はコントはお笑いとして認めていないようなところがあった。かくべつ間寛平さんが演じる「元気過ぎる」お爺さんには違和感を覚えたし、失笑を買う為の奇抜なメイクにも違和感を感じていた。彼はおそらく芸人として自信がないのだ。それをカヴァーする為にあんなメイクを施したり、滑稽な動きで笑いを誘おうとしている、と僕の眼には映ってしまった。芸歴で言えば島田紳助さんや明石家さんまさんに引けを取らない筈なのに、司会業は皆無、レギュラー番組はあるものの、若い芸人に混じってとても大御所とは思えないバカをやっている。もしかしたら芸人としては、僕達が評価を下すまでもなく、間寛平さん自身がその実力を一番良くわかっているのかもしれない。けれどある時、24時間テレビで走っている間寛平さんをみた時、思わず僕は感動で年甲斐もなく涙を流してしまった。「元気」を売り物にしている芸人さんは他にもいるのかもしれないけれど、間寛平さんのレベルはちょっと格違いなようにも見えた。

 芸人として笑わせるだけが能じゃない。それが長い芸能生活で間寛平さんが到達した答えではなかろうか。イベントにはロックミュージシャンの忌野清志郎さんが寛平さんの為に作った「走れ何処までも」がビデオメッセージと共に流された。ついにスタートが切られたアースマラソンはおそらく人類史上最大のパフォーマンスになる。それは同時に芸人・間寛平が仕掛けた途轍もないプロジェクトであり、不器用な彼流の表現方法であったのだろう。芸人魂ここにあり。いろんな芸人さんを見てきたけれど、これほど人に愛され、人を惹き付けてやまない芸人さんは僕の記憶にはない。まさに関西の誇り、芸人の誇りなのである。


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2 コメント

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こんばんわ。間寛平、スゴすぎですね。もっとニュ... ()
2008-12-21 23:37:17
こんばんわ。間寛平、スゴすぎですね。もっとニュースなんかで大きく採り上げられてもいいと思うけど・・・それにしても壮大なロマンです。ハイ。

そうです、そうです。間寛平、芸人としての資質はというと、?ですよね。ナンセンスなギャグでここまでよく残ったもんです。最近の若手お笑いなんて学生のコンパ芸程度のものばかりで、いらゆる寛平タイプの芸人ばかりですよね。当然、長続きはしないわけで・・・それでも間寛平がここまで支持され続ける理由はおっしゃる通り、彼の人徳でしょうね。

「復活の日」って映画で、ほぼ絶滅した人類で生き残った草刈正雄がワシントンから南極大陸まで数年がかりで歩いて横断していくシーンがあって、「ありえない」って思っていたんだけど、今回の間寛平のチャレンジであのシーンにも納得したような・・・それにしても草刈正雄以上の挑戦ですね。(笑)太平洋ヨット横断が一番やっかいで危険かもですね。ドキュメンタリー映画化希望!
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学生のコンパ程度とはまた痛いとこつきますね、鷹... (活字中毒)
2008-12-23 23:09:46
学生のコンパ程度とはまた痛いとこつきますね、鷹さん(笑)。それにしても世界一周走破とはだいそれた発想をするもんです。このあたりはまさに人間ばなれしているとしか言えません(笑)。おそらく映画化されなくとも、なんらかの形で番組にしようと各テレビ局が手ぐすね引いているかも知れませんね。寛平さんにとっては芸人としての集大成になる筈ですから。
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