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読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

武家草鞋(ぶけわらじ)

2008年10月12日 07時08分39秒 | ■聴く
山本周五郎著、新潮カセットブック発行。『「自分だけが常に正しい」と信じて疑わない武士宗方伝三郎。その独善的な正義感ゆえに伝三郎の放浪生活が始まる。-世間は卑俗だ。しかし、その世間を許さぬ自分の偏狭さが自分を苦しめているのではないか-そう気付いた時、伝三郎の作った草鞋が思わぬ朗報を運んできた。周五郎”武家もの”の傑作。』と、紹介されています。
山本さんの作品は、岡場所ものや武家ものなど、いくつかの類型があります。また、「赤ひげ診療譚」など、多くの作品が映画やテレビドラマの原作として取り上げられて来ました。私は、二十歳前後、30代前半、40歳頃の三度、山本さんの作品を読み返しました。大抵の小説は、年齢によって読まなくなることがほとんどですが、山本さんの作品は例外でした。何度読んでも新たな発見があります。その年齢に応じた解釈や感動がありました。多くの作品の中で「その木戸を通って」、「やぶからし」などは、何ともやるせない読後感があり好きです。
URL => http://homepage3.nifty.com/yamashu-kan/index.html
本作品は、そうした山本さんの作品の中でテーマとなっている、人が「世間」という生きて行くことの意味を問うています。信念が人の心を縛り、その生き方を狭めている様を描いていて胸が苦しくなります。確かに、一家を成すには、世間一般の常識からずれた生き方が必要なのかもしれませんが、一方で、その信念が本人や周囲の人たちを苦しめることも多いようです。
こうした、「思い込み」が、人を美しく彩っている作品もあります。(「おたふく)などがその例です)だから、山本さんは「信念」や「思い込み」そのものを否定しているのではないのだと思います。もしかしたら、その差は極僅かなのかもしれません。そして、本質的に、決定的な違いは、多分『滅私』なのではないでしょうか?
山本さんは、1903年生まれで1967年に亡くなっています。没後41年ですが、書店には未だに新刊が結構多く置かれています。それを目にする度に、うれしくなります。
評価は4です。
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