読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

日本のたくみ

2009年09月23日 07時43分43秒 | ■読む
白洲正子著、新潮文庫刊
陶器が好きであったので、北大路魯山人の著作や伝記、民芸運動の本を読んでいるうちに、白洲正子さんの名前が何度か出てきました。また吉田茂さんの片腕となり戦後の日本の代表となって活躍した、夫君の白洲次郎さんの名前も知りました。そうした、長年の知識で、白洲正子さんに興味を持ち、後に、伝記を読みました。
下のURLにあるように、白洲正子は華族の家に生まれ、祖父に非常に愛され、すくすくと成長しました。性格は非常に活発的で、恐れを知らないようです。後に青山次郎氏に師事し、骨董への造詣を深めます。その生き方は、意志的で妥協を知らないようであったと思います。
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URL => http://ja.wikipedia.org/wiki/白洲正子
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夫君の白洲次郎氏も、同様に恵まれた出自で、イギリスに留学し、彼の地でスポーツカーを乗り回すほどのダンディー振りであったとのことです。ご夫婦は、誠に釣り合いが取れたカップルであって、互いの世界を尊重して、それぞれの生き方を極めたのであろうと思います。
さて、本書は、昭和59年に刊行され、平成17年に、第8刷として印刷されたものです。写真のごとく、表紙の印象は少しぼやけた感じがして、古い本に見えるのですが、中央の帯状の文様の上下には、非常に薄い色の文様が印刷されています。そのため、年月を経て黄ばんでいるように見えますが、これは、作者の後記で記されている、取材を願いながら同意を得られなかった「K」という職人の作品なのです。後記の中で作者はK氏を表して「・・・加賀友禅でも、更紗でも、筒書き(紙の筒に糊を入れて、細い線を描く手法)でも、染めものの技術に関するかぎり、彼の右に出る作家も職人も現代にはいない。」と断定しています。
扇、染色、石工、陶工、塗り士、砥石、有道杓子、黄楊の櫛、偽物作家、生花師、照明芸術家など18人の方々を紹介しており、白洲さんならではの観察や感想が丁寧に述べられています。本作の時点で、70歳半ばであったはずですが、それぞれの職人や作家に対する尊敬と愛情が通底しており、気持ち良く読める作品です。
評価は4です。

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