読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

色弱が世界を変える

2011年07月12日 17時49分56秒 | ■読む
伊賀公一著、太田出版刊
小学校に入学する前の健康診断でのこと。今も鮮明に覚えています。白い真新しい校舎はまだ完成しておらず、私は母に手を引かれ、木製の渡り板のようなものを上って校舎の中に入りました。恐らく体重や身長も測ったのでしょうが、今もはっきり記憶しているのは、知らない人から本のようなものを見せられ、そこには様々な色の付いた円が描かれていました。その中に数字が浮かび上がっているので、それを答えるというものです。最初の1つか2つめかは簡単に分かったのですが、その次のものがさっぱり分かりません。答えないでいると、検査の人が母に何か言っていました。
後日、私が赤緑色弱という視覚異常であることを聞かされました。幼い私は「???」。そして、2年生か3年生の時に、母が担任の先生から、絵を描く時に少し色遣いが変だ、と聞かされたそうです。それでも私は「???」。
次は大学受験の際、理系に進学する際、化学、電気系は色弱だと受験出来ないことうを知りました。電子工学系が一般化していなく、メカトロニクスという程度の認識の時代だったので、そうしたこだわりが無く、気にすることもなく進学。その後も特段生活に支障なく生きて来ました。しかし、心の何処かで、自分が他の人と違った色彩世界で生きているのだという意識がずっとありました。そんな訳で本書を手にしました。
著者自身は、私よりも強度の色弱で、より判別しにくいようです。作中、野菜の色合いが緑か赤であるかを区別する必要があるのに分からないで困った、というエピソードがありましたが、私の場合は、そんなことはないので。
そんな著者は、科学少年(私もそうでしたし、年齢も1歳違いです)で、理系への進学を望んでいながら、結局、一浪して文系(早稲田大学)に進学します。(私が進学出来たのは何故でしょうか???)そして、在学中に様々な経験をし、幾つかの職業を経験した後、人生の節目節目で体験したことが相俟って、CUD(カラー・ユニバーサル・デザイン)に携わることになったのでした。
本書での収穫は、日本人の男性の20人に一人は色弱者で女性にも500人に一人の割合でいることを知りました。また。進化の過程では虫類や鳥類が4色覚であったのが、ほ乳類に進化した際に2色覚になり、更に、人間を含む猿系の生物の一部が3色覚になったのだそうです。
更には、現在ではパソコンで、色弱者の色の見え方をシュミレーションするソフトがあることもしりました。色弱の種類や程度も様々であり、それ以外に、病気によって後天的に色覚に異常が発生して、日常の身の回りで色の判別が困難な方もいるとのことです。だから、信号機やハザードマップなど、生命の安全にCUDが是非とも必要です。また、黒板(実は緑色)に赤のチョークで書くと、赤緑色弱の程度の強い人はほとんど見えないとのことです。(私の場合は、見えにくいながら判読出来ますが)
他にも実例が非常に多く書かれていますが、私の場合は、地下鉄の路線図以外は、同じ経験をしたことがありません。地下鉄の路線図は、見辛いです。
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URL => http://www.adobe.com/jp/joc/pscs4/showcase/vol02/
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色弱である私ですら知らない世界が本書には、分かり易く豊富に紹介されています。一読をお薦めしたい良書です。
評価は4です。

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