風 信(かぜのたより)

海風に乗せて

釜屋の芸者さん

2011-07-23 | Weblog
「Inachis io geisha」、クジャクチョウの学名です。
「geisha」は東アジア産の亜種名。
読みのとおり芸者で、翅表の派手な目玉模様から名づけられたようです。

クジャクチョウはタテハチョウの一種で、
ヨーロッパから東アジアまでユーラシア北部に分布する北方系の蝶です。
日本では北海道から本州中部に分布し滋賀県の伊吹山が南(西)限といわれています。
本州中部ではけっこう標高の高い山地で見ることができます。


クジャクチョウ 11.7.22 兵庫県新温泉町釜屋

このクジャクチョウ、
分布範囲から外れた兵庫県北西部にいたんですね。
5月の北海道では平地から山の中まで、
あっちにもこっちにもたくさんいたので麻痺してしまっていましたが、
西日本で見ることはとっても珍しいことだと思います。
ということで、早めに報告しておきます。

確認した場所は兵庫県美方郡新温泉町釜屋(釜屋橋東詰南側)、
日時は2011年7月22日16時54分です。
確認頭数は1頭(雌雄については不明)。

    
    クジャクチョウ 11.7.22 兵庫県新温泉町釜屋


クジャクチョウ 11.7.22 兵庫県新温泉町釜屋

ところで、松岡嘉之さんが2009年に著された
『新大山の蝶-変わる自然環境の中で-』によれば、
2006年9月8日に大山桝水原で観察された例が鳥取県では2例目とのことです。

新温泉町釜屋は鳥取県境から直線で4、5kmしか離れていないので、
今日あたりは県境を越えて東浜くらいまで飛んできてるかも・・・。
そしたら、鳥取県で3例目の記録ですね(笑)。

冗談はさておき、
2006年の桝水原で観察された時も台風通過後だったようで、
松岡さんは信州産か韓国産の迷蝶ではと考えられておられるようです。

今回の記録も台風6号の通過後ですので、
台風によって運ばれてきた迷蝶だろうと思います。

台風の風は反時計回りになるので、
伊吹山以北(東)のクジャクチョウが台風の接近による南や東の風で吹き上げられ、
台風通過後の北風によって釜屋まで運ばれたのではないでしょうか?
でも、台風で遠くに飛ばされた個体でもあんまりボロになってませんね。

北海道でも比較的破損してない越冬個体が多かったので、
クジャクチョウは元々破損に強い翅を持っているのかも知れません。

それにしても、どこから飛んできたんでしょう。
伊吹山の個体数や生息密度はどうなんでしょうね。
北陸の白山ならたくさんいそうなので、
ちょっと前までは白山の芸者さんだったのかも知れませんね(笑)。


新温泉町釜屋地区 11.7.22