カレーなる日々 / शानदार दिन

インドの日常を中心に日々を綴っています。

「昭和の戦争Ⅳ」吉村昭

2024年08月25日 21時27分59秒 | 本 / BOOKS

吉村昭の昭和の戦争シリーズの第4巻目。

1巻目が戦闘機の話、2巻目が戦艦の話、3巻目は潜水艦の話、
4巻目のタイトルは「彼らだけの戦場が」。
収められているのは「逃亡 、背中の勲章、珊瑚礁 」
彼らと言うのは脱走兵と捕虜の事で、背中の勲章は水兵、
珊瑚礁はサイパンの住民が主人公であった。

厳しい訓練や規律から脱走する兵士もいただろうけど、
「逃亡」の主人公はスパイと思われる親切な男にまんまと騙され、
落下傘を盗み出し、その上、飛行機を爆破させた兵士の話。
捕まれば銃殺刑になるという恐怖から、
偽名を使い別人に成りすまし、
タコ部屋と呼ばれる非人道的な労働現場で働き、
終戦を迎えて生還した男の話には驚いた。

脱走兵と言う事でずっと秘密にしてきた男の人生が、
吉村氏への一本の密告電話から暴かれて行く。
男は吉村氏の訪問に悩んだが話す事で背負ってきた重荷を下ろす。

「背中の勲章」は沈没した船から敵方に救助され、
捕虜になるのは恥と教えられ、そう思っていた男が捕虜として生きる。
収容所にはたくさんの捕虜がおり、日に日に増えて行く。
捕虜になるより自決と教えられていた兵が生きる事で、
お国に協力できる日がやって来ると思いなおして生きる。
いろいろな収容所を転々としながら終戦を迎え帰国する。
背中にPXと書かれていたところから背中の勲章と言うタイトルに。

「珊瑚礁」は沖縄かと思ったらサイパンに移住した日本人家族の話。
兵士ではなく住民の視点から、アメリカ兵の上陸により、
島中を逃げまどい投降し捕虜になる。収容所での生活を当時9歳の少年の
視点から書いている。

脱走兵も命がけだった事、捕虜は尋問はされるが、
脱走しなければ殺される事はなかったと言う事、
兵士も非戦闘員もそれぞれの戦争を生きてきた事が興味深かった。

コメント
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