すんけい ぶろぐ

雑感や書評など

今敏「パプリカ」

2007-08-17 20:16:25 | 映画評
おもしろいんだけどなぁ。社会現象を巻き起こせるような名作をつくる能力はあるんだろうけど……………。ほんと、残念だよな。


今敏「パプリカ」を見ました。


今敏と言えば「PERFECT BLUE」「千年女優」「TOKYO GODFATHERS <東京ゴッドファーザーズ>」等々の、佳作アニメ映画をつくっている監督。(パプリカ 公式サイト)

本当にバランスのとれた監督で、どれを見ても、ある一定の水準(しかもかなりの高水準)を絶対にクリアーして、失敗作がありません。(「妄想代理人」もレベルが低いわけじゃなかったけど、あんまり好きじゃないなぁ)


……………が、この監督。

頭は切れる。その切れる頭を映像に具現化する才能もある。
さらに、その才能が過剰に暴走して作品が独りよがりにならないようにする、類まれなる厳格な性格も有している。

はっきり言いまして、「有能」。


……………が、この監督。

「天才」ではない。

作品に情念…………と言うか怨念がこもらないんだよね。

村上春樹なんかも、頭の切れと、それを使い切る才能、さらには自分の作品を冷静に眺めることのできる性格を有した、作家だと思う。

が、彼には、さらなる怨念がある。

この怨念が作品に宿ると、なんとも言えない凄味が作品に出るんだよね。


今敏は、これがない。……………それは、非難すべきことじゃないんだろうけど。

ただ、作品に凄味がでないんだよね。だから、単純な娯楽作品の枠を出ないんだよね。

「難解で独りよがり、芸術家気取りの作品より、単純明快でみんなが楽しめる作品の方が、いいに決まってるだろ!」
と言われそうですが。


今回の「パプリカ」も、素晴らしい独創性と完成度です。

「TOKYO GODFATHERS」は、いまいちアニメでやる必要性というものを感じませんでしたが(つまんないわけじゃないよ)、今作は、まさしくアニメでなければできない物語でした。

ちょっと難解だけどね。

最初から最後まで、「次はどうなる?」というワクワク感をずっと抱ける、見事な映画でした。


パプリカ

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

このアイテムの詳細を見る