気になったニュース
最近,新聞とテレビでそれぞれ報道されたニュースで,気にかかったのが二つあった。
一つは,2月28日の朝日新聞に載っていた。ロシアのウクライナ侵攻によって,国際協力による科学研究に影響が出ていることが書かれていた。
いずれも重要な問題だが,わたしが特に気になったのは,ロシアとベラルーシの研究者との連名の学術論文が学会誌への投稿が見送られているという報告である。
スイスにある素粒子研究の国際拠点「欧州合同原子核研究機関(CERN)」では,ロシアの共同研究者の名前のある論文の投稿に反対あるいは慎重な意見が出たために,250本以上の論文が,学術誌に載らない状態にあるという。
CERNでは,関係者の間の検討の結果,ロシアとベラルーシの研究者の所属機関を明示しないで投稿するという妥協案が成立したとのことである。
わたしは,研究が多国籍の研究者の協同で行われ,結果が得られたならば,所属機関も含めてすべての共同研究者の名前を明示した論文として発表するべきであると考える。
このことについては,昨年の7月6日のブログに書いた記事が関係しているので,抜粋して再掲する。
「今日の朝日新聞13面に,ロシア文学者の上田洋子さんの談話が載っている。
上田さんは,(中略)ロシアのウクライナ侵攻に大きなショックを受けた。日本人のロシア研究者で,「外国エージェント」と,名指しで入国を拒否される人がいるのを見て,自分自身も「もうロシアには行けない」と覚悟を決めている。そうしなければ何か言うことをためらってしまうという。両国にかかわるものとして,ロシアとウクライナ双方の友人に,思っていることをちゃんと伝えることが使命だと考えている。
(中略)
交流を絶ってしまうと,互いに恨みを持ち続け,それぞれがそれぞれの中でモンスター化してしまう。(後略)」
最後の言葉が特に重要である。戦争はいろいろな形での分断をもたらす。しかし,それを乗り越えて互いに関係を保持することは重要である。
以前,国際学会の懇親会の席で,中国大陸からと台湾からのグループが近くに来て,どちらからともなく一緒になり,にこやかに談笑を始めたのを見た。政治的断絶はあっても,同胞的な人々のつながりは断ち切られていないのだ。心温まる情景だった。
もう一つは,テレビのニュースで観たことだが,ラトビアに暮らすロシア系の女性が,学校の授業からロシア語がなくなったことに不安を訴えていた。彼女はロシアのウクライナ侵攻に反対であるが,ロシア語を話すことに白い目を向けられ,祖国の文化を子供たちに伝えられなくなることを嘆いていた。
わたしは戦争中の日本を思い出した。英語は敵性言語として排除され,スポーツの用語まで日本語に直された。「ストライク」は「よし」。「ボール」は「だめ」だった。
言語は文化の窓である。お互いの文化は尊重し合わなければならない。戦争がそれを分断するならば,当事国のいろいろなレベルで,文化的なつながりを保持し,交流しようと努力することは,困難であるかもしれないが,平和へ導く一筋の道ではないだろうか。
甘っちょろいと笑われるかもしれないが,わたしはそうなることを願いたい。
STOP WAR!
分断のない平和な世界を切に願っています‼︎