映画音楽「妖怪大戦争」 “Yokai Monsters: Spook Warfare” 池野成 / 藤田崇文 (解説:藤田崇文)

2024-01-05 | 解説(音楽解説・曲目解説)
映画音楽「妖怪大戦争」 “Yokai Monsters: Spook Warfare”
■音楽:池野成 (Sei Ikeno) [1931年2月24日 - 2004年8月13日] 
■映画音楽演奏会用編曲スコア 2006(構成・編曲:藤田崇文)
監督:黒田義之 / 公開1968.12.14 / 製作会社=配給:大映京都=大映 カラー 79分

 江戸時代の日本を征服しようと、4000年の眠りから覚めた吸血妖怪ダイモンがバビロニアの古都ウル遺跡から日本に襲来する。河童、雲外鏡、轆轤首らの日本古来の妖怪たちは日本の平和を守るために一致団結、総力を挙げてダイモン討伐に乗り出していく。日本妖怪連合軍 vs. 極悪妖怪ダイモンのスペクタクル映画。1960年代末に空前の妖怪ブームを生み出した大映京都撮影所の妖怪シリーズ第2弾である。
 音楽は池野成が担当した。池野は生前、映画音楽を200作ほど担当し、映画を音楽面から支えた作曲家の一人である。池野死去後、弟子や仲間たちが池野の追悼演奏会を開こうと企図し、残されたオリジナルスコアを吟味していった。演奏曲候補に「妖怪大戦争」が上がった。ところが、オリジナルスコアは劇伴音楽ゆえに映像優先に音が書き加えられていたり、画に合わせるために音を差し込んでいたりするために断片的で数秒の効果音的な音楽で占められていた。旋律を奏でるテーマ音楽もなく、数秒間の音楽を数曲演奏することに聴衆への説得性に不安が残った。結果、映画音楽演奏会用に筆者が構成と編曲を担当することになり、2006年11月23日に開催された「池野成メモリアルコンサート(晴海・第一生命ホール」で披露された作品がこの「妖怪大戦争」である。
 映画に登場するシーンとともに、11章からなるオーケストラ組曲に仕上げ、オーケストレーションや曲の長さも演奏会用にかなり大胆に拡大した。オリジナルスコアにある池野独特のトーン・クラスターや強迫する金管楽器、打楽器の音圧による狙いや仕掛けを探りながら意図を心得、全体構想も尊重した。映画の進行に従った構成を採り『1.バビロニアの魔性出現/2.「ダイモン」メインテーマ/3.決闘シーン/4.河童対ダイモン/5.間奏部/6.ダイモン復活/7.妖術、火焔攻撃/8.日本妖怪連合軍大集結/9.水軍空軍参上、大戦争シーン/10.日本妖怪の勝利/11.平和』とし、平穏の訪れを告げて終曲へ至り、約10分の楽曲として完成した。弦楽器の切迫感、トロンボーンのグリッサンドや連打するティンパニが聴きどころとなる。

<楽譜管理:東京音楽大学(オリジナルスコア1968)/ 映画音楽演奏会用編曲スコア2006(藤田崇文蔵書)


▶︎ CD発売:キングレコード:シンフォニック・フィルム・スペクタキュラー 12
King Records,The Greatest Japanese Film Scores SYMPHONIC FILM SPECTACULAR 12

▶︎ 日本映画音楽の巨匠たち 企画監修・解説とエピソード:藤田 崇文
The Greatest Japanese Film Scores: Planning supervision(Takafumi Fujita)





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