映画音楽「東京物語」“Tokyo Story”  斎藤高順(解説:藤田崇文)

2024-01-29 | 解説(音楽解説・曲目解説)
「東京物語」 テーマ(主題曲)  ノクターン(夜想曲)
“Tokyo Story” - Theme, Nocturne
■斎藤高順 (Takanobu Saito) [ 1924年12月8日 - 2004年4月11日] 

映画オリジナルスコア使用
監督:小津安二郎 / 公開1953.11.3 / 製作会社=配給:松竹大船=松竹 モノクロ 135分


 名匠・小津安二郎の代表作のひとつであり、日本映画史に輝き続ける不朽の名作。東京で暮らす子どもたちを訪ねた老夫婦の姿を通し、戦後日本における家族関係の変化を細やかに捉えていく。何気ない言動が教える各人の生活、思いがけない心情の吐露と発見。そして何事もなかったような人生の悲哀と深淵が見事に描かれる。ラスト近く、ひとり残された夫が静かに海を見つめているシーンが胸に滲み込む。
 斎藤高順は、この「東京物語」で家族愛のテーマを味わい深く引き出している。斎藤自身の解説には、テーマ(主題曲)は『老夫婦が成人した子供達を喜ぶ一方、世代の違いから実は取り残されていることに気づき、わびしい気持ちになるという全体のテーマを表現した』と語り、2曲目のノクターン(夜想曲)は『老母が今はなき息子の嫁を訪ね、お互いに温い心が通い合って涙ぐむという美しいシーンでバックに流れる』と語っている。
 斎藤は小津映画で第1作目の「東京物語」をはじめ「早春」「東京暮色」「彼岸花」「浮草」「秋日和」「秋刀魚の味」の7作品を残しているが、映画音楽作家の他、航空中央音楽隊の招聘により隊長を務めた時期もある。中でも「ブルー・インパルス」は、F86Fアクロバットチームの壮大な飛行情景を作曲し、ボサノバのリズムとシンコペーションの多用により、これまでのマーチの概念を破った作品として注目された。映画のシーンや情景を色彩感豊かに表現する作品が豊富にある。現在は、次男の斎藤民夫氏が自筆譜等を管理・保管し、その協力により録音に辿り着くことができた。

<楽譜管理:斎藤民夫(サイト&アート・デジタルアーカイブス) / 松竹音楽出版>


▶︎ CD発売:キングレコード:シンフォニック・フィルム・スペクタキュラー 12
King Records,The Greatest Japanese Film Scores SYMPHONIC FILM SPECTACULAR 12

▶︎ 日本映画音楽の巨匠たち 企画監修・解説とエピソード:藤田 崇文
The Greatest Japanese Film Scores: Planning supervision(Takafumi Fujita)


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