「男はつらいよ」(1969) メインタイトル(オープニング)
“Tora-san” (1969 ) - Main theme
■山本直純 (Naozumi Yamamoto) [1932年12月16日 – 2002年6月18日]
映画オリジナルスコア1969「第1作」 & 映画音楽演奏会用編曲スコア(編曲:山本直純)
監督:山田洋次 / 公開1969.8.27 / 製作会社=配給:松竹=松竹 カラー 91分
渥美清主演、山田洋次原作(脚本も)・監督の人情喜劇映画。車寅次郎は、“フーテンの寅”と呼ばれる香具師で、父親と喧嘩してとびだした中学の時以来、ヒョッコリ故郷の葛飾柴又に帰ってきては何かと大騒動を起こす。毎回、旅先で出会う「マドンナ」に惚れつつも失恋し、成就しないが、「寅さん名セリフ」に彩られた寅次郎の恋愛模様とともに、日本各地の美しい風景も描かれる。
音楽は1969年の第1作より山本直純が担当した。すでに歌唱者の渥美清が死去していることから、「そのままの再現」は不可能であるため、「歌なし」オーケストラ・バージョンでの録音方法をスタッフ仲間と練った。その中、やはり第1作目のスコアにこだわりたく、山本家より特別に1969年「蔵出しスコア」を拝借した。そして、作曲者自身が編曲した、歌なしの映画音楽演奏会用編曲スコア(パート譜あり)との比較研究を綿密に行った。演奏会用編曲は豪華なオーケストレーションで書かれているものの、スコア対パート譜面に楽器追加や削り落としが随所にあって整理が不明であったため、思い切って1969年スコアにあるアコーディオン、ギターを配置し、歌部分はヴァイオリン・ソロとトランペット・ソロに演奏会用編曲スコアを重ね、「葛飾柴又」の素朴な人情と風情を極力残すことにした。
録音当日、アコーディオン奏者からの提案で楽器の音色にも創意を加えた。通常、オーケストラ中での演奏には使用しないが、同音に2〜3枚のリードがピッチを微妙にずらしてチューニングされたミュゼット用の楽器(Excelsior 606)を使用した。細かい音のうなりが生じ、「懐かしのアコーディオン」がオーケストラと絡み合い、アコースティック・ギターも加わり、当時の風情をさらに盛り上げる。寅さんのあの歌声が今もどこかで聴こえくるオーケストラ感にしたかったため、指揮者、演奏者、スタッフの協力も得て、限りある中で録音に工夫を凝らした。
<楽譜管理:オリジナルスコア1969「第1作」(山本純ノ介蔵書) / ミリオンコンサート協会>
▶︎ CD発売:キングレコード:シンフォニック・フィルム・スペクタキュラー 12
King Records,The Greatest Japanese Film Scores SYMPHONIC FILM SPECTACULAR 12
▶︎ 日本映画音楽の巨匠たち 企画監修・解説とエピソード:藤田 崇文
The Greatest Japanese Film Scores: Planning supervision(Takafumi Fujita)