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そらち旅日記 Vol.2

北海道空知総合振興局の職員が集めた旬の情報を、そらちの風に乗せてお届けします。

アートの力で炭鉱の記憶を掘り起こす ~ 三笠「奔別アートプロジェクト」

2012年10月04日 | 空知のアート
三笠市幾春別にある旧住友奔別炭鉱、
ここには、当時東洋一と言われた立坑や、
国内最大級の石炭積み出し施設(ホッパー)など、
炭鉱を理解するための貴重な施設群が残っています。






昨年、このホッパーが解体されるとの話がありましたが、
施設を所有する(株)ホッコンの特段のご理解により、
一年間、NPO法人炭鉱の記憶推進事業団により保存・活用することになりました。
現在、このホッパーをメイン会場に、アートの力で炭鉱の記憶を掘り起こす
「奔別アートプロジェクト」が開催されています。
ホッパーとは、搬出する石炭を種類分けして石炭貨車に積み込む施設のことで、
1960年に完成した奔別炭鉱のホッパーは長さ100m、幅13m、高さ20mと国内最大級です。

 

 
先ずは受付で留意事項などの説明を受け、入場の手続き。
10時から30分おきに実施しているというガイドツアーに参加することにしました。




会場内はぬかるんでいる場所があるので、
「こちらの長靴に履き替えた方がいいですよ」とのこと。
ちょっとガボガボですが有り難い~




ポッパーに入る前にこんなイスが。
座ると立坑の後ろ姿がいい感じで眺められるように配置してあるそうです。
なるほど。






作品はどれも現代アート、そのいくつかをご紹介しましょう。

札幌市立大学の上遠野 敏教授による「モス地蔵」、
池の中に長期間漬けてわざと苔を生えさせたそうです。
このプロジェクトの安全祈願と炭鉱産業に関わった人々への鎮魂を込めた作品で、
プロジェクト終了後はまた池に戻し、もっと苔を増やすんですって。




外に置いてあった白いイスの作者 富田哲司さんの「Irreversible」。
真っ白な作品達がだんだん変化していく、この状態にあるのは今この一瞬です。




高橋喜代史さんの「ホッパーサウンド」。
このホッパーの1階は貨車が3列に渡って通っていたそうです。
上には選別された石炭が入っていて、天井の穴から貨車に落ちるという仕組み。
これはその石炭が落ちてくるところを表現しているそうですよ。




札幌市立大学4年生、ワコポコマイさんの「Factory」。
写真ではちょっとわかりずらいですが、
立坑と同じ形になっていて手前の取っ手を回すと、
いろいろなエネルギーを生み出す仕組みになっています。
光が差し込んでいる窓からはちょうど立坑が見えます。




同じく札幌市立大学美術部、STUさんの「蘇生」。
栄えていた頃から時が経ち、人が去り、老朽化した建物に雨水が溜まり、
自然が萌えている現在の炭鉱の様子を、フィラメント(発光部)が外れ、
本来の機能を失った電球を使って表現しているそうです。
電球の中は水草ですよ。






こちらはこのプロジェクトのために特別に取り付けられたスロープ、
このスロープを上っていくと、ホッパーの上層階に入ることができます。
この中にもいくつかの作品がありますので、高いところが大丈夫な方は是非登ってみてください。

 


ガイドツアーを終えて受付に戻ると、壁一面に展示作品のポストカードが
貼られていて、好きな物を一つどうぞとのこと。
建てられた時代が異なるホッパーの境界を表現した、渡邊俊介さんの「RとQと連結器」を、
立坑完成直後の奔別炭鉱のポストカードと一緒にいただきました。




このプロジェクトには、幾春別の地域の方々の数々のご協力があったそうです。
スタッフは、ご厚意でお借りしている町内会館に泊まり込んで準備を進め、
オープニングセレモニーの際には、いち早く雨除けのテントを張り、
地元「童心会」の太鼓演奏で大いに盛り上げてくれたそう。
スロープの資材の提供や設置にも地元業者さんのご厚意があり、
語ればきりがないくらいのご協力があって実現できたプロジェクト、
その感謝の気持ちを込めて、公開初日の10時からは、
幾春別地域の方々のための特別鑑賞会(内覧会)を行ったそうです。

炭鉱の記憶推進事業団、札幌市立大学の上遠野教授を始め学生さん達、
多数のゲストアーティスト、そして幾春別の地域の方々、
多くの人達の力でアートを表現する場として蘇ったホッパー。
壊すのではなく、残すことの価値を考え直す、素晴らしいプロジェクトになりました。

奔別アートプロジェクトは10月28日(日)までの土・日・祝日、
10時から17時まで公開しています(入場は16:30まで)。観覧料は無料。
足下の悪い箇所もありますので、できれば長靴などをご持参ください。


奔別アートプロジェクトHP
http://pon.soratan.com/

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