ソムタムのリーガルマインド涵養の旅

中央大学法学部通信教育課程で学ぶソムタムの日記

虚偽の嫡出子出生届けと養子縁組

2006-07-09 09:16:59 | 民法
7日、最高裁で注目すべき判決が2つ出された。
虚偽の嫡出子出生届けと養子縁組に関する判決だ。

とても大事な判決なので、ちょっと書いてみる。

養子をもらうには戸籍法に従って養子縁組の届出が必要だ。

ところが様々な家族の事情によって、生まれたての子供を養子にもらう側が
その子を実の子供(嫡出子)として出生届を出すことがある。

生まれてきた子を戸籍上も「実の子供」として親子の関係を結ぼうと、
敢えて虚偽の出生届を行うのだ。

子供は自分が養子だとは知らず、実の子だと信じて人生を送る。
子供には全く罪は無い。

ところが、人間というのは罪深いもので、悲劇が起きる。

だいたいが相続に関してだ。養親の父親などが死亡する。
遺産争いが起こる。そうすると、養親の母親(!)や親族から
自分の相続分を増やそうとして、その子は実の子供ではなく、
相続権は無いと主張する裁判が提起されるのだ!!
そのときになって、嫡出子出生届は虚偽だったと。

その子があまりにも可哀想ではないか。生まれたときから
大人の都合で養子にされ、大人の都合で嫡出子として届けられ、
そのあげくに、遺産相続の段になって、戸籍は嘘だった、
あなたは家族ではない、他人だと。

こんなこと、許されるべきではない。ひどいじゃないか!

ところが、である。

これまでこれが許されてきたのだ。

養子縁組が有効に成立するためには法定の手続きを踏まねばならず
(要式行為)、それが無い虚偽の嫡出子出生届けをもって養子縁組
届けに転換(無効行為の転換)するわけにはいかぬと。
最高裁はずっとこの立場を堅持してきた。

そう、7月7日までは。

7日の判決は、「長期間、実の親子と同様の生活を送るなどしており、
親子関係不存在確認の訴えは権利の乱用に当たる可能性がある」
と初めて判断し、2件とも高裁に差し戻したのだ!
2件とも、生まれてから50年以上も実の親子としての関係を持ち、
一人の方などは家業も継いでがんばっておられたところ、いざ
相続の段になって、養母から「実は親子ではない」と訴えられた
ケースだ。これを権利の濫用と呼ばずして、正義はどこにあるという感じ。

この極めて真っ当な判決を下したのは、今井功裁判長と古田佑紀裁判長。

お二人とも、最高裁判事の国民審査、支持しますよっ!
って、あれで印をつけると「不信任」ということだから、気をつけねば!




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