ヤマさんと、冬子さんが、さっきから七夕論争を繰り広げている。
「今年は、どうやら織姫と彦星が、会えそうね」冬子さんが、アイスコーヒーを飲みながら、マスターに、話しかける。
でも、こんなに暑い日に、デートなんてしたら、熱中症で、倒れちゃうんじゃない?
およそロマンとは、縁遠い発言をするのは、ヤマさんだ。
マスターも「確かに、いくら天の川が綺麗に見えるからって、今の季節に一年で一度の逢瀬を楽しむなんて、暑すぎて、思考が、停止しそうですよね。」と、呟く。
「昔の七夕は、こんなに暑くなかったと思うわ、夏の夜空を見上げて、こんな美しい物語を生み出したのだから・・・。」
ヤマさんは、首に巻いたタオルで、顔の汗を拭きながら、ともかく、暑すぎると、繰り返した。
商店街の七夕祭りの手伝いを頼まれたとかで、重い腰を上げて、店を出るヤマさんに、マスターが、塩アメと、ペットボトルを、手渡した。
冬子さんも、くれぐれも、無理をしないように、声を掛けた。