予報では、昨日🌕が見られるはずだった。
だが、夕方から雲が空を覆って、満月は見られなかった。
「マスター、原田康子って作家、知ってる?」
私の唐突な質問に、「知ってますよ」とマスターが答えた。
「「満月」書いた人でしょ?」
「良く知ってるわね。」
「映画にもなりましたよね。」
「時空を超えて江戸時代の侍が現代にやって来るって話でしたよね。」
「そうよ、今でこそ、そういうストーリーって溢れているいるけど、あの頃は新鮮だったわ。」
「ヒロインが原田知世で、侍が時任三郎でしたよね。
侍には、江戸時代に妻子がいるんでしたよね・・・。」
マスターの淹れてくれたコーヒーを飲みながら、遠い日に思いを馳せる。
満月の夜だから・・・。
北国の淡く切ない恋物語を紡いだ作家は、もういない。