満月  100

2021-09-22 06:10:16 | 小説

予報では、昨日🌕が見られるはずだった。

だが、夕方から雲が空を覆って、満月は見られなかった。

「マスター、原田康子って作家、知ってる?」

私の唐突な質問に、「知ってますよ」とマスターが答えた。

「「満月」書いた人でしょ?」

「良く知ってるわね。」

「映画にもなりましたよね。」

「時空を超えて江戸時代の侍が現代にやって来るって話でしたよね。」

「そうよ、今でこそ、そういうストーリーって溢れているいるけど、あの頃は新鮮だったわ。」

「ヒロインが原田知世で、侍が時任三郎でしたよね。

侍には、江戸時代に妻子がいるんでしたよね・・・。」

マスターの淹れてくれたコーヒーを飲みながら、遠い日に思いを馳せる。

満月の夜だから・・・。

北国の淡く切ない恋物語を紡いだ作家は、もういない。

 

 

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