9月に入ったというのに・・・258

2024-09-08 12:49:46 | 小説

朝晩は、いくらか涼しくなったとは故、日中は相変わらず暑い。

昨日、娘さんの所から戻った冬子さんが、早速、松ぼっくりのおはぎを手土産に、店にやって来た。

マスターの淹れてくれたコーヒーを時間を掛けながら、ゆっくり味わっている。

「この香り、この味よ。」

お持たせのおはぎを、海の底のように青い皿に載せて運んできてくれたマスターが、吹き出している。

「まるで、CMのキャッチコピーみたいじゃないですか」

「そうかしら?」小首をかしげながら、コーヒーを味わう冬子さんは、まるで少女のように、あどけない。

甘いものは、あんまり得意じゃないといいながら、若草色のずんだのおはぎを、食べ始めた加藤のおじいちゃんが、これは、うまいよと、一言、うなった。

「そうでしょ、松ぼっくりの新作ですってよ。」

冬子さんが、自慢気に、頷く。

小豆や、きな粉のおはぎは、定番だが、枝豆を潰したずんだのおはぎは、めずらしい。

松ぼっくりは、駅前にある、老夫婦二人で営む和菓子屋だが、主人が、研究熱心で、新作の和菓子が、

店頭に並ぶこともめずらしくない。

ドアが開いて、近くのマンションに住んでいる波野さんが、コスモスの花束を、抱えて、やって来た。


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