手編みの涼し気なカゴをさげ、久実さんが来た。
「ちょっと、早いんだけど何か食べさせて」と言って、カウンター席に腰かけた。
マスターは、「夕べのカレーがあるけど、それで良ければ、すぐできるよ。」と言った。
この頃、忙しくて、ちゃんとした物を食べてないので、カレーを食べられるなんて、ラッキーだと言って、マスターの出してくれた、お冷を氷の音を立てながら、飲み干した。
カレー皿を、久実さんの前に並べながら、店は、どうなのと、マスターが、尋ねた。
アツアツのカレーを、口に運びながら、「おかげ様で、滑り出しは、好調です。」と、久実さんが答えた。
アルバイトに頼んで来たので、食べたらすぐ帰ると、言って額の汗を拭きながら、辛い、美味しいを交互に繰り返した。
ゆっくり、食べなさいよと、マスターに言われ、「そう言えば、この間、この店に寄った帰りだと言って、水川さんと、伊達さんが、来てくれた。」と、報告した。
冬子さんに、お説教されたみたいですねと、言って、困ったもんだと、付け足した。
又、来るからと言いながら、慌ただしく帰っていった。
久実さんと入れ違いのように、ドアが、開いた。