夏至   251

2024-06-22 17:19:39 | 小説

昨日は、一年で一番昼が長い日だったけど、生憎雨で、昼も薄暗く肌寒かった。

こんな日は、早仕舞いでもしようと、マスターが、カウンターを拭いて、片付け始めた頃、星が、一人で、ふらりとやって来た。

仕事の約束が、キャンセルになったそうで、コーヒーが飲みたくて来たと言った。

マスターの様子を察して、もしかして、もう閉める所だったんじゃないですかと、尋ねた。

マスターは、遠慮する星を引き留め、丁度、話し相手が、欲しかったところだから、☕飲んでいってよと、勧めた。

星は、申し訳ないと言いながら、マスターの淹れてくれたコーヒーをゆっくり、味わいながら飲んでいる。

ドアが、開いて、加藤のおじいちゃんが、顔を見せた。

星を見つけると、「なんだ、ここにいたのか」と、言いながら、カウンター近くの席に、腰かけた。

「爺ちゃんにしては、遅いんじゃないの?」と、星に突っ込まれると、お前の母さんが、何やかんや、うるさいから逃げて来たんだと言って笑った。

マスターに、缶ビールあるかいと尋ねた。

マスターが、ありますけど、飲んで良いんですかと、心配そうに尋ねる。

星にも、お前も付き合えと、言ったが、車だからと、断られてしまった。

「マスターは、アルコールが、だめだし、仕方ない一人で、飲むよ」と、言いながら、マスターの出してくれたひじきの煮物や、きゅうりの酢の物をさかなに、グイグイ飲み始めた。

星は、あきれたように眺めていたが、爺ちゃんが、元気でいてくれたら何にも言うことないやと、言って加藤のおじいちゃんの肩を軽く揉むような仕草をした。

二人の様子を見ていたマスターは、「私も、加藤さんが、何時までも元気で、この店に来て下されば、それだけで、幸せです。」と、付け足した。

外の雨は、いつの間のか、上がったようだ。

 

 

 

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 今を生きるしかない   250 | トップ | ちょっと、休憩   252 »
最新の画像もっと見る

小説」カテゴリの最新記事