昨日は、一年で一番昼が長い日だったけど、生憎雨で、昼も薄暗く肌寒かった。
こんな日は、早仕舞いでもしようと、マスターが、カウンターを拭いて、片付け始めた頃、星が、一人で、ふらりとやって来た。
仕事の約束が、キャンセルになったそうで、コーヒーが飲みたくて来たと言った。
マスターの様子を察して、もしかして、もう閉める所だったんじゃないですかと、尋ねた。
マスターは、遠慮する星を引き留め、丁度、話し相手が、欲しかったところだから、☕飲んでいってよと、勧めた。
星は、申し訳ないと言いながら、マスターの淹れてくれたコーヒーをゆっくり、味わいながら飲んでいる。
ドアが、開いて、加藤のおじいちゃんが、顔を見せた。
星を見つけると、「なんだ、ここにいたのか」と、言いながら、カウンター近くの席に、腰かけた。
「爺ちゃんにしては、遅いんじゃないの?」と、星に突っ込まれると、お前の母さんが、何やかんや、うるさいから逃げて来たんだと言って笑った。
マスターに、缶ビールあるかいと尋ねた。
マスターが、ありますけど、飲んで良いんですかと、心配そうに尋ねる。
星にも、お前も付き合えと、言ったが、車だからと、断られてしまった。
「マスターは、アルコールが、だめだし、仕方ない一人で、飲むよ」と、言いながら、マスターの出してくれたひじきの煮物や、きゅうりの酢の物をさかなに、グイグイ飲み始めた。
星は、あきれたように眺めていたが、爺ちゃんが、元気でいてくれたら何にも言うことないやと、言って加藤のおじいちゃんの肩を軽く揉むような仕草をした。
二人の様子を見ていたマスターは、「私も、加藤さんが、何時までも元気で、この店に来て下されば、それだけで、幸せです。」と、付け足した。
外の雨は、いつの間のか、上がったようだ。