久美さんの店に行ってきたと言って、ヤマさんが、顔をみせた。
どうでした?
カウンター席に座ったヤマさんに、マスターが、尋ねた。
ネイビーのポロシャツを着たヤマさんは、マスターの出してくれた、冷たい水を、一気に飲み干すと、大盛況だったよと言った。
小さな店の外まで、行列ができていたそうだ。
久実さんの店って感じの洒落た作りで、置いてある物も、ご婦人方が喜びそうな物が、並んでたよと、報告した。
ズボンのポケットをごそごそさせて、ラピングされた小箱を取り出すと、かみさんに渡そうと思ってさ、と照れながら、カウンターに置いた。
ヤマさんは、指輪なんて、結婚指輪くらいしか、やったことがないからさ、俺が、入院したりして、随分迷惑かけたから、そのお詫びと感謝の気持ちだよと、言った。
マスターが、奥さん、きっと喜ばれますよと言うと、
「本当は、あめ玉くらいでかいのを買ってやりたかっんだけど、針の先で、突っついたみたいな奴でさ」と、言って笑った。
☕入りましたよ。
マスターは、ヤマさんの優しさに心打たれたけど、敢えて、淡々とコーヒーを勧めた。