■『理由』(2004)
原作:宮部みゆき 監督:大林宣彦
出演:勝野洋、岸部一徳、伊藤歩、加瀬亮、宮崎あおい、風吹ジュン、柄本明、小林聡美 ほか
友だちが宮部みゆきさんの小説のファンで、わたしは一度も読んだことがないけど、映画で観てみようと思って借りてみた。
わざわざタイトル下に「THE MOVIE」て書いてあったのは、最初にドラマで放送されたからなのか。
陰惨なシーンが多いかと思って身構えてたら、それよりも周りの証言によって次々と人がつながり、
事件の背後にあるもっと大きな影に焦点があたっていることが分かる。
全体の色が昭和っぽくて、「ガールフレンド」などの古い言い回しや、
今どき電球みたいのをつけてたりするのもフシギ。
章の合間に、都市の風景を挟んで、ジャズを流しているのも効いてる。
今は亡き南田洋子さんが、試写会でも元気に喋っていたのが感慨深かった。
▼story
荒川区の長い歴史の紹介からはじまる。
1996年。下町の小さな旅館「片倉ハウス」に、一家4人殺しの重要参考人・石田直澄がいると、交番の警官に言う少女・片倉信子。
その後は、事件の模様をテレビが取材して、関係者が次々と証言していくという展開。
事件は、大嵐の晩、高級マンション「ヴァンダール千住北ニューシティ」のウエストタワー20階から若い男性が落ちたことが発端となる。
管理人が110番通報する。男はどうやら2025号室の小糸一家だと分かり、警官が入ると3人が惨殺されていた。
しかし、この部屋の持ち主・小糸信治の姉に死体を確認してもらうと、弟ではないと証言。
この部屋に住んでいた7人全員が他人同士の集まりだった。。。
途中、映画の撮影シーンまで入ってて、面白い試み。終始、西日のような照明も特徴的。
石田の背後の真っ赤な光が清順映画みたいだった。
「占有屋」「競売」「買受人」「執行妨害」「売家」など、家に関する専門用語がたくさん出てきて、裏のシステムが垣間見れる。
島根出身の石田が家にこだわっていたことが深い根としてある。
「足入れ婚」なんて言葉も初めて聞いた。正式に嫁にいれる前に、その家にふさわしいかどうか見定めるため、
いわば“お試し期間”として住まわせ、姑らの気に入らなかったら返すってシステム。どんだけ冷遇されてたんだ、女性は/驚
「買取屋」なんて商売も初耳。
石田は、事件後に出版社からも追われる。その編集者のセリフ。
「ウソが入っても構わない。ウソをまじえなきゃ、辻褄なんか合やしない。本当の理由なんて分かるはずありません。
人間はね、だれでもそれぞれ物語りをつくって、それでようやく生きてるんですから」
ラストは、出演者による♪殺人事件が結ぶ絆~ っていう気味の悪い歌が流れる。
▼DVD特典「理由が映画になった理由」
大林監督ナレーションによるメイキング。大林さんはいつでもどこでもよく喋るんだよね
「映画ってそもそもそうゆうものですよね。この画面に映っているものが本当だと思われちゃ困るわけ。
みんな目の前に映っているものがリアリズムだと思っては困るんだよ。
本当を描くのが映画じゃない。ウソ、ウソ、ウソの技を重ねて、ひょいっとウソから出た誠、
つまりヒトの目にはみえない心の中を見れたら、その時に映画になるんだよね」
映画化不可能と言われた小説を、敢えて、原作通りに撮る。
大林「インディーズ歴60年ですから。誰も観たことのない実験的な映画を僕らも観てみたかったんだよね」
登場人物が100人以上。それぞれが主観で証言する。その矛盾もとりこんだところが面白味。
監督の要求で役者全員ノーメイクで出演!
だからか?あるいは撮り方のせいか、あんな女優さん、こんな女優さんが出ていたって後になって分かるくらい、誰が誰だか分からなかった
「シワもシミもそのまま出す」
セリフがモノローグみたいで、出演者がみな棒読みっぽいのも狙いか?
台本はなんと250P!(通常は150Pくらい)それを32日間で撮ったって凄い!
台本にびっしりと書き込まれた字や絵コンテも細かい/驚
昼間にわざわざ周りをシートで囲んで暗くして、照明で朝焼けを撮るなんて作業もしていた。
小説の“紙背を読む”、生活感を出すセットの工夫もハンパない。
「俳優さんは与えられた部分のみを生きる。前後の関係は分からない。生きるってそうゆうことでしょう?
あまり分かりすぎると全てが理屈になるんです。よく分からない中で人は一生懸命生きてるんですよね。
僕はそれがドキュメンタリータッチだと思うんです」(大林)
撮影に関わる女性が増えたということで、女性の助監督さんや、舞台製作スタッフさんなどを丁寧に紹介。
原作にたくさんの少女が出てくることにも触れる。
「少女が駆け出す。宮部さんは、その先にある日本の姿に希望を見出したかったのでは?」(大林)
ところで、なぜ信子は交番に行く時もビニ傘を持っていったのかな???
試写会でも監督はすっかり司会者になって喋る、喋る!w
日本だけじゃなくて、ベルリンでも。人が好きなんだな。
「いろんな人と会って、会って、会って・・・映画は約束だからね」(大林)
このメイキング自体がドキュメンタリーフィルム。監督の喋りは詩だな。
原作:宮部みゆき 監督:大林宣彦
出演:勝野洋、岸部一徳、伊藤歩、加瀬亮、宮崎あおい、風吹ジュン、柄本明、小林聡美 ほか
友だちが宮部みゆきさんの小説のファンで、わたしは一度も読んだことがないけど、映画で観てみようと思って借りてみた。
わざわざタイトル下に「THE MOVIE」て書いてあったのは、最初にドラマで放送されたからなのか。
陰惨なシーンが多いかと思って身構えてたら、それよりも周りの証言によって次々と人がつながり、
事件の背後にあるもっと大きな影に焦点があたっていることが分かる。
全体の色が昭和っぽくて、「ガールフレンド」などの古い言い回しや、
今どき電球みたいのをつけてたりするのもフシギ。
章の合間に、都市の風景を挟んで、ジャズを流しているのも効いてる。
今は亡き南田洋子さんが、試写会でも元気に喋っていたのが感慨深かった。
▼story
荒川区の長い歴史の紹介からはじまる。
1996年。下町の小さな旅館「片倉ハウス」に、一家4人殺しの重要参考人・石田直澄がいると、交番の警官に言う少女・片倉信子。
その後は、事件の模様をテレビが取材して、関係者が次々と証言していくという展開。
事件は、大嵐の晩、高級マンション「ヴァンダール千住北ニューシティ」のウエストタワー20階から若い男性が落ちたことが発端となる。
管理人が110番通報する。男はどうやら2025号室の小糸一家だと分かり、警官が入ると3人が惨殺されていた。
しかし、この部屋の持ち主・小糸信治の姉に死体を確認してもらうと、弟ではないと証言。
この部屋に住んでいた7人全員が他人同士の集まりだった。。。
途中、映画の撮影シーンまで入ってて、面白い試み。終始、西日のような照明も特徴的。
石田の背後の真っ赤な光が清順映画みたいだった。
「占有屋」「競売」「買受人」「執行妨害」「売家」など、家に関する専門用語がたくさん出てきて、裏のシステムが垣間見れる。
島根出身の石田が家にこだわっていたことが深い根としてある。
「足入れ婚」なんて言葉も初めて聞いた。正式に嫁にいれる前に、その家にふさわしいかどうか見定めるため、
いわば“お試し期間”として住まわせ、姑らの気に入らなかったら返すってシステム。どんだけ冷遇されてたんだ、女性は/驚
「買取屋」なんて商売も初耳。
石田は、事件後に出版社からも追われる。その編集者のセリフ。
「ウソが入っても構わない。ウソをまじえなきゃ、辻褄なんか合やしない。本当の理由なんて分かるはずありません。
人間はね、だれでもそれぞれ物語りをつくって、それでようやく生きてるんですから」
ラストは、出演者による♪殺人事件が結ぶ絆~ っていう気味の悪い歌が流れる。
▼DVD特典「理由が映画になった理由」
大林監督ナレーションによるメイキング。大林さんはいつでもどこでもよく喋るんだよね
「映画ってそもそもそうゆうものですよね。この画面に映っているものが本当だと思われちゃ困るわけ。
みんな目の前に映っているものがリアリズムだと思っては困るんだよ。
本当を描くのが映画じゃない。ウソ、ウソ、ウソの技を重ねて、ひょいっとウソから出た誠、
つまりヒトの目にはみえない心の中を見れたら、その時に映画になるんだよね」
映画化不可能と言われた小説を、敢えて、原作通りに撮る。
大林「インディーズ歴60年ですから。誰も観たことのない実験的な映画を僕らも観てみたかったんだよね」
登場人物が100人以上。それぞれが主観で証言する。その矛盾もとりこんだところが面白味。
監督の要求で役者全員ノーメイクで出演!
だからか?あるいは撮り方のせいか、あんな女優さん、こんな女優さんが出ていたって後になって分かるくらい、誰が誰だか分からなかった
「シワもシミもそのまま出す」
セリフがモノローグみたいで、出演者がみな棒読みっぽいのも狙いか?
台本はなんと250P!(通常は150Pくらい)それを32日間で撮ったって凄い!
台本にびっしりと書き込まれた字や絵コンテも細かい/驚
昼間にわざわざ周りをシートで囲んで暗くして、照明で朝焼けを撮るなんて作業もしていた。
小説の“紙背を読む”、生活感を出すセットの工夫もハンパない。
「俳優さんは与えられた部分のみを生きる。前後の関係は分からない。生きるってそうゆうことでしょう?
あまり分かりすぎると全てが理屈になるんです。よく分からない中で人は一生懸命生きてるんですよね。
僕はそれがドキュメンタリータッチだと思うんです」(大林)
撮影に関わる女性が増えたということで、女性の助監督さんや、舞台製作スタッフさんなどを丁寧に紹介。
原作にたくさんの少女が出てくることにも触れる。
「少女が駆け出す。宮部さんは、その先にある日本の姿に希望を見出したかったのでは?」(大林)
ところで、なぜ信子は交番に行く時もビニ傘を持っていったのかな???
試写会でも監督はすっかり司会者になって喋る、喋る!w
日本だけじゃなくて、ベルリンでも。人が好きなんだな。
「いろんな人と会って、会って、会って・・・映画は約束だからね」(大林)
このメイキング自体がドキュメンタリーフィルム。監督の喋りは詩だな。