メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

喧騒

2006-02-28 23:55:55 | lyrics
ひとが
適当にしゃべりながら 食べている

食べるのに飽きたら
またしゃべりだす

しゃべることがなくなって
ひとが眠る

それぞれの頭の中で 妄想が飛び交う
それぞれの妖しい妄想を お互いに知らない


ひとには
声に出せない言葉がある
文字にできない言葉がある
絵にしか描けない言葉もある


多種多様の
神のごとくに崇高なものから
道端に転がっている
夢のようにくだらぬものまで


それらが全部聞こえたら
どれほどうるさいことだろうか






1989.9.24 あさまの中で


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2006-02-27 23:55:55 | lyrics
貴女(あのひと)はとても綺麗だった
彼女は泣いていたのにちがいない

手はふしくれて
爪にはひびが入っていたけれど

神経質そうな眼をして
銀縁の安っぽい眼鏡をかけていた

例の箱をあげたらさ

真昼の砂浜で 彼女は一人きり
その箱から犬を出した
上級の肉を食わせたよ

それから マッコウクジラの家族を出した

三番目は鷲
家が好物だ

砂浜ぞいに日が沈むと
彼女は犬を連れて
そんなものを
全部置いていってしまった


いつまでも 夜がつづいて
いつまでも 海がつづいてくれれば
ほかはどうでもよかったから

世界中には 彼女一人きりだから


髪は黄色いぼさぼさで
くちぶえを吹いていた

そうだ 聴いた覚えがある




1989年頃作


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まち

2006-02-26 23:55:55 | lyrics
まち

誰もいないまち

ヒトの存在しないまち

ヒトのつくった建造物だけが

だまあってたっている




冷えて湿った大空を 鷲が飛んでいる

ごうごうと生えた 黒い木々の間を

静かに息づく 湖の水面の間を

きりつまった 気圧を裂いて



飛行機雲がない空

誰も飛んでいない空


ぴりぴりと震える電線から

小さな雫が ひと粒落ちた


かつてヒトのいたまち

木目模様のコンクリートの家は


もうだれも待たない








1989年作

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創造

2006-02-25 23:55:55 | lyrics
いままでかつて そこは寂寥としていた
箒草が転がっている

そこに いっこの汚点がついた
新しいもの

まったくそれは
キラキラとして
見たことのないものである

それは
心を癒す水かもしれない

それは
モズモズとひきつった動きをする
節足動物かもしれない


いままでかつて
だあれも見たことがない

そんな新しいものを産みだすこと

それが創造

応用ではない創造だ


周囲五十ちょっとの
養水に浸かっている脳漿の中の

あらゆる襞の合間も
くまなく探してみたけれど

創造が産まれる部分っていうのは
さっぱり分からなかったよ

感性だろうか

突然変異でしょう


アルファベットの中の
あるひと握りの
創造のできるニンゲンは

たちまち世界中と親友になれるんだ
そしてそこからまた
新しいなにかを造りだす


どこまでエネルギーが続くんだろうか
一体どこまで届くんだろうかね

脳の水が枯れるまで?

それはカンタンなこと?







1988年頃作


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白焔

2006-02-24 23:55:55 | lyrics
あすこには

かなた30億年前から

すきっとした惑星が

今日も在る



ああ

私をどこまでも

どこまでも

夜が快くそそぎこんで

永遠に冷たい風が吹く

いつかのところへ

連れていってください

そこにはこんながない



泪がゆらいで

惑星がちらちらぼやけた

いつまでも

いつまでも

ぼやけたんだよ








1987.7.26作


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序曲「変身」

2006-02-23 23:55:55 | lyrics
序曲「変身」

真紅の薔薇の庭園で
厳かな満月のひかりのたもと
熱い炎に掌(て)をのべて

あのいななきは
山向こうに群れる狼

回ろう

香を焚こう





間奏

見知らぬ娘が 突然夢に現れるのだ

(貴方は上海娘と間違えた)

僕は言う
君をただ支配させてくれ、と

逢ったことのない その娘に言うんだ

あっぷびいとに乗せて 娘は右手を振る
あっぷびいとに乗せて 娘は右手を振る

僕は言う
僕に深入りしちゃだめだ、と

逢ったことのないその娘に


娘は言う

(貴方は私を上海娘と間違えた 間違えた―――――)


毎晩、その娘はそう言う
逢ったこともないのに







過去作


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新世界交響楽

2006-02-22 23:55:55 | lyrics
雀の死骸をポケットから出し
死臭を漂わせ
もうひとつと対になって

それはもう神に召されて
安心した思いだったろう


部屋中にぶ厚い氷が張り
それを部屋(ここ)から落とすために
私は道具を探そうとする


空を見上げたら
なんと素晴らしい星空

目に痛く輝き
はっきりそれと解かるほど
天の川は大きくうねる

空におおいかぶさった
枝のあいだから
手にとれるようだ

きみはこんな星の多い空を
見ただろうか



まったくそれは
星のせいだけでもないようだ

どおりで寒いと思っていたら
遠く下には
あちらこちらに
しっとりと根雪が在る

ぴかぴかと目を刺すのは
雪の反射


さてシャッターを閉めよう
炬燵はもうないけれど
寒いのは好きだ

明日もこんなに
まだ星空がきれいなら
すこしもったいなく
怖い気がする


お休みなさい

永遠に





1985年6月作

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初雪

2006-02-21 23:55:55 | lyrics
このあたたかい布団から出る理由を探して
今日ってゆう新たな1日を
また最初から始める理由が見つからず
もう11時すぎまで
いつまでもウダウダしていた

寒い、寒いって言いながら
子どもも大人も
なんだかやたらと弾んだ声を出しているから

もしかして
昨日友だちがゆってたみたいに
東京に雪が降ったのかな

そんな一見
どうでもいいちいさな理由で
布団から飛び出した


ああホントに雪だったんだ


今朝早くに降ってた雨が凍って
窓の外はいちめん真っ白

だからどうってわけじゃないけど
とりあえず
新しい朝はこうして始まった



ほんのり暖かい日差しの

春はまだかな

春はまだもうすこし
先なのかな






過去作

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トンネルは長方形

2006-02-20 23:55:55 | lyrics
トンネルは長方形
トンネルの中では橙色の光が
車の中で 巡り巡り

ライトを点けて下さい
カーラジオをつけて下さい


男たちは死に導かれながら
穴を掘る

ポケットにはブラックチョコレイト


トンネルは円形
熱いスポットライトを浴びて
車は巡り巡って

距離をあけないと激突しますよ
地獄を見ますよ







過去作

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2006-02-19 23:55:55 | lyrics
この深緑の波にのまれれば

2度と浜へはあがれない

けれども

この深蒼の狭間に潜れば

もう永劫に迷わないだろう


私は深底に潜み

全能太陽の浮気な運動に付き合うこともしない

大宇宙の永劫回帰に合わせることもしない


浮きあがるまい









過去作

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