1980年初版 1989年5刷 小野章/訳
中央図書館で見つけて、タイトルと少女の絵に惹かれて借りてみた
作者が夢の中で見たことを書いたとまえがきにあるように
主人公は過去と現在をユラユラ彷徨っている
以前、ネズビットが書いた時を旅する物語は
タイムパラドックスに関係なく過去に干渉して
幼いきょうだいが大活躍する話にワクワクしたけれども
今作はさすがに世界の歴史を変えるほど膨らませることなく
少女が歴史上の人物の近くで見守るだけに留まっているのがもどかしい
夢にありがちな、前後の記憶も曖昧で
没入しているがゆえに事件を覆そうという気すらない感じ
時間を超える方法もコントロール出来ないため
流されるままに現れたり消えたりしている
叔母が屋敷を取り仕切る立場にいるから擁護されてるけれども
そうでなかったら、たとえ奉公人ぽく振る舞っても
名のある屋敷に自由に出入りするのは難しいよね
本書では複雑すぎてよく分からなかった政治事情もゆっくり動画で観たら
よくまとめられてて、なんとなく頭に入ったけれども
政治、権力争いは血生臭くて、延々と続いてややこしいから
嫌悪感のせいで右から左に流れてくんだよね・・・
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【スコットランド女王】メアリー・スチュアート【ゆっくり解説】
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【再編集版】イングランド女王エリザベス1世【ゆっくり解説】
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【再編集版】ヘンリー8世王妃アン・ブーリン
【内容抜粋メモ】
登場人物
父チャールズ 科学の論文などを書いている
母カーリン
アリスン 姉
ペネロピー・タバナー・キャメロン ロンドンのチェルシー生まれ
イアン 弟
シスリー・アン・タバナー ティッシー 叔母
バァナバス 叔父
ジェス 作男
アントニー・バビントン 領主
妻メアリー
弟フランシス
妹アリス
母フォルジャム
いとこ アラベラ
ティッシーおばさん シスリー・タバナー
タビサ 女中
ジュード ジプシーの捨て子 喋れないが特殊な能力を持つ
トム・スノーボール 庭師
■まえがき
私は荘園が見える農園で幼年時代を過ごした
父はアントニー・バビントンについて隣人のように話してくれた
この物語の多くの出来事は夢の中で起こったことだ
「日時計の銘」
時があり
時ありき
時はなし
「サッカーズの農園」
ペネロピーは体が弱く、学校を休みがち
本が好きで、ときどき見えないものが見えたりする話をするので
母は祖母の透視力を受け継いでいるのではないかと疑っている
ペネロピーが心配で、サッカーズの農園で暮らす
ティッシーおばさん、バァナバスおじさんのもとにしばらく預けることに決めると
子どもたちは大喜びで出かける
*
おば夫婦の暮らす大きな屋敷は、昔、バビントン家のものだった
ペネロピーは300年前の婦人の姿を見て驚くが
姉アリスンはそんなペネロピーをからかう
ティッシーおばさんの針入れから木づくりの人形が出てきて気に入ったため
おばはペネロピーに人形をくれる
領主アントニーはエリザベス女王にそむいて、スコットランド女王メアリー・スチュアートを
ウィングフィールドから救い出し、フランスに逃げる手助けをしたのがバレて処刑された話に夢中になるペネロピー
その時に使われた秘密のトンネルは、長年の間にふさがってしまった
「バビントン家」
ペネロピーはまた時間を超えて、300年前、バビントン家を仕切っていたティッシーおばに会う
姪ペネロピーが亡くなったばかりで、瓜二つで同名のペネロピーをひと目見て受け入れ
台所の手伝いをさせる
女中のタビサらは、ペネロピーの着ている異国風の服を物珍しく触る
ジュードだけはペネロピーを怖れている
領主アントニーは、14歳の頃、伯爵の小姓として城に上がり
そこに幽閉されていた女王に心酔し、脱走を助けることを今生の誓いとしている
若く美しい妻メアリーはそんな夫を心配して、いつも悲しそうにしている
ペネロピーは腕時計を見て、過去をうろついても、現在では一秒も時が進まないことを知る
女中にしては教育を受けていることが分かり
次第にバビントン家の家族と親しくなっていく
アントニーは女王の絵が入ったロケットを見せる
ペネロピーは彼女が処刑される運命を話すと、透視力があるのかと思われる
兄を尊敬するフランシスは、正直なアントニーが政治の網に引っかかっていることを心配している
ペネロピーは女王は1587年に死んだと話しても信じてくれない
フランシス:お前は魔法使いだと思うが、邪悪な魔術師ではないようだ 私はお前が気に入った
フランシスはペネロピーの腕時計を見て、未来から来たことを信じ始める
ペネロピーはどんどん過去の世界にのめりこむ
「女王のロケット」
アントニーは命より大事なロケットをなくして、ペネロピーにも探してほしいと頼む
ペネロピーは現在の礼拝堂でロケットを見つけて
首から下げるが、過去へ持ち込むことはできなかった
「2年後」
ペネロピーはまた体調を崩したため、イアンとアリスンとまたサッカーズ農園に来て
休みを過ごし、2人は帰るが、1人農園に残ることになる
ふたたび過去に戻り、タビサやティッシーおばさんは
神出鬼没なペネロピーに呆れつつ毎回温かく迎え入れる
フランシスは妹アリスの衣装を貸して、2人で市を見に行き、リボンを買ってくれる
いとこのアラベラは、女中のペネロピーがバビントンの家族と馴れ馴れしく振る舞うのが耐えられず
女王逃亡計画を阻むスパイなのではと疑う
「秘密の通路」
ペネロピーはアントニーが妻の心配をなだめている様子を見る
アントニー:
紋章に刻まれたバビントン家のモットーは『忠誠こそすべて』
私は3人のメアリーに忠誠を尽くさねばならない
天国のマリア、囚われの身の女王メアリー、わが妻メアリー
アントニーとフランシスはペネロピーを味方と信じて女王逃亡計画について話す
ウィングフィールドの荘園に来たら、バビントン家に昔からある地下のトンネルを使って脱走し
フランスに送ることができると信じて、トンネルを掘り進めている
真実を知るのはバビントン家、シスリー、タビサ、フィービ、マージョリー
庭師のトムほか限られた者だけで、表向きは鉛の鉱脈を探していることになっている
アントニーはペネロピーに孤独な妻の話し相手になってほしいと頼む
フランシスはペネロピーの緑の服を褒めて、それにちなんだ歌をうたう
みどりの袖は わが喜び
みどりの袖は わが楽しみ
みどりの袖は わがこころ
そはだれぞ みどりの袖の君
「スコットランド女王メアリー」
ペネロピーは庭で摘んだ花束を女王メアリーに差し出すが
手紙などが入っていると疑われて衛兵が取り上げる
母もサッカーズ農園に来て、叔父にウィングフィールドに連れてってと頼む
ペネロピーは女王メアリーが訪れた城が観れると思って期待するが
すっかり廃墟になっていて悲しみに沈む
ガラス窓の向こうに女王メアリーが刺繍をしている姿が見えて
「あの人たちはあなたの手紙を見つけた! 気をつけて!」と警告するが
女王の目にチラっと亡霊のように映っただけだった
周りにいる犬や馬たちはなにかの気配を感じている様子
ティッシーおばは、アントニーが絞首刑にされ、死体は反逆者として四つ裂きにされ
若い奥さんの女の赤ちゃんも間もなく死んだと話す
フランシスはペネロピーをトンネルに案内する
ジュードは自分が彫った木の人形をペネロピーにあげる
それはティッシーおばからもらった糸巻き人形だった
「アラベラ」
礼拝堂から音楽が聴こえて行くと、アラベラがいて、フランシスが会いたがっていると騙して
ペネロピーを落とし穴に落とす
そこは試掘したトンネルの1つで、叫んでも誰も聞こえない場所
道具置き場で火打石を見つけて明かりをつけ、湧き水を飲んで過ごすペネロピー
ポケットに入れた木彫りの人形に気づいてジュードに助けを求める
ジュードはみんなを穴まで呼び、ペネロピーは助かる
現在のペネロピーは礼拝堂で倒れていて、ティッシーおばが介抱する
*
クリスマスには両親もサッカーズ農園に来るが
ペネロピーは300年前に暮らす人々に魅了されている
ジュードはペネロピーを救った功績を評価されて、フランシスの従者に抜擢される
アントニーは秘密が漏れて、衛兵がサッカーズ農園にやって来ると告げる
メアリー:穴を埋めて隠しましょう
ペネロピーはティッシーおばとともに礼拝堂で祈ると、雪が降りはじめる
村人がクリスマスイヴの仮面劇をしに集まる
フランシス:私から離れないでくれ、ペネロピー と言ってキスをする
*
アリスンはペネロピーがまだ想像の世界に捉われれいるのをからかうが
ペネロピーは自分は「時の旅人」だと言う
アントニーは雪が穴を隠し、仮面劇を観ていたため、衛兵は早々に引き上げたと喜ぶ
女王はタットベリーに移されるが、命を賭けて再び脱走計画を実行すると誓う
フランシスが♪さらば みどりの袖よ と歌うのが聴こえる
この世の終わりには、再び彼らに会うことができるだろう
その時、私はあの世界に戻って、あの勇ましい一団の影とひとつになるのだ
(時間て概念は三次元特有の感覚で、本当は過去→現在→未来という流れはないそう
同じ点にあらゆる時空が同時に存在しているなら、魂、エネルギー体になれば
どの時代の人々とも再会できるだろう
ここまでの縁があるなら
■
あとがき
ペネロピーが時を超えて入ったのは、16世紀のイングランド
アントニーは実在の人物で、エリザベス一世の暗殺を企て
謀臣ウォルシンガムによって発覚し、極刑を受けた
本書はその「バビントンの陰謀」には触れていない
一説には、ウォルシンガムがアントニーに実行をしむけたとも言われている
メアリー女王は、陰謀の手紙をウォルシンガムにおさえられ
加担していたことが暴露され、断頭台にかけられた
宗教政治がからみあい、血みどろの闘争が行われた時代だった
エリザベス一世はヘンリー8世の正妻の子どもでなく
アン・ブリーンという身分の低い女性の子であり
王位継承者としてはメアリーのほうが正統だった
エリザベス一世は亡くなり、メアリーの息子でスコットランド王ジェイムズ一世が
イングランド王を兼位した
アリスン・アトリー
1884年生まれ
1930年 夫が亡くなり、女子高の理科の先生をしながら、子ども向けの物語を書いた
本書は、唯一のジュニア小説
姉に自分の名前をつけていることから、この姉妹は作者の分身と見てもいい