先週土曜日の6月23日は、明治40年(1907)に文豪夏目漱石が『虞美人草』の
連載を朝日新聞で始めた日である。名作には、何らかの歴史的背景があるという。虞
美人草は「ひなげし」のことで、その虞美人とは、「四面楚歌」の故事で知られる楚王・
項羽の愛人虞を指す。非常に美しい人だったようだが、美人と称するのはそのためで
はなく、当時の女官の役職名の1つであった。
劉邦の漢軍に敗れ、祖国へ撤退を続けていた項羽の楚軍は、ついに垓下の地で包囲
されてしまう。そこで敵の兵士たちが故郷の楚の歌を歌うのを耳にした項羽は、「祖
国の楚も敵に落ちた」と判断し、虞に辞世を残し自決覚悟で敵軍に討って出たという。
これが「四面楚歌」の起こりである。最愛の人が死ぬ覚悟であることを知った虞は、項
羽出撃後自決する。その血は大地にしたたり、その場所に毎年可憐な花が咲いた。それ
が虞の生まれ変わりと言い伝えられ、虞美人草とよばれるようになったという。
このイメージを持って漱石は『虞美人草』を執筆し、小説の主人公も恋に死んでいく。
歴史のエピソードが小説の根底にあって、創作される場合が多いことを知った上で、小
説を読んでみると、新たな発見があるかもしれませんね。
【夏目漱石全集~虞美人草~】
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【学研漫画『世界の歴史』3の垓下の戦いの場面】
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