12月例会の後、井上幸明さんから俳句鑑賞についてスピーチがありました。
新聞俳句鑑賞会用資料(平成27年12月19日)
1. 俳句とは・・・有季定型の世界最短詩
・有季・・俳句には大抵「季語」が一つ入る。季節を(に)詠む。
・定型・・五・七・五の韻律(韻を踏んだ形)で詠まれる。
・切れ・・一句のどこかに「切れ」(や、かな、けり、ほか)が入り余韻を
残す。又文語調の表現が多く、「旧カナ」を使う人が多い。
・季語とは・・「季節の言葉」である。四季の巡る日本において、変化する
風物に与えられる名辞だと言える。「歳時記」の活用。
・山本健吉・・「俳句は滑稽なり。俳句は挨拶なり。俳句は即興なり。」
・高浜虚子・・「俳句とは客観写生・花鳥諷詠である」
2. 現代俳句・・・俳句人口の増大(一説によれば俳句人口一千万人ほど)
・結社・・俳句に対するそれぞれの考え方を掲げた「結社」に所属して楽しみ学ぶ。主宰が存在し。結社
誌を発行するのが普通である。(千葉県・・「沖」「鴫」「百鳥」ほか多数)
・投稿・・新聞、雑誌、NHKなどへの投稿により楽しみ学ぶ。
・インターネット・・インターネット句会なども幅を利かし始める。
・俳句甲子園・・高校生による俳句全国大会(於・松山市)
・欧米諸国・・俳句が国際的にも広がって来ている。
3. 俳句の鑑賞・・・小説や詩や短歌に比べて、短いゆえの省略や季語が
入るため判りづらい。実作者の鑑賞が多いゆえんである。
・主観的な鑑賞・・読み手が自由気ままに解釈してよい。作者の意図と
離れた鑑賞も大いにあり得る。
・季語への理解・・歳時記の活用。万葉時代からの日本人の美意識。四季。
・俳句のタイプ・・「一句一章」と「二句一章」の二つに大別される。
例 コスモスの朝の光を集めけり コスモスやかくもしみじみ病癒え4.
4. 俳句の功徳
・自然の移ろいに敏感になる。 ・木や草花、鳥の名前などに親しめる。
・正しい日本語に接する機会に恵まれる。 ・人との交流が生まれる。
・お金がそんなに掛からない。一説には老化防止、認知症防止に有益とか。
5. 俳句の歴史
・連歌の最初の「五七五」を、発句として独立したものが俳句の始まり。
・芭蕉・蕪村・一茶・正岡子規・高浜虚子(ホトトギス)の功績。
・水原秋桜子の「馬酔木」誕生・桑原武夫の「第二芸術論」 以上
1 閑かさや岩にしみ入る蝉の声 松尾芭蕉
2 此の秋は何で年よる雲に鳥 松尾芭蕉
3 菜の花や月は東に日は西に 与謝蕪村
4 雪とけて村いつぱいの子供かな 小林一茶
5 露の世は露の世ながらさりながら 小林一茶
6 糸瓜咲いて痰のつまりし佛かな 正岡子規
7 いくたびも雪の深さを尋ねけり 正岡子規
8 去年今年貫く棒の如きもの 高浜虚子
9 咲き満ちてこぼるる花もなかりけり 高浜虚子
10 おりとりてはらりとおもきすすきかな 飯田蛇笏
11 谺して山ほととぎすほしいまま 杉田久女
12 海に出て木枯帰るところなし 山口誓子
13 湯豆腐やいのちのはてのうすあかり 久保田万太郎
14 雪解川名山けずる響きかな 前田普羅
15 蔓踏んで一山の露動きけり 原 石鼎
16 みちのくの伊達の郡の春田かな 富安風生
17 永き日の鶏柵を越へにけり 芝不器男
18 水枕ガバリと寒い冬がある 西東三鬼
19 算術の少年しのび泣けり夏 西東三鬼
20 冬菊のまとうはおのがひかりのみ 水原秋桜子
21 鮟鱇の骨まで凍ててぶちきらる 加藤楸邨
22 戦争が廊下の奥にたつていた 渡辺白泉
23 水脈の果炎天の墓碑を置きて去る 金子兜太
24 雪はしずかにゆたかにはやし屍室 石田波郷
25 咳をしても一人 尾崎放哉
26 赤とんぼじつとしたまま明日どうする 風 天
27 死ぬときは箸置くやうに草の花 小川軽舟
28 春は曙そろそろ帰つてくれないか 櫂未知子
29 ジャンケンで負けて蛍に生まれたの 池田澄子
30 二人四人そして一人の葱きざむ 西村和子
31 滝壺に滝活けてある眺めかな 中原道夫
32 双子なら死に顔同じ桃の花 照井 翠
33 車にも仰臥といふ死春の月 高野ムツオ
34 生涯を女将に徹し薄衣 鈴木真砂女 以 上