原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

<学習用>夫婦同姓訴訟(最高裁平成27年12月16日大法廷判決)

2015-12-20 | 憲法的内容

夫婦同姓訴訟(最高裁平成27年12月16日大法廷判決)

 

本件は,婚姻の際に夫婦は夫又は妻の氏を称するとする規定(民法750)は憲法13,14Ⅰ及び24ⅠⅡに違反するにも関わらず,本件規定の改廃措置をとらなかった立法不作為を理由とする国賠訴訟である。最高裁は,本件規定は憲法13,14Ⅰ,24のいずれの規定にも反していないと判断した。以下,最高裁判決(法廷意見)を,学習用に私がまとめたものです。

 

<憲法13違反の点>

 

原告は,憲法上の人格権の一内容として,「氏の変更を強制されない権利」が憲法13によって保障されると主張したが,かかる権利を憲法上の具体的権利として観念することはできないとした。もっとも,「考慮すべき人格的利益である」とは言えるから,憲法24の立法裁量の限界を画するにあたって考慮されるべきともした。

 

<憲法14Ⅰ違反の点>

 

原告は,96%以上の夫婦が夫の氏を称していることからすると,性別に基づく差別が存在すると主張したが,最高裁は,「本件規定は,夫婦が夫又は妻の氏を称するものとしており,夫婦がいずれの氏を称するかを夫婦となろうとする者の間の協議に委ねているのであって,その文言上性別に基づく法的な差別的取扱いを定めているわけではなく,本件規定の定める夫婦同氏制それ自体に男女間の形式的な不平等が存在するわけではない。」とし,差別(不平等)状態の存在が認められないとして,憲法14Ⅰ違反は認められないとした。

 

<憲法24条違反の点>

 

原告は,氏の変更を婚姻の要件とすることは,憲法24の保障する婚姻の自由を侵害すると主張したが,最高裁は,「婚姻をすることについての直接の制約を定めたものではな」く,あくまでも事実上の制約にすぎないから,直ちに憲法24違反の問題を生じないとした。

 

ただ,憲法24条が婚姻に係る立法作用についての要請・指針を示していることからすると,婚姻制度に関する国会の立法裁量には限界があるのであって,「当該規定が個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き,国会の立法裁量の範囲を超えるものとみざるを得ないような場合」は憲法24違反となる。

 

夫婦が同一の氏を称することは,家族という集団的単位を公示・識別する機能を有し,また,子がいずれの親とも同じ氏を称することは子の利益にも叶う。また,法は,夫の氏を称することを強制する仕組みを問わず,あくまでも協議の上で選択する仕組みをとっている。これら事情を考慮すると,「,本件規定の採用した夫婦同氏制が,夫婦が別の氏を称することを認めないものであるとしても,上記のような状況の下で直ちに個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠く制度であるとは認めることはできない」。

 

ただ,「夫婦同氏制の採用については,嫡出子の仕組みなどの婚姻制度や氏の在り方に対する社会の受け止め方に依拠するところが少なくなく,この点の状況に関する判断を含め,この種の制度の在り方は,国会で論ぜられ,判断されるべき事柄にほかならないというべきである」。


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